高収入と言われる人でも、収支をみると、お付き合いなどの支出や重い税負担で、実は「お金ストレス」に悩まされている現状が見受けられます。節税対策として有効な手段はあるのでしょうか。また、有効と言われる不動産投資は、実際どうなのか、事例から考えてみましょう。

目次
こんなに頑張っているのに重い税負担……。年収1,500万円ディーラーの嘆き
選択肢は、「収入を増やす」「支出を減らす」の二択?
収入を増やし税率を押さえる1:株、FX投資と節税の関係
収入を増やし税率を押さえる2:不動産投資と節税の関係
成功のカギは、仕組みづくり
税負担にストレスを感じることなく、人生を楽しむ

こんなに頑張っているのに重い税負担……。年収1,500万円ディーラーの嘆き

節税対策
(画像=hppd/stock.adobe.com)

「もともとクルマが好きなので、仕事はキツイけど辞めたいと思ったことはありません。同年代の会社員と比較したら年収も生活もよいですね。会社からも評価されていて、お客さまと一緒に喜べる仕事が天職だと感じています」

都内でカーディーラーをされているAさんは、ご自身の仕事と給与について、語ってくださいました。

「年収は増えていますが、食事会や飲み会への出席、後輩へのご馳走などの出費がかさみ、豊かになった実感はありません。そして、給与明細の「税額」を見るとため息が出ます。」

清潔感のある身なりや話し方から、お客様の信頼度が高いことが想像されるAさん。ここ数年で年収は大きく伸びて、昨年には1,500万円超となりました。しかし、年収の伸びに対して、手取り額はさほど増えていないのです。

一般的に高収入と言われる給与所得者の2020年分の所得税は、税制改正により一層の税負担増となりそうです。年収850万円を超える場合の給与所得控除は引き下げられました。また所得金額2,400万円を超えると、基礎控除額は段階的に引き下げられ、所得金額2,500万円でゼロとなります。

▽年収800万円以上の税負担と手取り額例

年収社会保険料税(所得税・住民税)手取り額
800万円115万円90万円595万円
1,000万円127万円138万円735万円
1,500万円156万円300万円1,044万円

※実際には、厚生年金保険料や健康保険料の算出方法による誤差があります。また自治体、家族構成や年齢、働き方により個別事情を踏まえた税負担となります。

手取り額でみると、年収が増えても、その分手取り額が増えるわけではなさそうです。

選択肢は、「収入を増やす」「支出を減らす」の二択

給与収入や相続税において、日本の税制は、収入が多いほど税負担が大きくなる累進課税制度を採用しています。「担税力」(税負担能力)に応じた課税の実現が所得の再分配というカタチで、豊かな社会を実現すると言われています。一方、「何のために働いているのか」というモチベーション低下に繋がるという声があることも事実です。

とはいえ、国の制度なので受け入れなければいけません。それを理解した上で、税金を払いつつ豊かになる対策を考えたいものです。同じ収入でも将来的に手元に残る資産を増やせるようにしましょう。

選択肢として考えられるのは、いままで以上に収入を「増やすこと」と「支出を減らす」ことです。
注目したいのは、支出削減です。日常生活において「無駄」をなくすことは、どの収入レベルでも共通するのは言うまでもありません。払うべき税金を故意に支払わない「脱税」は違法ですが、知恵と工夫での「節税」は可能な限り実行したいものです。

収入を増やし税率を押さえる1:株、FX投資と節税の関係

個人の所得に対して支払うことになる所得税には、給与収入のほかに10種類の所得があります。たとえば、株式などの配当所得や個人事業主などの事業所得、物件所有による不動産収入の不動産所得などです。

基本的には、1年間のすべての収入から必要経費などを差し引いた所得金額から、一定の税率で所得税を支払うことになります。ですが、それぞれの特色や性質をふまえた、計算方法を適用することが可能です。

給与収入以外の収入を得る手段として、「投資」に目を向けることも有効です。株やFX(外貨取引)といった投資は、その一例となります。

株式の配当所得については、「総合課税」と「申告分離課税」を選択することが可能です。総合課税の場合、給与所得と合算することで総所得額が増えます。ただし結果として、高い税率により税負担が大きくなる場合があるので注意が必要です。

一方で、申告分離課税とは、ほかの所得と合算せずに別々に課税する方法です。上場株式などの配当の税率は、20.315%(所得税15%、地方税5%、復興特別税0.315%)のため、給与所得に比べ税率を低くすることができ、高額所得者にとってはメリットがあると言えます。

なお、FX取引は申告分離課税ですので税制的には有利ですが、自身のリスク許容度にあった投資を心がけましょう。また、最近話題の仮想通貨は、雑所得として他の所得と合算する必要があります。

収入を増やし税率を押さえる2:不動産投資と節税の関係

高額所得者層の収入を増やす手段として「不動産投資」があげられます。不動産投資の魅力は、「他人資本(賃貸収入とローンによる借入れ)での資産運用ができること」と「減価償却という目に見えない経費を計上できること」でしょう。

ただし、短期的に税額を減らすことができていても、空室や築年数、エリアの条件などから当初想定の収入が見込めず、赤字経営になっているケースも見受けられます。

物件購入時に提示される魅力的な利回りの数字には、空室のリスクや修繕費などは含まれていません。金融機関からの借入れという「他人資本」を活用しつつ、時間をかけて資産化させたいものです。借入れ利率よりも物件利回りが上回れば、確実に金融資産を大きくすることが可能です。また、少ない資金で大きな投資効果を生む「レバレッジ効果」も期待できるのも不動産投資の魅力です。ただし、土地の価値、物件の価値は変動することも留意しておきましょう。

不動産投資においては、物件の経営状況を分析、把握することで、借入金返済や物件入替え、追加投資など、次の戦略を立てることが可能です。物件購入は、ゴールでなくスタートと捉え、愛情をもって仕組みをつくり、継続的に見直しすることが成功の秘訣です。

成功のカギは、仕組みづくり

節税対策は、税金の支払い方法の選択や不動産投資の経費計上だけではありません。世界情勢や経済状況、新型コロナウィルスのような予測できない環境などから、収入を増やすことは難しい時代と言われています。税制改正により一定の算式で決定する給与所得控除はコントロールできませんが、社会保険料控除などの所得控除を活用することで、課税される所得金額を抑えることは可能です。

たとえば、ふるさと納税などの寄付金控除やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの社会保険料控除、生命保険や地震保険の保険料控除額の活用などがあげられます。

上記のような活用をするためには、なぜ、iDeCoに拠出することで社会保険料が控除されるのか、など税金や社会保険料の制度を知る必要があります。

少子高齢化により年金財源が危機的状況であるなか、公的年金の不足分を自助努力で準備する必要があります。国は、投資による運用効果を活かし資産形成を推奨していますが、投資には、価格変動というリスクが伴います。投資に費やすことのできる期間や家族構成なども含めて、人により「リスク許容度」は異なります。

いずれにしても、長期的視野で、お金の流れがプラスになるような思考を身につけ、自分自身のライフプランや価値観にあった仕組みづくりを構築したいものです。そのための努力は実を結ぶと信じることです。

税負担にストレスを感じることなく、人生を楽しむ

新型コロナウィルスによる感染拡大の影響は、社会的にも経済的にも大きな影響を及ぼしています。そして、長期化することが予測されます。国や自治体では、底をついた財源を埋めるための「増税」議論が始まっています。そうした背景を知り、理解することで、自分自身と家族、社会が何を目指しているのかを考えることが大切です。

高収入ゆえの重い税負担に、諦めや嘆きの声を多く耳にします。節税対策に時間と労力を使い、必死になる人も見受けられます。不動産投資が有効であることは確かですが、きちんと「事業」として向き合ってこその対策です。これには向き不向きもあるでしょう。

また、収入に限らず、「お金ストレス」に縛られている人が多い印象です。知恵を絞り出し、工夫をすることで、最終的に資産を大きくして、次の世代に引き継いでいきましょう。そのためにも、不安の正体を知り、人生を楽しみたいものです。(提供:JPRIME

著者:大竹麻佐子


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