先月26日に大規模なハッキング被害に遭った香港を拠点とする暗号資産(仮想通貨)取引所KuCoinが、ハッキング事件に関わった疑いのある人物を特定したことがわかった。3日、同取引所CEOのJohnny Lyu氏がTwitterで報告した。
同氏によると、犯人の特定につながる証拠をもとに、今後警察も捜査に動くとしている。
また、流出したとされている2億7900万ドル(約295億円)の暗号資産のうち、新たに6400万ドル(約67億円)相当の暗号資産の凍結に成功したことも発表された。
これにより、不正流出した暗号資産のうち2億400万ドル(約215億円)が凍結されたことになる。
併せてLyu氏は、「KuCoinの運営は完全に復旧した」と述べており、今回のハッキング事件における協力者に対して感謝を表した。
同取引所で不正に流出した暗号資産はビットコイン(BTC)やテザー(USDT)、ERC20トークンなどとされており、これらはKuCoinが管理するホットウォレットから引き出されたという。
当初、2億ドル(約210億円)とされていた被害額は徐々に増え、さらに一部の銘柄はすでに分散型取引所で売却されたことも判明した。
しかし、その後は業界関係者の協力もあり、被害は小さくなりつつある。
テザー(USDT)を発行するTether社や暗号資産取引所Bitfinexのほか、OCEAN Protocol(OCEAN)、Velo Labsなどといったハッキング被害に遭った銘柄を発行するプロジェクトによって、ハッカーに渡った資産が凍結されたことで暗号資産市場全体においても混乱を最小限に抑えられたと言えるだろう。
今回のハッキング事件は、補償に関する発表や関係者への協力の呼びかけなど、KuCoinおよび各プロジェクトの初期対応の迅速さが際立っていた印象だ。
巨額のハッキング事件において1週間ほどで収束に向けた出口が見えつつある状況というのは、対応能力の高さをうかがわせる。
ハッキング事件が起きてしまうこと自体は残念だが、今回のKuCoinの対応は、今後同様の被害が生じた際のモデルケースになり得る。(提供:月刊暗号資産)