特集第1回目では、船井総研のHRD支援部部長でありコンサルタントを務める宮内和也氏に、コロナ後の社会で求められる経営や人事制度などについて話を聞いた。特集第2回目も、引き続き宮内氏の話を中心に、アフターコロナの経営に潜む落とし穴と、企業に必要な成長戦略について述べていきたい(この記事は6月半ばの宮内氏への取材に基づいて執筆されたものです)。

船井総研宮内さんプロフィール

宮内 和也
宮内 和也(みやうち・かずや)
株式会社 船井総合研究所 HRD支援部部長
2006年に大阪市立大学商学部卒業後、株式会社船井総合研究所(以下、船井総研)に入社。住宅不動産業界向けのコンサルティングで2010年にチームリーダー昇格、2013年にグループマネージャーへ昇格。2017年には新設された不動産支援部の部長に着任。 人不足時代の到来とともに、人財開発コンサルティングのニーズを確信し、HRDコンサルティング事業部を発足後、参画。 現在は採用コンサルティングと組織開発コンサルティングの事業部責任者としてメンバーを統括している。

中小企業に潜む5つの落とし穴とは

コロナ経営力
(画像=PIXTA,ZUU online)

8月半ばに内閣府が発表した4~6月期の実質GDP(国内総生産)の速報値では、前期比7.8%減、年率換算で27.8%の減少となった。これで2019年10~12月期、2020年1~3月期と、3四半期連続のマイナス成長。落ち込み幅も、統計をさかのぼれる1955年以降で最大となる。ただ、4~6月は緊急事態宣言で全国的に外出の自粛が広がっていたことに加え、国内外の往来もほぼできない状況だっただけに、当然といえば当然だ。

特集1回目でもお伝えした通り、コロナ以前から景気悪化は始まっていた。特に、中小企業に関しては深刻な状況に陥りつつある。船井総研のコンサルタント宮内和也氏は「マーケットが成長している業種はともかく、成熟業種ではトップシェアの企業でさえ成長の鈍化が始まっている」と話す。

「コロナ禍が起こる以前から、人口の減少など企業は多くの問題を抱えています。業種によっては成長している分野も見られますが、内需型に関していえば、やはり業界成長率は低迷していると言わざるをえません。ほかにも採用難やデジタル格差の拡大といった問題が中小企業の現場で起きています」

宮内氏は中小企業を経営していくうえで、いま実際に経営の現場で起きている落とし穴として

①景気後退
②地方人口の減少の本格化
③業界成長率の鈍化
④採用難(採用費・人件費の高騰、定着率の低下)
⑤デジタル格差の拡大

の5つを挙げる。

日本の総人口は2008年でピークをつけ、その後減少に転じているのは周知の通りだろう。さらに総務省の統計によると、2010年から2015年の5年間では、東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、沖縄の1都5県を除くすべての府県で人口増減率がマイナスとなっている。中でも、東北や四国では増減率が二ケタとなっている県が少なくない。政府は2014年、主要政策の一つとして、地方経済の活性化を目的とした「地方創生」を掲げているが、2015年以降も地方の人口減少に歯止めがかかっていないのが実情だ。日銀は、2018年6月に「人口減少による国内需要の先細りへの懸念が強いことが、企業の設備投資抑制につながっている」との調査結果を発表している。

地方の中小企業は、コロナ禍以前からすでにこの5つの問題を抱えていた。ただ、景気拡大の局面においては、たとえばインバウンド需要の急増などもあり、これらの問題に目をつぶって事業を続けていた企業が少なくなかっただろう。宮内氏は、「コロナ禍によってこれらの問題が表層化したことで、流れに身を任せているだけでは諸問題の悪化は避けられない状況になった」と話す。