新型コロナウイルス感染症によるパンデミックにより、世界中で人の移動が制限されています。日本でも、来日観光客数はゼロに近い数字で着地することが見込まれています。こんな時だからこそできるのは、アフターコロナを見据え、観光立国としての準備をあらためて考えることではないでしょうか。

そこで、観光立国として成功しているイタリアを参考にしてみましょう。レオナルド・ダ・ヴィンチの逝去をはじめ、ルネサンス(文芸復興)からちょうど500年を迎えたいま、日本の次の500年を見据えるために、観光立国としてのイタリアを改めて検証します。

誰もが知る芸術作品がイタリアにある

メディチ家
(画像=oben901/stock.adobe.com)

2018年の世界の外国人旅行客数国別ランキングではイタリアは5位で、年間6,156万人が訪れています。イタリアの人口は日本のおよそ半分の6,000万人です。一方、日本は11位の3,119万人。イタリアは日本に比べ、人口は半分なのに、外国人旅行者数は倍を数えます。人口1人当たりで計算すると、イタリアの方が4倍も多く外国人旅行者を受けて入れていることになります。

なぜ、イタリアはこんなに人気があるのでしょうか。フランスやスペインといった人気国が近いということもありますが、それだけではありません。イタリアには、最後の晩餐、ダビデ像、ヴィーナスの誕生などといった、一生に一度は見てみたい芸術作品が数多くあります。

500年経っても変わらない人々の憧れとなる作品があるというだけで、世界から人が集まるわけです。イタリアでは、過去の遺産でビジネスが成り立つのです。

メディチ家が支えたルネサンス

イタリアの芸術資産の多くが、ギリシア、ローマといった古典古代の文化を復興しようとした文化運動「ルネサンス」期に創られました。そして、15世紀にルネサンスを保護したとして知られるのが、フィレンツェのメディチ家です。

ジョバンニ・ディ・メディチ氏は14世紀末、共同経営者の1人としてローマで金融事業を興しました。後に、銀行業で欧州全体でも知られるほど業容を拡大、ローマ教皇の管財人となり、その財産の管理によって名声を高めました。また、フランス王やドイツの諸侯などにも融資していたのです。

ジョバンニは銀行業で得た利益を毛織物業に投資し、さらにはフィレンツェ市政にも関与するようになり、次第に、芸術を保護するパトロンとしての役割を担うようになっていきます。メディチ家は、フィレンツェにおける共和政で発言権を持つようになって、ジョバンニの子のコジモ、孫のロレンツォの時代に、最も権力を得たと言われています。

コジモは「祖国の父」と呼ばれ、ボッティチェリ、ミケランジェロ、レオナルド=ダ=ヴィンチなどはいずれもロレンツォの保護を受け、人々はロレンツォを「イル=マニフィコ(偉大な、という意味)」と呼んだそうです。

日本でも広げたい芸術を保護する活動

1429年に死去したというジョバンニ・ディ・メディチ氏。果たして当時、500年以上先の世界において自分が保護したルネサンスの芸術が愛され、世界中からイタリアに観光客を呼び込むようになることを想像していたでしょうか。言えることは、芸術を保護したいという成功者としての思いが、現在につながったということです。

ジョバンニ、コジモ、ロレンツォと続くメディチ家の功績を、現代の日本人にもぜひ参考にしてもらいたいところです。日本には、才能があるのに経済的な理由のために絵を描き続けられないアーティストがたくさんいます。そうしたアーティストに、成功した富裕層が手を差し伸べることで、感動的な作品が必ず生まれていくのではないでしょうか。

いまは、新型コロナウイルス感染症の影響で難しいですが、日本にもたくさんの外国人観光客が訪れるようになりました。観光客が日本の芸術作品を鑑賞し、帰国後にその素晴らしさを伝えることによって、ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチのような500年経っても愛されるようなアーティストが、日本から誕生するかもしれないのです。(提供:JPRIME


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