ZUU onlineが開催している、『Withコロナ時代の「大」資本改革』をテーマにしたZoomによるウェビナー。7月16日、マーケットリバー 代表取締役、元楽天IR部長の市川祐子 氏と株式会社SmartHR 経営推進グループ 経営企画 IRの森 雄志 氏に、『【経営/IRch】SmartHR編/急成長企業のIR戦略と共感を生む対話』を聞いた。

市川祐子
市川祐子
楽天、NECグループでIR、資金調達、東証一部上場準備等を担う。Institutional Investors Best IR Professionals 5年連続Top 3。経産省 企業報告ラボ企画委員、持続的成長に向けた長期投資研究会(伊藤レポート2.0)委員を務めた。著書に『楽天IR戦記』。アライドアーキテクツ (マザーズ)、Stroly(未上場)にて社外取締役を現任。
森 雄志
森 雄志
2016年楽天株式会社入社。IR部に所属し、国内外の投資家面談や決算関連業務、株主総会対応、M&A、資金調達など、IRを中心に幅広いコーポレートアクション業務に携わる。2020年3月に株式会社SmartHRに入社。海外投資家対応をはじめ、資金調達や資本政策などの財務戦略の策定を担当。早稲田大学政治経済学部卒。

※ 以下、市川氏・森氏談。7月16日開催のウェビナーの収録内容を書き起こし、3回にわたりお届けします

SmartHR編 急成長企業のIR戦略と共感を生む対話
(画像=ZUU online編集部)

目次

  1. 未上場のIRと上場企業とのIRの違い
  2. 未上場だと投資家との関係が「1対1」
  3. 海外投資家に日本独自の制度を理解してもらうのもIR
  4. 未上場会社におけるIR活動のKPIは「非常時に◯◯できる投資家の数」

未上場のIRと上場企業とのIRの違い

ウェビナーより
(画像=ウェビナーより)

市川:では、次の質問にいきたいと思います。そろそろ本題で、未上場のIRと上場企業とのIR、共通点もあったということですけれども、共通点はいつも次のエクイティファイナンスにそぐわないところだと思うんですけど、例えば違ったところとか。

森:あーそうですね。決算発表であったり適時開示のオペレーションの有無は違いとして大きいですね。その違いによって何が起こるかって言うと、上場企業だとそんなに意識してIRやろうって思わなくても決算発表やIRサイトでの発信などのオペレーションをこなしていればある程度会社の情報でマーケットに出て行くんですね。

市川:確かに。

森:けど、未上場だと当然ですが会社の情報をマーケットに伝えるオペレーションがないんですよね。システマティックにマーケットに情報を届ける仕組みがないので、何もしなければ何も伝わらないですよね。当たり前の事ではあるんですが。

市川:何もしなければ何も出てこないですもんね。

森:そうなんですよ。逆説的ではあるんですけど、未上場会社だからこそ意識してIRやった方がいいなっていうのは今思ってることです。やっぱり意識してIRを行わないと会社の情報が投資家に伝わらないので、アウトバウンドでのアプローチ含めターゲットとなる投資家に会社の情報を平時から伝えていくことが大切だと思います。

未上場だと投資家との関係が「1対1」

森:上場と未上場のIRの違いがもう一つあって、未上場だと、基本的に投資家とのコミュニケーションって1対1なんですよね。

市川:そうですよね。

森:上場企業だと1on1の面談もある一方で、決算発表や決算資料、IRサイトなど1対多のコミュニケーション手段も豊富じゃないですか。また上場企業のオファリングだと投資家は目論見書ベースで投資判断を行うので、会社の全ての財務情報を提供するわけではありません。一方、未上場企業の出資検討だとNDAを締結して財務情報を提出してそこから議論が始まります。追加でどういう情報を求められるかは当然投資家によっても違ったりするので、関係構築の方法が基本的には1対1です。

市川:確かに。

森:そうなると会社のことを理解してもらって、投資するってなるまでに多くのやり取りと時間が必要になります。候補となる投資家には普段から意識して会社の情報を共有し業績のアップデートをしておかないと、じゃあいざお金が必要ってなった時に、「はじめまして」からコミュニケーションが始まると時間が余計にかかってしまいます。

市川:そうですよね、何ヶ月もかかりますもんね。

森:そうなんですよ。当然、資金計画や次のファイナンスの計画はありますが、当初の予定よりも数ヶ月前倒しになってもスムーズに動けるような投資家との関係づくりみたいなのは意識してやっていますね。

海外投資家に日本独自の制度を理解してもらうのもIR

市川:なるほど。まさに次のエクイティファイナンスですよね。例えば今回コロナで動きが取れなくなっちゃったVCもたくさんいると思うんですけれども、私の知り合いでもそこで調達しようと思ってたんだけれども、いくつかちょっと遅くなってしまったVCがいて、なんとか調達できそうだけど金額が小さくなるとか、あるいは逆に本当に全然集まらなくなっちゃったっていうところもないわけじゃないのかなと思っています。時間かかっちゃうと、そういうことも起こっちゃいそうですよね。

森:おっしゃる通りですね。あと、弊社ならではとしてあるのは、SmatHRは社会保険とか年末調整のような、日本独自の規制に基づいたサービスをやっているため、欧米の投資家にとって理解しづらい点があるんですよね。そういう日本の社会保険制度などのサービスの前提の話を普段の IR で済ませておけば、いざラウンドやるってなった時のコミュニケーションがすごくスムーズになります。いつエクイティファイナンスが起こっても大丈夫なように準備しておくっていうのが基本的なスタンスですね。

未上場会社におけるIR活動のKPIは「非常時に◯◯できる投資家の数」

市川:なるほど。そうするとその IR 活動の KPI みたいなのもちょっと違うんですかね。ユニークと言うか……。

森:そうですね、よくあるのであれば件数とかってあると思うんですけど、件数というよりは一個一個投資家との関係の深さの方が大事かなと思っています。

なかなか数値化しづらいところはあるんですけど、この前Airbnb(エアビーアンドビー)のCEOのブライアン・チェスキーさんの Podcast を聞いてヒントになるなぁと思う話がありました。