マイニングの投資先〜2020年のマイニングプールの勢力図〜

ビットコインは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)コンセンサスアルゴリズムによってブロックチェーンが繋がれています。このブロックチェーンを繋ぐことに成功すると報酬としてビットコインがもらえます。

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(画像=月刊暗号資産)

ビットコインは総発行数が決まっていることからデジタルゴールドとも呼ばれ、このブロックチェーンを繋ぐ作業を金の採掘に例えマイニングと呼び、この作業をする機器(コンピュータやサーバや専用機器)をマイニングマシン、そのマイニングをする人たちをマイナーと呼んでいます。

マイニングはSHA-256というハッシュ計算を膨大な回数行い(現在1秒間に120エクサ回、1エクサ=百京)ブロックチェーンを繋げていきます。これにより参加者は中央機関を必要とせずに暗号資産ネットワークのセキュリティを確保することができます。

ビットコインが登場した2009年当時、汎用的なコンピュータを所有することで誰でも次のブロックの有効なハッシュを見つけるために、他のマイナーと競い合うことができました。それは、マイニングの難易度が低く、ネットワーク上のハッシュレートがそれほど高くなかったためです。

しかし、時が経つにつれ、ビットコインの価値が上がり、競争が激しくなってきました。

マイニングでは、1秒間に最も多くのハッシュ計算ができるコンピュータがより多くのブロックを見つけることができます。そのためマイナーたちは、競争に勝つためにさまざまな種類のハードウェア(CPU、GPU、FPGA)を試した後、ビットコインマイニングはASIC(Application-Specific Integrated Circuits)を使用することが現状は標準となっております

その名が示すように、ASICはハッシュを計算するという単一のタスクを実行するための専用機器です。特定の目的のために設計されているため、圧倒的に高効率です。実際、ビットコインのマイニングに他のタイプのハードウェアを使用することはほぼ不可能です。

現在では、さらに競争が激しくなっており、通常1台のマシンで行わず(ソロマイニングと呼びます)マイニングプールという、複数のマシン(マイナー)で協力して採掘(マイニング)を行うようになりました。

なぜ複数のマシンで協力するかといえば1台のマシンで計算していたのでは、一般的な専用機器を使用しても76年間かかってやっと1回しかブロックと繋ぐことができないからです。したがって、みんなで協力して計算し報酬を分け合うのです。

マイニングでは、ブロックチェーンを繋ぐために、条件を満たす値(ナンス値と呼ぶ)を探索します。マイニングプールでは、マイニングプールのサーバーから、ナンス値以外のブロックヘッダーが与えられ、条件を満たすナンス値を多くのマイニングマシンで手分けして探索します。採掘の結果、得られた採掘報酬を各採掘者の計算数量に応じて分配します。

条件を満たすナンス値を最初に見つけたマイナーには現在6.25BTC(約750万円)が報酬として約10分間に1度新規発行されます。マイニングプールでは参加者全員でその報酬を分け合うのです

ではマイニングプールの勢力図は現在どのようになっているのでしょうか。

https://coin.dance/blocks/allhashthisweekhttp://btc.com/stats/pool 等を参照しますと、

2020年8月12日現在で大手4つのマイニングプールで52.78%のシェアを占めます。

このうちBTC.com とAntPoolは同じBitmain傘下の子会社であるため、結局3社で51%以上のシェアを占めていることになります。

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(画像=2019年1月のハッシュレート分布図(BTC.comより))

去年の2019年1月の過去の図を比較してみるとこの1年半でPoolinとF2Poolのハッシュレートが上がり相対的にBitmain傘下のBTC.com とAntPoolのシェアが下がっていることがわかります。

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またTokenInsightによるレポート(レポート内6ページ参照)によると、2019年9月から2020年4月までの間ビットコインハッシュレートの世界シェア1位の中国の占める割合が75.63%から65.08%に低下し(それでもまだまだ過半数は中国)、2位の米国のハッシュレートが4.06%から7.24%に増加していると報告されております。まだまだ中国の占める割合が大きいものの少しずつ世界にハッシュレートは分散されて健全化が進んでおります。

2020年5月にマイニング報酬の半減期を迎えたビットコインマイニングは新たな変革期のステージに入っており、より電気代が安く安定的に供給される地域にどんどん主力マイニングファームやプールが移動していく年になると予想されます。

その中で私が注目したいのはカザフスタンです。旧ソ連の国の中でロシアに次ぐ広大な土地と資源を持ち、他の国に比べて仮想通貨ビジネスへの合法化をいち早く打ち出している国で、豊富なエネルギー資源と物価の安さから電気代価格も非常に割安な国となっております。

このレポート上でも2019年9月から2020年4月までで1.42%から3倍以上の6.17%へのシェアの伸びとなっています。カザフスタン政府もマイニング事業者の誘致に支援策を打ち出しており、今後もますますカザフスタンでのマイニングシェアは躍進すると思います。逆に中国のシェアは少しずつではありますが、今後も落ちて行くものと予想されます。政府がマイニング禁止等の規制強化策をさらに打ち出しているからです。

中国はこれまでも度々中国本土内でのマイニング禁止の通告を出してきました。2020年5月にも四川省での仮想通貨マイニングの禁止を通告しています。

これまでも、何度もマイニング禁止のニュースが発表されているので、中国の全てのマイニングマシンがすぐに停止することは考えにくいですが、世界的なシェアは徐々に低下していくと考えられます。

また四川省等の中国でのマイニングは主に水力発電による電気を主に利用している割合が高いのですが、昨今のコロナ禍の中で原油価格が低下し石油資源を利用した火力発電でのマイニング勢力が今後拡大する可能性が高いと考えられます。

また、コロナ禍でウクライナのエネルギー環境保証省が、COVID-19の影響により原子力発電所の余剰電力が発生したことを受けて活用方法としてマイニングの提案をしております。

つまりコロナ禍においてもエネルギー資源の価格低下や余剰が各国で発生し、中国のマイニングシェアが落ち、アメリカ、ロシア、カザフスタン、マレーシア、イラン、カナダ、ウクライナ等の国へのハッシュレートのシフトが加速すると考えられます。このことはビットコインブロックチェーンシステムにおいて分散化が進みシステム全体が健全になる方向に向かうことになるため、非常に望ましいことと考えられます。ますますシステム全体の健全化が進み暗号資産への投資が加速される流れになると想定されます。(提供:月刊暗号資産

文◉木村 武弘(きむら たけひろ)
福井県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒業。在学中に株式会社ケイビーエムジェイ(現株式会社アピリッツ)を設立し、取締役副社長に就任。大学の教授陣や楽天創業メンバー等の支援を受ける。大学卒業後、2002年に代表取締役社長に就任。「世界中の人々に愛されるインターネットサービスを創り続ける」を経営理念に掲げ、レコメンデーションエンジンやSNSエンジンをはじめ、様々なシステム・サービスの開発に着手。2009年に新規事業開拓のため、スマートフォンアプリケーション開発を専門とする株式会社KBMJiを改組設立し、代表取締役に就任。2015年からブロックチェーン事業を開始。