損害保険大手は2021年1月から「住宅向けの火災保険料を全国平均で6~8%ほど上げる」と報道されています。損害保険の値上げは、収益物件を持つオーナーとしてはコストアップにつながる頭の痛い問題の一つです。では、どう対処すべきでしょうか。

大規模災害が増加している現状

賃貸経営
(画像=quils/stock.adobe.com)

2020年7月7日付の日経新聞で「2021年1月に、損保大手各社が損害保険料引き上げを検討している」と報道されました。その背景には、近年大規模災害が相次いでいることが挙げられます。2019年の台風15号(令和元年房総半島台風)、台風19号(令和元年東日本台風)による広範囲な被害の記憶が薄れる間もなく2020年に入ってからも九州を中心とする「令和2年7月豪雨」が発生するなど自然災害が続いています。

自然災害が起こることで損害保険会社の保険金支払い額は増加。多発する自然災害に対応するために損害保険会社が保険料を値上げすることはやむを得ない措置といえるでしょう。

保険料は西日本を中心に1割上がることも

では、火災(住宅総合)保険料はどれくらい引き上げられるのでしょうか。保険料は過去の契約や支払い自然災害に関する情報を参考にシミュレーションが行われ補償内容に対するニーズや社会情勢の変化なども反映されて決定されます。損保各社からの発表はまだですが、報道によれば、西日本を中心に大きな値上げが検討されており木造住宅などでは1割超の値上げとなる地域もありそうです。

オーナーが検討するべき対策

収益物件を持っているオーナーであれば多くが火災保険に加入していることでしょう。そのため火災保険料が値上げとなればキャッシュフローが圧迫されてしまうため、頭の痛い問題です。しかし自然災害には勝てないため、損害保険料の値上げを受け入れざるを得ない一面もあるでしょう。とはいえ何かできる対策はないのでしょうか。例えば以下の4つの対策を検討してみるのも方法の一つです。

長期契約への切り替えを検討する

火災保険では、1年契約だけでなく最長5~10年長期契約を選ぶことができます。長期契約のメリットは、なんといっても保険料が割安になることです。1年契約と10年契約を比べると1年あたりの保険料が1~2割安くなることが期待できます。10年契約では10年一括払いになるため、当初の支払額は大きくなってしまいますがトータルでは長期契約のほうが割安になるのです。

ただし2022年以降には火災保険の10年契約は最長5年契約に引き下げられる方針のため、切り替えを検討している場合はタイミングをしっかりと押さえておきましょう。なお火災保険では、契約期間中に解約した場合、未経過期間分の保険料は返金されます。したがって「解約したら損をする」ということはありません。

現在1年や3年といった短期契約をしている人は「2021年1月の値上げを前に一度解約し長期契約に入り直す」という選択が考えられるでしょう。しばらくの間は値上げの影響を回避でき火災保険にかかるトータルコストを削減することが可能になります。

補償範囲を見直す

保険の入り方を見直すことも一つの手です。火災保険と一口にいってもその補償範囲は火災だけでなく以下のような事例など多岐にわたります。

  • 落雷、破裂、爆発
  • 風災、ひょう災、雪災
  • 水災
  • 破損、汚損など
  • 外部からの衝突、水濡れ、盗難、騒じょうなど

そのため自治体が公表しているハザードマップなどで自物件の災害リスクを十分に確認しておくことが重要です。例えば「うちの物件は高台にあるから土砂崩れや川の氾濫の影響を受けないだろう」と判断した場合「補償範囲から水災を外す」という選択もあります。補償範囲を狭くすればそれだけ保険料は安くなることがメリットです。

ただし「本当にその補償を外していいのかどうか」は冷静に判断する必要があります。

免責金額を設定する

免責金額とは、火災保険が支払われるような事故があったときに被保険者が自己負担する金額のことです。例えば免責金額を設定していない保険契約で5万円の被害が発生したときには、5万円の保険金が支払われます。しかし10万円の免責金額を設定している保険契約で5万円の被害が発生しても保険金は支払われず5万円は自己負担になってしまうのです。

その代わり免責金額を設定すれば保険料が安くなります。免責金額を設定する際は、保険料とのバランスを見ながら判断することが大事です。

自分の持つ物件のリスクを再確認

そもそもの考えとして災害リスクの少ない地域の物件を買うことも大事です。「災害は火災保険がカバーしてくれるから安心」とはいえ災害リスクの高い地域は保険料が高くなってしまいます。また実際に災害に遭えば被害から復旧するまでに手間や時間、精神的負担が増えてしまうでしょう。できるだけ手間のかからない賃貸経営をするためにもまずは地域のハザードマップを確認することが重要です。

「対象物件にどんな災害リスクがあるのか」について十分確認してから購入するようにしましょう。

前回の値上げは2019年10月。今後も値上げの可能性が

実は火災保険の値上げは、2015年10月と2019年10月にも実施されました。2021年1月の値上げ後もしばらくしてからまた値上げが行われる可能性は十分に考えられるでしょう。また2022年以降は10年の長期契約がなくなり最長でも5年契約になる方針も示唆されています。「賃貸経営のコストを最適化する」「災害リスクに備える」といった観点からも火災保険の加入方法について再度振り返ってみる必要があるでしょう。(提供:YANUSY

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