老後資金の調達方法の一つとして知られるリバースモーゲージは、マイホームを持っている人にとっては、検討する価値がある商品です。一方で、融資を受けるには一定の条件があるため、自分にあてはまるかどうか確認する必要があります。本記事では、リバースモーゲージの仕組みと、メリット・デメリットおよびリスクについて詳しく解説します。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージ
(画像=new-africa/stock.adobe.com)

リバースモーゲージは老後資金の新しい資金調達方法として近年需要が急激に伸びています。東京スター銀行のリバースモーゲージ「充実人生」の融資残高は、2009年12月末の約200億円から毎年増え続け、2019年12月末には6倍以上の1,200億円を超えています。

リバースモーゲージとは、自宅を担保にして金融機関から融資を受け、名義人の死亡後に担保に入っている不動産が売却され、借り入れたお金が返済される仕組みです。存命中は利息のみ支払えばよいため、毎月の返済負担が少ない融資法として注目されています。

リバースモーゲージのお金の受け取り方には、毎月一定額ずつ融資を受ける「年金タイプ」、まとまったお金を一括で受け取る「一括タイプ」、定められた融資枠の中で希望の額を必要なときに借りる「都度融資タイプ」の3つがあります。ほかにも金融機関によって独自の融資タイプがあるので、事前に自分の生活スタイルに適した融資方法を選択することが大事です。

万一死後の売却で残債務が残った場合は2つの対応コースがあります。「ノンリコース型」を選択すると、売却代金が返済額を下回った場合でも、相続人が債務を引く継ぐ必要はありません。もう1つの「リコース型」は、相続人が残債務を返済する必要があります。相続人のことを考え、ノンリコース型を選択する人が多いようです。

リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージには以下のようなメリットがあります。

自宅を売却しないので、生活スタイルに変化がない

最も大きなメリットは融資ですので、自宅の名義が変わることなく、そのまま住み続けられることです。自宅を売却したくない人の一番大きな理由は、住み慣れた家を離れたくないことでしょう。リバースモーゲージであれば自宅を失わずに融資を受けられるので、生活スタイルに変化なく暮らし続けられます。

高齢や低収入でも借り入れできる

住宅ローンには完済時の年齢や年収などの制限がありますが、リバースモーゲージはシニア向けの融資のため、高齢や低収入の方でも借り入れできるメリットがあります。申込可能年齢は50~65歳以上まで金融機関によって異なります。年収に関しては、東京スター銀行では年金収入などの安定収入が120万円以上から申し込みを受け付けています。

また、65歳以上で年収が120万円に満たない場合は、厚生労働省が運営する「生活福祉資金貸付制度」を利用することができます。同制度のうち「不動産担保型生活資金」は、いわば国営版のリバースモーゲージといえる制度で、住んでいる不動産であれば一戸建て・マンションいずれも対象です。以下のように2種類があり、それぞれ貸付金額などに違いがあります。詳しくは厚生労働省の「生活福祉資金貸付条件等一覧」をご確認ください。

「不動産担保型生活資金」「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」
資金の種類低所得の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金要保護の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金
貸付限度額・土地の評価額の70%程度
・月30万円以内
・貸付期間
借受人の死亡時までの期間又は貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間。
・土地及び建物の評価額の70%程度(集合住宅の場合は50%)
・生活扶助額の1.5倍以内
・貸付期間
借受人の死亡時までの期間又は貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間

(参照:厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧」)

毎月の返済負担が少ない

リバースモーゲージは毎月元金の支払いをすることなく、利息の支払いのみで自宅に住むことができます。マンションでいえば、家賃を払わずに管理費のみ払って住むようなものと言えるかもしれません。

なお、金融機関によっては、利息も死亡後に一括して支払う仕組みを採用している商品もあるので、上手く利用すれば毎月の支払いがまったくなく自宅に住める可能性があります。

リバースモーゲージのデメリット

一方、リバースモーゲージには以下のようなデメリットがあります。

融資対象が一戸建ての金融機関が多い

リバースモーゲージのデメリットは、融資対象の物件を一戸建てに限定している金融機関が多いことです。その理由は、金融機関の不動産評価額が建物が建っている土地をメインに決定されるからです。ただし、三井住友信託銀行の「不動産活用ローン(リバースモーゲージ)」をはじめ、マンションを対象にしている金融機関もありますので、ホームページで商品内容を確認するとよいでしょう。

住宅ローンよりも金利が高い

リバースモーゲージの金利は住宅ローンよりも大幅に高いのがデメリットです。りそな銀行2020年9月の金利で見ると、住宅ローンが全期間型変動金利で0.470%なのに対し、リバースモーゲージは変動金利で2.475%と2%以上の開きがあります。

リバースモーゲージは毎月利息のみを支払う仕組みですので、金利負担を直接感じるデメリットがあります。

親族間の了承が必要

相続に関するトラブルは避けたいものです。子どもがいる場合、親の自宅を将来相続して住みたいと考えているケースもあるでしょう。したがって、リバースモーゲージに申し込む場合は、事前に親族間で話し合い了承を得る必要があります。

リバースモーゲージのリスク

デメリットというよりも、リスクといえる注意点もあります。

長生きすると限度額を使い切ってしまう

リバースモーゲージは商品の性格上、長生きすればするほど設定された融資限度額までの資金を早めに使い切ってしまうリスクがあります。また、最終返済期限が決まっている金融機関と契約した場合、想定以上に長生きすると存命中に契約期間が終了してしまうリスクがあります。例えば、60歳で25年返済の契約をして85歳でも存命している場合は、契約期間満了となり、元金と利息を一括返済しなければなりません。最悪の場合は返済できずに自宅を失う場合もあります。

不動産価値の下落で融資限度額の見直しがある

担保になっている土地や建物の価値が下落すれば、融資限度額を見直される場合があります。リバースモーゲージの融資額は、不動産評価額の50~80%程度といわれていますが、建物は時間とともに劣化していきます。そのため、金融機関は契約開始後も数年単位で評価額の見直しを行っているのです。契約時よりも評価額が下落すると借りられる上限額も減ってきます。担保割れが生じた場合は、超過分を一括して支払うリスクが生じます。

金利上昇リスクがある

リバースモーゲージは基本的に変動金利で契約されます。そのため、金利の上昇によって月々の支払いが増えるリスクがあります。また、住宅ローンと異なり、団体生命保険に加入することはできないため、高度障害状態になった場合でも支払いが免除されることはありません。

リバースモーゲージを配偶者が引き継ぐことはできるのか

もう一点気になるのが、名義人が死亡した場合に残された配偶者がリバースモーゲージの契約を引き継げるかどうかです。借金が残ることがないとはいえ、自宅を失い新たな住まいを見つけるのは不安があるでしょう。

この点に関しては、契約を引き継げる金融機関も多いので、はじめに契約する際に確認しておくと安心できます。例えば、群馬銀行のリバースモーゲージ「夢のつづき」では、同居している配偶者が契約を引き継ぐことができます(審査あり)。ただし、配偶者の子どもが同居する場合は申込みできないので注意が必要です。

ここまでみてきたように、リバースモーゲージは老後資金をつくるのに適した商品ではありますが、デメリットやリスクも多く存在します。自分の生活の事情や所有する不動産の条件によく照らし合わせ、メリットのほうが多いと判断できれば申し込みを検討するのもよいのではないでしょうか。(提供:YANUSY

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