太陽エネルギーは、枯渇することがないクリーンなエネルギーとして近年注目されている。太陽光発電を事業に取り入れることによって、光熱費の削減やBCP対策、投資を行うこともできる。この記事では、太陽光発電の概略と事業への利用法、および固定買取制度と太陽光発電投資の利回りについて詳しく解説していこう。
太陽エネルギーを活用しよう!
地球に降り注ぐ太陽エネルギーは、1平方メートルあたり1キロワット。これを100%利用することができれば、わずか1時間で世界で1年間に消費するエネルギーをまかなうことができるという。
太陽エネルギーは石油などと違って、枯渇する心配がまったくない。日本は現在、石油などのエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っている。太陽エネルギーは石油などが枯渇したあとのエネルギー資源の最有力候補であり、各方面から期待されている。
太陽エネルギーはクリーンであり、石油などを利用する際に発生する二酸化炭素(CO2)や硫黄酸化物(SOX)、窒素酸化物(NOX)などの大気汚染物質を発生しない。1キロワットの太陽光発電を1年間利用すると、二酸化炭素の削減効果は541.5キログラム、原油の削減量は227リットルになるという。
太陽光発電システムは可動部分が少なく構造がシンプルなので、メンテナンスが容易であることが特徴だ。また、耐用年数も20年以上と比較的長い。
近年は「企業の社会的責任(CSR)」が重視されるようになってきている。したがって太陽エネルギーを活用して環境保全に努めることは、企業のブランドイメージ向上につながる可能性が高い。
太陽光発電とは?
太陽光発電の仕組みとシステムについて見てみよう。
太陽光発電の仕組み
太陽光発電では、「太陽電池」を使用して発電する。太陽電池は「n型」と「p型」の2種類のシリコンを重ね合わせた構造になっており、太陽光が当たると光のエネルギーを吸収した電子が動き出し、電流が流れる仕組みだ。
太陽電池をたくさんつなぎ合わせて、大きなパネルにしたものが「ソーラーパネル」である。太陽電池単体での発電量は小さいため、必要な発電量を得るためには、多くの太陽電池が必要になる。
ソーラーパネルの発電量は、100メートル×200メートルの2ヘクタールの土地に設置されたものなら定格出力は1メガワット(1,000キロワット)だ。ただしソーラーパネルは、常に定格出力の発電量が得られるわけではない。夜間は発電ができないのはもちろんのこと、雨や曇りの日も発電量は減る。太陽光発電は、年間で定格出力の13%の利用が見込めるとされている。
太陽光発電システムには、10キロワット未満の発電量の「住宅用」と、10キロワット以上の「産業用」がある。どちらも、自分で消費した残りの電力を売る「余剰売電」ができる。産業用システムでは、発電した電力をすべて売る「全量売電」も選択できる。
太陽光発電のシステム構成
一般的な太陽光発電システムの構成は、以下のとおりだ。
1.発電(ソーラーパネル)
ソーラーパネルで発電する。
2.直流から交流へ変換(パワー・コンディショナー)
ソーラーパネルで発電された電流は、直流である。これを、自分で使ったり売電したりできる交流に変換するのが「パワー・コンディショナー」だ。パワー・コンディショナーでは若干のエネルギーロスがあり、製品によって変換効率が異なる。
3.自分で電力を消費する(分電盤)
自分で電力を消費する際は、分電盤が使われる。ブレーカーや漏電遮断器が設置された分電盤は、太陽光発電においては専用のものが設置され、コンセントや照明器具などに電力を供給する。
4.売電する(電力メーター)
太陽光発電で得られた電力の売電は、電力会社の配電線・送電線と接続することによって行う。配電線と太陽光発電システムは「電力メーター」によって接続され、電力会社に売った電力量(売電量)と電力会社から買った電力量(買電量)をそれぞれ計測することができる。
5.電力を蓄える(蓄電池)
自分で電力を消費する場合は、「蓄電池」を使用して電力を蓄えることもできる。太陽光発電の余剰電力や、電力会社から安価で購入できる深夜電力を蓄電池に充電しておけば、電気代を節約したり、非常時の電力として利用したりすることができる。
太陽光発電の事業としての利用法
太陽光発電を事業として利用することを考える場合、大きく分けると
・事業所・店舗で使用する
・投資の材料とする
の2通りが考えられる。
事業所・店舗で使用する
太陽光発電を事業として利用する場合の第一の選択肢は、事業所や店舗で自分たちが電力を使用することだ。太陽光発電を行うことによって、光熱費の削減が見込める。また余剰電力を売電して、利益を得ることもできる。クリーンな太陽光発電を事業所・店舗で利用していることをアピールすれば、企業のブランドイメージ向上にも役立つだろう。
事業所や店舗の太陽光発電は、「BCP対策」にもなる。BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、日本語では「事業継続計画」と訳される。災害などが起こった際に事業をどのように継続するかについての計画のことだ。
災害などで停電が発生すると、事業所や店舗は機能が維持できなくなる。蓄電池を含んだ太陽光発電システムを設置しておくことで、停電時に蓄電池に充電した電力を利用できる。停電時でも事業を継続できるため、太陽光発電システムはBCP対策としても有効なのだ。
投資の材料とする
太陽光発電は、投資の材料とすることもできる。太陽光発電された電力を電力会社に売電することで利益を得られるからだ。太陽光発電によって得た電力は、国の「固定価格買取制度(FIT)」によって売電することができる。FITでは20年間固定価格で電力が買い取られるため、安定した売電収入が得られる。
太陽光発電によって実際にどの程度の利益や利回りが得られるかは、初期投資と売電収入による。売電価格は年々下落しているが、太陽光発電システムの価格も下落している。太陽光発電投資によって利益を得ることは、2020年現在でも可能だ。利益や利回りは、ソーラーパネルを設置する土地を自己所有しているか、新規で購入するか、賃借するかによっても大きく変わる。
固定買取制度(FIT)と太陽光発電投資の利回り
固定買取制度(FIT)と太陽光発電投資の利益・利回りを見てみよう。
固定買取制度(FIT)とは?
固定買取制度とは、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」の規定により、太陽光などの再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定期間、一定価格で買い取ることを国が約束するものだ。対象となる再生可能エネルギーは太陽光と風力、水力、地熱、およびバイオマスの5種類である。
電力会社が再生可能エネルギー電気を買い取るために要した費用は、「再エネ賦課金」によってまかなわれる。再エネ賦課金は、電力の利用者全員から毎月の電気代とともに徴収されている。
一度決められた買取価格や買取期間は、変更されることはない。2020年現在は、買取価格は13円/キロワットアワー(50~250キロワット)、買取期間は20年である。太陽光発電による売電では、この固定買取制度によって、長期にわたって安定した収入が得られるようになっている。
買取価格と発電システム価格の推移
固定買取制度による買取価格は、以下の表のとおり近年大幅に下落している。
【太陽光発電による電力の買取価格の推移】
年度 | 買取価格 (/kWh) | 備考 |
---|---|---|
2012 | 40円 | |
2013 | 36円 | |
2014 | 32円 | |
2015 | 29円 | 6月30日まで。7月1日以降は27円 |
2016 | 24円 | |
2017 | 21円 | |
2018 | 18円 | |
2019 | 14円 | |
2020 | 13円 | 50~250kW。10kW未満は12円、250kW以上は入札により決定 |
これを受けて、「太陽光発電投資は儲からない」「もうやめたほうがいい」と言われることもある。
しかし以下のグラフで見るとおり、買取価格の下落に伴って太陽光発電システムの価格も大幅に下落している。
「システム価格」とは、ソーラーパネルや付属機器、取り付け台などの総額のことだ。買取価格の下落とともにシステム価格も下落していることから、太陽光発電投資は2020年現在も十分成り立つと言える。
太陽光発電投資の利益と利回り
太陽光発電投資の利益を見てみよう。太陽光発電投資物件を扱う「エコの輪ファンド」は、以下のように試算している。
設置場所 | 宮崎県都城市 |
---|---|
設置容量 | 109.44kW |
認定容量 | 49.5kW |
初期投資費用 | 994万円 |
年間ランニングコスト | 54.72万円 |
年間発電量予測 | 94,946kWh |
買取価格 | 2019年度(14円+税) |
年間想定売電収入 | 約132.9万円 |
20年間の売電収入総額は2,658万円となり、ここから初期投資費用の994万円と20年間の維持費1,094万円を差し引いても、570万円の利益が出るとしている。
参照元:エコの輪ファンド『【2020年版】太陽光発電投資は本当に儲かるのか?利益やリスクについて』
エコの輪ファンドでは、「土地付き太陽光発電物件」の販売も行っている。この物件一覧を見ると、想定表面利回りは、多くの物件で10%程度となっている。10%の利回りが得られるなら、投資する価値は十分あると言えるだろう。
参照元:エコの輪ファンド『現在販売中の土地付き太陽光発電物件一覧』
太陽エネルギーを事業に取り入れよう
枯渇することないクリーンな太陽エネルギーを事業に取り入れることで、事務所や店舗の光熱費削減やBCP対策、投資などを行える。将来枯渇することが確実な石油とは異なる「新しいエネルギー」であるため、新たなビジネスチャンスを獲得する可能性もあるだろう。電力の固定買取価格が年々下落しているとはいえ、現在も太陽光発電投資を行う価値は十分あると言えるだろう。(提供:THE OWNER)
文・高野俊一(ダリコーポレーション ライター)