「株式市場が大暴落したときに、資金があればもっと買えたのに」、あるいは「掘り出し物の不動産物件を見つけたのに、資金が足りなくて買えなかった」と悔やんだことがある人は多いでしょう。そこで今回は、投資のチャンスを逃がさないために、キャッシュポジションを高めておくことの重要性を解説します。

投資チャンスはいつ巡ってくるかわからない

不動産
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投資のチャンスは、いつやって来るかわかりません。2020年ほど、そのことを実感した年はないでしょう。世界の株式市場は2020年1~2月までは順調に上昇していました。日経平均株価は1月17日に2万4,115円95銭、ニューヨークダウ工業株30種平均は2月12日に2万9,568ドル57セントの年初来高値を付ける展開。ニューヨークダウは3万ドル突破が確実視される状況にありました。

この株高を一転させたのが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大です。2月下旬から3月下旬にかけて感染状況は深刻さを増し、日経平均株価は3月19日に1万6,958円19銭(高値から29.7%下落)、ニューヨークダウ工業株30種平均は3月23日に1万8,213ドル65セント(同38.4%下落)の年初来安値まで大暴落しました。ニューヨーク市場では連日取引が自動停止するサーキットブレーカーが発動され、「世界大恐慌に突入か」という悲観的な見方が出るほどの歴史的な暴落相場になりました。

本来なら売る必要のない超優良株までが売られ、アップルも3月23日に224ドル37セントまで下落します。その後アップルは株式市場の反発とともに上昇を続け、8月24日には500ドルを突破、安値から短期間で2倍以上になったのです。暴落時に手持ち資金が豊富で、思い切って買い出動していれば、アップルをはじめとする超優良株の反発で大きな利益を得られたでしょう。

株ほどではありませんが、不動産も新型コロナウイルスの影響を少なからず受けています。三幸エステートの調べによる東京23区全体のオフィス平均空室率は、2020年4月の1.04%から連続して上昇し、8月には1.49%まで悪化しています。コロナウイルスの感染が終息に向かうまでは、オフィス・店舗物件は厳しい状況が続きそうです。

一方で東京五輪・パラリンピックが延期され、不動産市場全体の先高観が後退したことで、マンションをはじめとする不動産投資の環境が整ってきたとも言えます。

投資チャンスを逃がさないためには、キャッシュポジションを高めておく戦略が有効です。キャッシュポジションとは、投資可能な資金のうち投資に回していない資金のことです。

ここで、株式投資と不動産投資におけるキャッシュポジションの意味を確認しておきましょう。

株式投資におけるキャッシュポジション

株式投資においては、証券会社口座内の「買い付け余力」がキャッシュポジションにあたります。一般的に買い付け余力は、預かり金+MRF残高(ネット証券の場合は提携銀行の預金の場合もある)と同額ですが、すでに売却して受け渡しが未決済の金額があれば、買い付け余力に含まれることがあります。

証券口座内で保有している株は担保にはならないため、株のみに投資してしまうと買い付け余力がほとんどなくなってしまいます。「単に資金を寝かせておくよりは、何らかの株で運用して配当金を得るほうが得」と考える人もいるでしょう。しかし買い付け余力がなくなってしまうと、大暴落が起こって千載一遇の買いチャンスが来たときに、すぐに買いを入れることができません。

結局持ち株を強制的に損切りして、安くなった優良株を買うという戦略をとらざるを得なくなります。無理に運用せず資金を温存していれば、その資金は暴落の影響を受けず、即座に優良株の購入に充てられたはずです。

不動産投資におけるキャッシュポジション

不動産投資におけるキャッシュポジションは、銀行ローンを組む際に重要なポイントになります。あまりに自己資金が少ないと、ローンの審査に通らないことがあるからです。頭金の目安は、最低でも物件価格の5~10%と言われています。

ただし、単に頭金を多く入れれば良いというわけではありません。不動産賃貸経営では、修繕のトラブルなどで急に資金が必要になることがあります。一時的に空室が発生することもあるでしょう。したがって、自己資金を全額頭金として入れてしまうのは得策ではありません。頭金が10%で審査に通る見込みがあれば、残りの資金はキャッシュポジションのまま温存しておいたほうがリスクは低くなります。

キャッシュポジションを高めるために有益な運用先

では、キャッシュポジションを高めるためには、余剰資金をどのように運用すればいいのでしょうか。株の場合は、MRF(マネー・リザーブ・ファンド)という証券総合口座専用の商品があります。追加型公社債投資信託で毎月決算が行われ、自動的に再投資されます。手数料なしで入出金できるため、投資の待機資金を運用するには最適です。総合口座を開設する際にMRFも同時に申し込めば、以後株式などを購入する際にMRFが売却されて購入資金に充てられます。

外国株に投資するための待機資金の運用に便利なのが、外貨建MMF(マネー・マーケット・ファンド)です。格付けの高い外貨建ての短期証券に投資する投資信託で、外貨建てのため同国通貨による買い付け(米ドル建MMFを売却して米国株を購入するなど)の場合は為替手数料がかかりません。米国株には原則として年4回配当があるので、外貨建てMMFを申し込んでおけば資金を無駄なく運用できます。

一方、不動産投資を目的としたキャッシュポジションは、証券会社よりも取引銀行で運用するほうが有益と言えます。掘り出し物の物件を見つけたら、なるべく早く融資の確約を得ることで良い物件を逃がさずに済みます。取引銀行で日頃から定期預金や定期積金で運用していれば、それ自体が信用になり融資を受けやすくなるでしょう。将来複数の物件を運用したいと考えているなら、なおさら銀行との付き合いは大事です。

金融緩和のときこそキャッシュポジションが重要になる理由

現在世界の金融市場は、未曾有の金融緩和で金余り状態が続いています。2020年7月現在の主要国の政策金利は、欧州、ノルウェー、スウェーデンがゼロ金利、日本(−0.10%)、スイス(−1.25~−0.25%)がマイナス金利を実施しています。英国0.10%、米国0.0~0.25%、カナダ、豪州、ニュージーランドが0.25%と、他国も軒並み低金利政策を採っています。

2020年、世界の株式市場は3月のコロナショックによる大暴落から、予想外に早い立ち直りを見せました。日本取引所のサイト「東証マネ部!」は、コロナショックと2008年に起きたリーマンショックの大きな違いの一つに「金利水準の違い」を挙げています。米国長期金利はリーマンショック時に4%程度だったのに対し、コロナショック時は1%程度と大きな開きがあります。

コロナショックが起きたときは超低金利状態だったため、金融政策で打つ手は限られていました。当面は金融緩和政策を継続するよりほかなかったため、株式市場は景気回復期待を背景に予想外の急回復を見せたのです。

長引く低金利により銀行の利ザヤも縮小しており、銀行株の低迷につながっています。銀行は企業に貸しても利ザヤを稼げないため、近年は個人向けローンの融資拡大にシフトしています。住宅ローンをはじめ、不動産融資も以前よりは融資基準が緩くなっていると言われています。

以上のような背景があるため、株も不動産も金融緩和のときこそ、無理して低金利商品で運用せず、キャッシュポジションを高めておくことが重要なのです。

現在は不確実性の時代であり、今後は数年に一度は何らかのアクシデントの可能性を考慮して備えておく必要がありそうです。経済危機が訪れて、優良な株や不動産の買いチャンスが巡ってきときにすぐに買い出動ができるように、キャッシュポジションを高めておくことの重要性を常に心に留めておきたいものです。(提供:Incomepress


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