「幼児教育・保育の無償化」の実施に伴い、3~5歳児の保育料が無償となりましたが、0~2歳の未就学児の無償化は、住民税非課税世帯のみが対象であることから、特に共働きの世帯では、これまでどおり保育料を支払っている家庭が多いでしょう。

保育料を負担に感じている家庭におすすめなのが、確定拠出型年金「iDeCo」。将来のための資産形成に役立つiDeCoですが、子育て世帯にとっては、iDeCoを利用すると保育料が安くなるという大きなメリットもあります。ここでは、その仕組みを解説します。

保険料が決まる仕組みとポイント

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(画像=PIXTA)

保育料は親の所得によって決まり、親の所得が高ければ高いほど負担が大きくなります。つまり、所得が下がれば保育料も下がるのです。その仕組みを詳しく見てみましょう。

保育料は親の「所得割額」で決まる

保育料の算出に使われる「所得」は実際の額面年収ではなく、主に市区町村民税における「所得割額」に応じて市区町村ごとに定められます。公立・私立を問わず、認可保育園であれば保育料の算出方法は同じですが、保育料決定の階層区分などは市区町村ごとに異なります。

前年の課税所得額によって算出される

所得割額は、前年の所得金額に応じて課されます。つまり、前年の課税所得金額が減れば、その分所得割も減り、そこから算出される保育料も安くなる可能性があるのです。

とはいえ、そのために収入を減らすのは本末転倒です。収入を減らすことなく、課税所得金額を減らす方法を解説します。

iDeCoを活用すると保育料が安くなるって本当?

課税所得金額を減らすために、「所得控除」を利用する方法があります。

「iDeCo」は小規模企業共済等掛金控除の対象

課税対象となる所得額は、配偶者控除や社会保険料控除、生命保険料控除などの所得控除によって減らすことができます。所得控除は、所得税額を計算するときに各納税者の個人的事情を加味するもので、要件に当てはまる場合は課税される所得額が減る仕組みです。

iDeCoは、小規模企業共済等掛金控除の対象です。この控除による節税効果は生命保険料控除などに比べて大きいため、これがiDeCoを始めるきっかけとなることも多いようです。

保育料は、自治体ごとに定められた市区町村民税(特別区民税)の所得割額による階層区分に応じて算出されます。小規模企業共済等掛金控除によって課税所得額が減り、その結果市区町村民税(特別区民税)の「所得割額」が減ることで保育料の算定基準となる階層区分が下がり、保育料が減額されます。

保育園を利用する前にiDeCoを始めておく

前述のとおり、保育料は前年の課税所得金額をもとに算出されるため、保育園を利用し始める前に準備しておくのがおすすめです。

ただしiDeCoによる控除があっても、所得割額の階層区分が下がらない場合は、保育料は下がりません。また、保育料に算出には兄弟の有無や保育時間、減免措置(生活保護世帯、住民税非課税世帯など)など、他の条件も加味されることを覚えておきましょう。

無償化対象外の家庭はiDeCoを活用しよう

幼保無償化によって、3~5歳の子どもと住民税非課税世帯の子どもは保育料が無料になったため、iDeCoで保育料が安くなる可能性があるのは、住民税非課税でない世帯で3歳未満の子どもを保育園に預けるケースです。

保育料は、基本的に税額控除が差し引かれる前の所得割額で判定されます。保育料算定の基準となる市区町村民税の所得割額の計算には、「住宅ローン控除」「寄附金控除」「配当割額・株式等譲渡所得割額控除」「配当控除」「外国税額控除」は適用されません。つまり、住宅ローン控除やふるさと納税(寄付金控除)による税額控除を受けていても、保育料は安くならないのです。

逆に言えば、すでに税額控除を受けていて、iDeCoに加入しても所得控除による節税効果はあまり見込めない人でも、iDeCoを始めることで保育料が安くなる可能性があるのです。

iDeCoで安くなる保育料はいくら?シミュレーションしてみよう

保育料は、世帯あたりの住民税をもとに決定されます。毎年5~6月頃に自治体や会社から届く住民税決定通知書で、保険料を試算することができます。

住民税のうち、保育料に関係するのは「市区町村民税」です。厳密には市区町村民税の所得割額をもとに決定されるため、所得割額を算出できれば保育料がわかります。

市区町村民税の所得割額は、「課税の基になる所得(課税所得金額)×税率-税額控除」で計算できます。町田市の条件を例に、夫婦でiDeCoに毎月1万円ずつ拠出すると、どのくらい保育料が安くなるのかシミュレーションしてみましょう。

  iDeCo未加入 iDeCo加入
夫婦の世帯年収 父500万円 母300万円 父500万円 母300万円
社会保険料
(年収×14%で試算)
70万円 42万円 70万円 42万円
iDeCo掛金 70万円 42万円
所得割 14万4,300円 6万8,700円 13万7,100円 6万1,500円
保育料
(標準時間/月)
3万8,200円 3万5,600円
保育料
(短時間/月)
3万4,700円 3万2,300円

※子は第一子のみとし、0~2歳児と仮定。

iDeCoへの加入による「小規模企業共済等掛金控除」によって、保育料が下がることがわかります。ちなみに、平成30年3月末時点のiDeCoの平均掛金額は1万6,222円/月であり、職種ごとに定められた上限額まで拠出すれば、さらに保育料を下げることができるかもしれません。

負担なくiDeCoを活用しよう

iDeCoに加入すると、将来のお金を積み立てながら節税でき、保育料まで安くなる可能性があります。ただし、その効果は個人や世帯ごとに異なるため、事前にシミュレーションをして検討することをおすすめします。

iDeCoの資産は原則として60歳になるまで引き出すことができませんが、掛金を変更することはできます。保育料を下げるために、子どもの保育料が無償化対象になるまでは上限額を拠出して、その後は掛金を減らすなど、生活の状況に合わせて見直すといいでしょう。

木村茉衣(FP資格保有/事業・生活設計コーディネーター)
地銀勤務を経て、IT企業にて新規事業設計・メディア事業などに従事。現在は地方創生を主軸に、中小企業・自治体の経営・PRサポートに尽力している。関心分野は行動経済学、環境経営など。暮らしに役立つ生活経営のtipsなども発信中。

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