貴金属投資はリスクの分散のために用いられることがの多い投資方法のひとつです。この記事では、コロナショック下の株価の動きと金価格の急騰の背景を説明します。その上で、金投資の中でも有力候補である「純金積立」のメリットや具体的な投資の方法、その注意点について解説していきます。

目次
2020年のコロナショックと世界経済の動き
コロナショック下における金投資の意義
投資の対象としての金の特徴
金投資の手段とそれぞれのメリット・デメリット
コロナ下において「純金積立」が生きるメリットと注意点
まとめ:今後が不透明だからこそ分散投資を

2020年のコロナショックと世界経済の動き

金投資
(画像=gina-sanders/stock.adobe.com)

2020年3月、世界の株価は新型コロナウイルス蔓延の影響により急落しました。株価は直線的に下がりましたが、その後は持ち直して、2020年6月は暴落前の高値に戻っています。ニューヨーク・ダウを例に説明すると次のとおりです。

▽2020年3月・2020年6月のニューヨーク・ダウ平均株価

日付終値
2020年3月4日27,090,86
2020年3月23日18,591.93
2020年6月8日27,572.44

一方で、世界銀行が2020年6月に発表した予測によると、2020年の世界の経済成長率は、マイナス5.2%に落ちこみ、新型コロナウイルスの収束が遅れた場合、マイナス8%にまで悪化する可能性があると指摘されています。

また、同年の8月17日内閣府が公表した2020年4~6月期の国内総生産の一次速報では、前期(1~3月)より7.8%減、年率換算で27.8%減と戦後最大の落ち込みといわれています。

それにもかかわらず、株価が下落しない原因は、米国も含めた世界的な超金融緩和によるものですが、経済指標の動向次第では、いまの株高はいずれ崩れてもおかしくないという状況にあるといえるでしょう。

コロナショック下における金投資の意義

金の価格を見ると、2015年末から上昇を続けていました。そして、このような状況の中でも2020年3月下旬の株価暴落以降、いったんの下落の後で上昇しています。2020年3月下旬の1トロイオンスあたり1,500米ドルから、同年7月には2,000米ドル超にまで、大きな上昇を記録しているのです。

「有事の金」といわれていますが、世界中が新型コロナウイルスの危機にさらされる中、今後ありうる株安と超金融緩和がもたらすインフレによる通貨安をヘッジする手段として、金が選ばれているのではないでしょうか。

投資の対象としての金の特徴

投資手段としての金の特徴は次のとおりです。

金の特徴1:埋蔵量に限りがあるため、希少性が高く、腐食せず、不変性がある

金の希少性と不変性が、歴史的に金への信頼をゆるぎないものとしてきました。それゆえ、戦争、天災等の非常事態が生じ、株式や通貨への信頼が崩れかけたとき、人々は自分の資産を金に換え守ってきたため、「有事の金」と呼ばれてきました。

このような歴史的な背景から、今後も金自体の価値がゼロになることはないでしょう。実際に直近においても、1971年のニクソン・ショックまでは金とドルが交換可能という方法で、世界の基軸通貨のドルを支えてきました。一方、株式や通貨は企業や国のような発行体があり、発行体の信用で価値が保たれますが、発行体が破綻すると価値はゼロになります。

金の特徴2:配当や金利を生まない

金は株式や通貨と違い、配当や金利を生みません。すなわち、インカムゲインはもたらさないので、金融資産としてみると、時の経過に伴い、自動的に価値が増えることはありません。市場における金価格上昇によるキャピタルゲインしか期待できないという性格を持っています。

金の特徴3:現物資産であるが、流動性が高い

金の取引は投資信託など一部を除き、一般に現物のやり取りを伴うものです。取得した金の現物は保管を委託することが一般的ですが、必要なら実際に手元に保有する方法もあります。しかし、取引インフラが整備され、流動性が高いので、いつでも換金可能です。

金の特徴4:取引は米ドルで行われるので、ドル建て資産である

金は米ドルで取引されているので、米ドル建ての資産と考えるとよいでしょう。1グラム当たり何円という円建ての価格もありますが、それはあくまでも、ドル建ての金価格を円ドル為替レートで換算したものにすぎません。

金投資の手段とそれぞれのメリット・デメリット

それでは、金投資の手段にはどのようなものがあるでしょうか。金投資には、金の価格変動にリンクしたインデックス型の投資信託を買う方法と金の現物そのものを買う方法があります。前者のほうが比較的、買い方に柔軟性があります。以下に金投資の主な手段とそれぞれのメリットとデメリットを紹介していきます。

金投資の主な手段1:上場投資信託(ETF)

金価格とリンクして変動するETFを組成して、株式と同様、リアルタイムで売買できるようにしたものです。手数料(信託報酬)が年間0.5%程度と比較的割安で、かつ、リアルタイムの価格で売買できます。スポット買付には適していますが、毎月定額を長期にわたって購入するシステムありません。そのため、長期積立には適していません。

金投資の主な手段2:純金積立

毎月一定額または一定量の金を購入し、積立を行う方法です。ドルコスト平均法で少額を長期にわたって購入することも可能です。また相対的なリスクが低く、投資初心者にも適した投資方法です。経費も購入手数料として1.5~2.5%がかかるだけで、継続的にかかる信託報酬手数料はありません(一部保管手数料がかかる場合もある)。短期譲渡所得の場合だと、売却益のうち50万円が控除されます。そして、長期譲渡所得とみなされると、課税所得がさらに1/2になるという税制優遇もついています。

金投資の主な手段3:金地金

金現物を購入する方法は、売買手数料は約1.2~1.8%と経費もそれほど掛からず、純金投資と同じ税制優遇も期待できます。ただ、少額購入をする場合、手数料が割高になってしまう欠点があります。また、グラム単位での購入が義務付けられるので、ドルコスト平均法による長期積立には適していないでしょう。

コロナ下において「純金積立」が生きるメリットと注意点

前述したように、新型コロナウイルスの現状、金融市場の先行きは不透明です。こういう状況では、起こりうるリスクを、できるだけ小さくするための分散投資が求められます。

分散投資をする手段

まず、長期積立により時間のリスクの分散を行い、次にドルコスト平均法により買付平均単価を低くする必要があります。

ドルコスト平均法は、別名、定額売却法ともいい、毎月1万円分など、一定額で金を買う方法です。この場合、価格の安いときは多く、価格の高いときは少なく購入することになります。毎月一定量の金を購入する定量購入法と比べると、平均買付単価が低くなるメリットがあります。

3つの手段の中で長期積立ができるのは「純金積立」のみ

上記3つの投資手段のうち、ドルコスト平均法による長期積立ができるのは純金積立だけです。ドルコスト平均法は、価格変動が大きいと長期的に見た場合、買付平均単価がより低くなります。そのため、今後、先行き不透明な相場で価格変動も予想されることも、ドルコスト平均法にはプラスに働きます。

また、売り方については金を一定量、例えば、1グラムずつ売却する定量売却法をおすすめします。定量売却法を採用したほうが、ドルコスト平均法(定額売却法)を採用するより、高い価格で売却することが可能になります。

買いは「定額売却法=ドルコスト平均法」で、売りは「定量売却法」で、ということです。

そして、売り時は非常に難しく、もっと上がると思っているうちに、価格が下がることがよくあります。それに対し、利益が出たときにまず少額を売ることは抵抗なくできます。その後も少しずつ機械的に売却していけば、売り時を逃すこともありません。

現状では金価格は急騰していますが、今後金価格がどのように推移するかは、不透明です。そういう状況下では、ドルコスト平均法で長期にわたって積立を行い、価格変動に耐性を待たせることが重要です。この観点からすると、買付手数料以外の経費の掛からない証券会社で純金積立投資を行うことをおすすめします。

長期積立の注意点

長期積立の注意点は単一商品に投資が集中するということです。単一商品だけに集中投資をすることに抵抗がある人は、世界株価にリンクしたインデックスファンドの投資信託を、同じく積立で購入する方法との組み合わせがよいでしょう。

まとめ:今後が不透明だからこそ分散投資を

新型コロナショックのため、現在の金融相場は不安定です。2020年は世界各国ともかなりのマイナス成長が予想されるが、株価は新型コロナショック前の水準を保っており、「守りの資産」である金の価格は急騰しています。

このような投資環境では、リスクのコントロールのため、分散投資を考える必要があります。金投資も含め、しっかりと検討しましょう。(提供:JPRIME

著者 浦上 登


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