8月12日、総合小売大手のイオン <8267> の株価が1年8カ月ぶりの高値を付けた。後段で詳述するようにイオンの業績は新型コロナ危機の影響で悪化、株価も業務スーパーを運営する神戸物産 <3038> や食品スーパーのライフコーポレーション <8194> 等に比べて大きく出遅れていた。それがここに来て人気化したのはなぜだろうか?
今回はイオンの株価が1年8カ月ぶりの高値を付けた背景に迫ってみよう。
3〜5月は赤字転落、GMS事業の悪化が顕著
7月8日、イオンは2021年2月期第1四半期(3〜5月)決算を発表した。売上は前年同期比1.9%減の2兆762億円、営業利益は125億円の赤字(前年同期は277億円の黒字)となった。最終損益は539億円の赤字(同43億円の赤字)で四半期ベースとしては過去最大の赤字を記録している。
同期は新型コロナウイルスへの対応で、店舗等施設の臨時休業や営業時間の短縮等を実施、地代家賃や減価償却費等の固定費、テナント賃料減免相当額、特別有給休暇等の人件費、感染防止対策費用など298億円を特別損失として計上した。
セグメント別の売上(営業収益)と営業利益を見てみよう。スーパーマーケット(SM)事業は、食品スーパーのマックスバリュ東海 <8198> 、マックスバリュ九州 <3171> 、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス <3222> 等が好調で営業収益は8.4%増、営業利益は182億円と前年同期比で199億円改善した。ヘルス&ヘルスケア事業もウエルシア <3141> の好調を後ろ盾に営業収益で10.0%増、営業利益は同23億円改善している。しかし、その一方で総合スーパー(GMS)事業はイオン北海道 <7512> 、イオン九州 <2653> などの苦戦が相次いだことから営業収益で6.4%減、営業利益も同275億円悪化している。
総合金融事業ではイオンフィナンシャルサービス <8570> のクレジットカード等の取り扱いが減少し、営業収益が4.5%減、営業利益は171億円悪化したほか、イオンモール <8905> 等のディベロッパー事業も営業収益31.6%減、営業利益は127億円の悪化を余儀なくされている。
それでも株価は反転上昇、1年8カ月ぶり高値
決算発表の翌日(7月9日)のイオン株は売り気配で始まり、前日比4.9%安の2410円で取引を終了、さらにその翌日(7月10日)には一時2374円の安値を付けている。注目されるのは、その後イオン株が反転上昇し、先週8月12日には一時2671円と1年8カ月ぶりの高値を記録していることだ。