英国が誇る世界屈指の美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリーのコレクションが来日し、東京、大阪にて展覧会が開催されます。ゴッホの「ひまわり」やフェルメール「ヴァージナルの前に座る若い女性」、レンブラント「34歳の自画像」など、教科書にも載るような作品を、絵の具の乗り具合も含めて目の前で鑑賞できる絶好の機会です。東京・上野の国立西洋美術館、そして11月から大阪・中之島の国立国際美術館にて開催予定の展覧会の魅力を紹介します。

英国が世界に誇る「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
(画像=pict rider/stock.adobe.com)

大英博物館とともに英国が世界に誇る美術館「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」は、2,300点を超えるヨーロッパ美術のコレクションがあり、ゴッホ、ダビンチ、モネ、セザンヌなどの名画・作品を所蔵しています。

コンパクトながら、年間600万人が訪れる世界で最も有名な美術館の1つです。もともと王室のコレクションを国有化したものではなく、19世紀のロンドン市民のコレクションから収集がスタートしています。

ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、館内がそのまま百科事典であるかのように錯覚するほどアカデミックなコレクションが特徴です。ゴシック絵画最大の巨匠と言われるイタリアのジョットから、「真珠の耳飾りの少女」で有名なオランダのフェルメール、さらにゴッホらの傑作を含むルネサンス期、ポスト印象派としてキュビズムなど20世紀の美術にも大きな影響を与えたセザンヌの作品まで、西洋絵画の流れを、作品を見ながら確認できます。

西洋絵画の足跡をたどる日本初公開、全61点の作品展示

今回のロンドン・ナショナル・ギャラリー展は、フェルメール、ゴッホらの傑作を含む日本初公開の作品が全61作品、展示されます。そもそも開館200年を数える同ギャラリーとして、館外初の大規模展示となるそうです。

そのコンセプトは「英国における欧州絵画の受容」。中世から近代にかけて、先行するヨーロッパ大陸の芸術を、イギリスがどのように評価し、受容していったのかを解き明かす企画です。展示作品とともに、紹介しましょう。

19世紀、イギリスが再評価したルネッサンスの名作群

展示はまず、ロンドン・ナショナル・ギャラリーのコレクションの中核であるイタリア・ルネサンス絵画から始まります。

幾何学と遠近法の研究で知られるウッチェロ、15世紀のヴェネツィアで最も特異で独創的と言われていたクリヴェッリ、「形態のミケランジェロ、色彩のティツィアーノ」と言われたティツィアーノ、16世紀ヴェネツィア派を代表するティントレットまで、ルネッサンス期の巨匠に限らず、イタリア全土の幅広い作品を紹介します。

これらは、19世紀半ばにイギリスで行われたルネッサンス期絵画への再評価のあらわれとして、コレクションを見ることができるものです。

先進のライバル国オランダの新しい作品群とスペイン絵画の再評価

続くのは、初期のコレクションにおけるオランダ絵画の重要作品群を展示します。当時、先進と目された海洋王国オランダの風景画や風俗画を中心とした新しい作品群は、イギリスにおいても評価され、収集されました。

光と影の明暗を生かす技法を得意としたレンブラント「34歳の自画像」はもちろん、フェルメールの「ヴァージナルの前に座る若い女性」では、日常の一瞬を切り取った繊細な絵画をぜひ鑑賞したいところです。

また18世紀、肖像画の分野にて飛躍を遂げたイギリスの画家たちの、ヨーロッパとの関係も解説します。17世紀前半のフランドル(フランス北部、オランダ南部)出身の画家であるヴァン・ダイクの肖像画が、古典絵画の巨匠の様式を重視した保守派のレノルズや風景画のゲインズバラといった18世紀英国の画家に与えた影響を、作品展示を通して検証しています。

スペイン絵画の再評価も英国から始まったと言われています。17世紀スペインバロック期に最も活躍した宮廷画家ベラスケスや、明暗対比と写実描写の作品によってセビーリャで成功を収めたスルバランなどの作品を通し、その歴史を巡ります。

作品を通じて知る英国とイタリアの芸術文化交流

さて、17世紀の英国では、貴族の御曹子を国際人に養成するために欧州に遊学させる「グランド・ツアー」と呼ばれる一大現象が起こりました。イタリアを代表する風景画家カナレットらによるヴェネツィアの景観やローマの都市景観図などの作品を通じて、英国とイタリアの間に芸術文化交流があったことを紹介しています。

さらに18世紀後半の英国で流行した、調和を目指す古典的な美とは異なる「ピクチャレスク(絵のような美)」、また風景画の価値観のもととなった17世紀のクロード・ロランを筆頭とする理想風景画が、ターナーなどのロマン主義風景画へとつながっていった歴史を検証しています。光や自然現象に大きな関心を寄せたターナーの世界も、鑑賞のポイントといえるでしょう。

19世紀フランスでの近代絵画の改革と英国との関係

そして、19世紀フランスでの近代絵画の改革と英国との関係を見ていきます。ピサロやモネのように英国でも活動した画家もいましたが、おおむね印象派やポスト印象派の受容はかなり遅れ、20世紀になって始まりました。

この近代絵画を受容していく流れを、アングルから印象派を経てゴッホ、ゴーガンに至るまで、英国の視点から見ていきます。モネの「睡蓮の池」では、色彩分割法という方法で描かれたモネの色彩表現も見所です。また、ルノアールの「劇場にて、初めてのお出かけ」も必見となります。

絶対に見ておきたいゴッホの「ひまわり」

何といっても見ておきたいのはゴッホの「ひまわり」でしょう。友人であるゴーガンの寝室に飾るために描かれたこの絵は、ゴッホの創作へのエネルギーが、厚く塗られた絵の具によって突き出るようなイメージで表現されています。

今回の出展は全61点です。ご紹介したように、展示のコンセプトは「英国における欧州絵画の受容」ですが、日本への影響もひも解いています。一生に一度ともいうべき名画との出会いと合わせて、興味深く観覧することができそうです。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展は、2020年6月18日から10月18日まで東京・上野の国立西洋美術館、11月3日から2021年1月31日は大阪・中之島の国立国際美術館で開催されています。(提供:JPRIME


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