7月31日、国際市場の金価格はニューヨーク先物で初の2000ドル大台を超える史上最高値を付けた。8月には現物価格も大台を超えるなど高値を更新しており、新型コロナ禍で活況を呈している。

ちなみに、4~6期の米GDP(国内総生産)は前期比年率で32.9%減となり、比較可能な統計の残る1947年以降で最悪となった。これまで最悪を記録していた1958年1~3月期(10.0%減)や100年に一度の金融危機と言われたリーマン・ショック時の2008年10~12月期(8.4%減)を遥かに上回る落ち込みである。7月の米失業率も10.2%と高止まりが続いている。そうした中、複数のメディアは「安全資産」としての期待から金が買われたと報じている。

一方でウォール街の市場関係者からは「金価格は他の商品価格と同様、ドル安を背景に上昇したにすぎない」と最近の「安全資産」報道を疑問視する声も聞かれる。今回は新型コロナ禍で一躍注目された金価格についてリポートしたい。

「金よりもハイテク株のほうが魅力的」との声も

金価格,今後
(画像=siraanamwong / pixta, ZUU online)

米国で新型コロナウイルスの感染が急拡大した今年3月、金価格は約1700ドルから1500ドル以下へと下落し、「安全資産」で買われるどころか売られていた。その後は反転上昇して7月下旬に2000ドルの大台を突破、安値から30%を超える上昇率を記録している。だが、同じ期間のナスダック総合指数は60%近く上昇していることから、ウォール街では「単純にパフォーマンスの比較でいえば、金よりもハイテク株のほうが魅力的だ」(アナリスト)との声も聞かれる。

実際、4月以降の金価格の上昇局面では(少なくとも米国においては)本当に安全資産が必要だったのか疑問視せざるを得ない面もある。たとえば、米国では約2500万人が失業給付金を受け取っており、うち7割は失業前より所得が増えたとされている。新型コロナ禍での救済策により、失業給付金は週600ドル上乗せされたことから、失業者の大半が失業前を大きく上回る所得を得ることになった。このため「少なくとも経済的には安全資産を求めるような環境にはなかった可能性がある」(前出アナリスト)という。

新型コロナ危機は米国に深刻な社会不安をもたらしたことは間違いないが、安全資産としての金の需要が高まったとの見立てには少なからず疑問を残すことも確かだ。

金は希少性が高く、市場規模が小さい