一口に「不動産投資」といっても、対象になり得る物件は多岐に渡ります。例えば、都心の新築区分マンションや地方の築古一棟アパート、戸建、テナントビルといった物件があります。

これから不動産投資を始める人は、投資すべき物件の種類や、それぞれの特徴やメリット・デメリットを知ることからはじめていきましょう。

これらを考えるにあたっては、不動産投資における自分の目的、すなわち「何のために不動産投資をするのか」というゴールから逆算するとよいでしょう。目的が不明瞭なまま不動産投資を行うと、大きな損失や失敗を招くおそれがあります。

それでは、不動産投資の目的にはどのようなものがあるでしょうか。また、その目的に合うのはどのような物件でしょうか。

投資用物件の4つの種別とその特徴

不動産投資
(画像=sommart/stock.adobe.com)

投資対象になり得る物件は多岐に渡ると書きましたが、ここではそれらを4つの要素に分類し、その特徴とともに解説します。4つの要素とは、(1)物件種別、(2)築年数、(3)立地、(4)物件規模です。

不動産投資の目的によって選択するカテゴリーやタイプなどが異なるため、投資対象も変わります。基礎知識として、この点を押さえておくとよいでしょう。

(1)物件種別

物件種別には、大きく分けて住居系と非住居系があります。

住居系の代表は、マンションやアパート、戸建などです。それぞれの人生においても、賃貸物件での居住や住居購入を経験しているケースも多いため、一般投資家でも目利きがしやすいことが特徴です。当該エリアの住環境としての良し悪しや当該住居の間取りの使いやすさは、消費者としての目線や自身の経験で判断しやすいといえるでしょう。

非住居系は、オフィスや商業施設などです。賃貸借契約において複雑かつ専門的な内容が多いため、一般投資家には馴染みが薄く、目利きがしにくいという特徴があります。例えば、オフィスや商業施設の賃貸借契約では、設備造作や契約形態、原状回復に関する専門的な知識も必要です。

したがって、一般投資家が不動産に投資をする場合は、住居系のほうが適しているといえるでしょう。

(2)築年数

築年数は、新築と中古に大別できます。

新築とは「新たに建設された住宅であって、建設工事の完了から1年以内で、かつ人が住んだことのないもの」を指します。特徴として、物件にプレミアムがついているため賃料を高く設定できることや、最新鋭の設備を備えているので市場のトレンドを反映しやすいこと、設備の故障や修繕のリスクが少ないことが挙げられます。

中古とは、新築物件以外のすべての物件です。新たに建設された住宅ではない、または建設工事の完了から1年以上経過している、または人が住んだことのある物件です。特徴として、新築時に比べると賃料が値下がりして底打ちしている可能性があるため、賃料の下落リスクを抑えやすいことや、設備などの老朽化による故障や修繕などの必要性が挙げられます。

(3)立地

立地の区分は、都心と地方です。

都心の特徴として、物件価格および賃料が高いことや賃貸需要が旺盛であり入居者付けがしやすいこと、物件に対する評価が高いため、金融機関から融資を受けやすいことなどが挙げられます。

地方の特徴は、安く取得できる物件が多く高い利回りが期待できることや、賃貸需要が都心ほど旺盛ではないため、入居者付けに苦労する場合があることです。

(4)物件規模

物件規模は、一棟物件と区分物件に分類できます。

一棟物件とは、当該不動産の敷地および建物のすべてを所有する形態の物件を指します。特徴として、物件全体の運営をすべてコーディネートできることや売却方法のバリエーションが多いこと、管理の手間がかかることが挙げられます。

区分物件とは、1つの建物に対して複数の所有者がいる形態の物件を指します。特徴として、共用部の管理を管理組合に外注できることや、独自の決定権が専有部にしかないこと、土地の所有権が事実上ないことが挙げられます。

不動産投資の3つの目的について

不動産投資も投資の一種であり、お金を増やすことが至上命題です。一方で、株式や債券への投資にはない不動産投資特有の目的もあります。

それを含めると、不動産投資の目的は3つあります。それは、(1)副収入としての長期保有、(2)売買差益を得るための転売、(3)経費計上による節税です。

何を目的として不動産投資をするかによって、購入する物件や出口戦略は大きく変わります。したがって、まずはこの3点を基本方針として設定することが、不動産投資の出発点といえます。

(1)副収入としての長期保有

この目的は、本業での収入や給与所得に収入の柱を付け加えるための不動産投資です。

不動産投資では、賃借人がいる限り半永久的に賃料収入を得ることができます。本業で収入が滞ったり、給与が減ったりしても、不動産が自分の代わりに稼ぎ続けてくれるのです。

個人の不動産投資においては、以下の2つの理由から短期で売買するよりも長期で保有するのが得策といえます。

1つ目は、不動産投資では短期で売買を繰り返すと売買に係る費用や税金がかさむため、そもそも短期売買には向いていないからです。

2つ目は、一般の個人投資家が相場よりも大幅に安く売られている物件をプロの買取業者よりも早く見つけ出すのは、極めて困難だからです。

したがって、個人投資家は短期売買による差益を得るよりも、長期で保有することを念頭において不動産投資を行うべきです。

(2)売買差益を得るための転売

この不動産投資の目的は、不動産を安く買って高く売り、その差益を得ることです。

市場には出回っていない掘り出し物を見つけたり、市場に出回っている物件を交渉によって格安で買うことができたりすれば、転売でも利益を得ることができます。

しかし(1)で述べた2つの理由から、個人投資家がこれを行うのは非常にハードルが高いといえます。

(3)経費計上による節税

この不動産投資の目的は、不動産投資という事業を通じて本業の所得にかかる税金を圧縮することです。
これは、特に自営業者や高所得のサラリーマンに有効な節税方法です。

不動産投資では、事業にかかった費用を経費として計上することができます。例えば、物件を視察する際の交通費や不動産業者との打ち合わせの費用、金融機関に支払う金利、建物の減価償却費などです。

減価償却費は実際に出費を伴うものではなく、帳簿上にだけ計上される経費であるため、効率的に申告上の所得を圧縮することができます。

減価償却費とは、建物や付帯設備の経年劣化を毎年の経費として計上するものです。投資する物件の規模や築年数、構造(木造、RC造など)にもよりますが、一定期間に渡って毎年数百万円単位の経費を計上することができる場合もあります。

なお、減価償却費には計上できる期間が定められており、永続的に計上し続けられるわけではありません。

各目的に適した物件種別の例

不動産投資の主な3つの目的について解説しましたが、各目的に合う物件はそれぞれどのような種別なのでしょうか。

目的に合致した手段を取ることが、不動産投資の成功への近道です。逆にいうと、目的と手段がずれてしまうと大きな損失を被ってしまうリスクがあります。これは、不動産投資において最も重要な視点の一つです。

副収入としての長期保有

この目的で不動産投資を行う場合は、都心の区分マンションへの投資がよいでしょう。

入居者付けがしやすく、管理の手間がかからず、エリアを分散して物件を所有できるからです。

例えば、都心のターミナル駅から徒歩10分圏内の5,000万円の区分マンションに投資するとします。

入居者付けの観点では、入居者が賃貸物件を探す際は交通利便性が重視されることが多く、ターミナル駅周辺であれば賃貸需要が旺盛なので、入居者付けがしやすいといえます。

管理の手間の観点では、区分マンションにおいては共用部の管理や清掃、物件全体の運営方針に関する意思決定の取りまとめを管理会社が一括して行うため、一棟物件に比べるとオーナーの管理の手間が軽減され、本業に支障をきたすリスクは低めです。

エリア分散の観点では、区分マンションは一棟物件よりも価格が安いため、同じ投資金額でも複数のエリアや物件に分散して投資することができます。

上記の例の場合、ターミナル駅周辺などの賃貸需要が旺盛なエリアで複数の一棟物件を購入するのは、グロス価格の点で現実的ではありません。一方で区分マンションであれば、都心であっても数戸程度の物件に分散して投資することができます。

すなわち、エリアと物件の分散によってリスクの分散も実現できるのです。

以上の理由から、この目的の実現には都心の区分マンションへの投資が有効といえます。

売買差益を得るための転売

この目的で不動産投資を行う場合は、不動産価格が上昇しているエリアの物件や、何らかの事情で安く売られている物件への投資が向いているでしょう。

売買差益を狙う方法には、価格の上昇トレンドに乗る、相場よりも安く買って相場以上の価格で売るという2つの方法があるからです。

例えば、大規模開発や海外からの資本流入によって不動産価格が高騰しているエリアの物件や、全空室になってオーナーが安売りしてでも手放したい物件、急な資金需要によって早く現金が欲しいオーナーの物件は、売買差益を狙えます。

以上の理由から、この目的の実現には上記のような特殊事情のある物件への投資が有効といえます。

経費計上による節税

この目的で不動産投資を行う場合は、木造の中古アパート(築22年以上)に投資するとよいでしょう。短期間で多額の減価償却費を計上することができるので、その期間の課税所得を大幅に圧縮できるからです。

木造物件の場合、法定耐用年数である22年を超えると減価償却費を4年間で計上することができます。

例えば、1億円(建物価格、土地価格ともに5,000万円)、利回り10%の木造アパートに投資をするとします。

減価償却の対象は建物のみなので、本例では5,000万円を4年間で償却することになります。すなわち、4年間に渡って年間1,250万円を経費として計上できるのです。

年間1,000万円の賃料収入を得ながら帳簿上の赤字を作り、課税所得を圧縮するという節税メリットも享受できます。

以上の理由から、この目的の実現には木造の中古アパート(築22年以上)が有効といえます。

自分の投資目的に沿った物件選び

上述のように不動産投資の主な目的は3つあり、それぞれに合う投資物件があります。自分の不動産投資の目的を確認し、それに最も近い物件に投資をすることが不動産投資の成功への近道です。

個人投資家なら短期で売買益を狙うよりも、長期で保有して新しい収入の柱を持つことが、最もシンプルで本業との両立もしやすいでしょう。

長期保有を考える場合には、人口減少が続く日本においては、賃貸需要が旺盛な都心にあり、現物資産としての耐久性が高い新築マンションへの投資が理にかなっているといえそうです。

日本で最古の民間施工マンションである「四谷コーポラス」は1956年に建てられ、その後60年以上に渡って現役で稼働し続けました。2017年に建て替えが決まりましたが、日本のマンションの耐久性の高さを証明しています。

このように、マンションは築年数が経っても適切に維持・管理をすれば、数十年に渡って稼働してくれます。自分の投資目的に合わせた物件選びをし、個人投資家の場合は、都心の新築マンションを長期保有することも選択肢として検討してみるとよいでしょう。(提供:Incomepress


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