業務で有料道路を使う機会が多い会社の経営者なら、法人向けETCカードの導入を検討することをおすすめしたい。法人用のETCカードにはさまざまなメリットがあり、うまく活用すれば業務の効率化を図れる。

法人向けのクレジットカードを持っている場合は、それに付帯するETCカードを発行することで、さらに効率良くポイントを貯められるだろう。法人用のETCカードの種類やメリット、作成に関する情報などを解説する。

法人用ETCカードは主に3種類

ETCカード
(画像=PIXTA)

法人用ETCカードは、以下の3種類に大きく分けられる。まずは、それぞれの特徴を確認しておこう。

法人ETCカード

法人ETCカードは、高速道路協同組合やETC協同組合が発行する、法人向けのETCカードである。クレジット機能が付いていないため、最低限の審査でETCカードを発行してもらえる。「クレジットカードはいらない」という場合におすすめだ。

法人ETCカードを利用するには、各協同組合に入会しなければならない。原則として、出資金やカード発行手数料、年会費、利用料金に対する手数料などが発生する。利用車を限定しないため、ETC車載器が付いていればレンタカーなどでも利用できる。

休日割引や深夜割引など、利用する曜日や時間帯に合わせてお得な割引の仕組みが用意されている。通行料金の支払額に応じてポイントを獲得できる「ETCマイレージサービス」にも対応している。

ETCコーポレートカード

ETCコーポレートカードは、東日本・中日本・西日本高速道路株式会社(NEXCO)が、ETCシステム利用を前提とした大口・多頻度割引制度のために発行するカードである。運送業者など、業務で高速道路を頻繁に利用する法人に向くETCカードだ。法人ETCカードと同じく、クレジット機能は付いていない。

首都・阪神高速道路の利用時に、休日・平日朝夕・深夜割引などの時間帯割引によって30~50%の割引を受けられるほか、利用料金に応じてさらに最大20%の割引が適用される。

ただし、ETCマイレージサービスには登録できず、カードに登録された車でなければ利用できないといった制限がある。道路会社へ直接申し込むと、保証金を多めに支払わなければならない可能性があることにも注意したい。

法人向けクレジットカード付帯のETCカード

クレジットカード会社が発行する法人向けクレジットカードを持っていれば、多くの場合、そのカードに付帯する形でETCカードを発行できる。クレジットカード1枚につき1枚のみ発行できるタイプと、1枚のクレジットカードで複数枚のETCカードを発行できるタイプがある。

法人向けクレジットカードを発行する際に審査を受けているため、追加でETCカードを発行してもらう際の手続きを簡単に済ませられるのがメリットだ。ただし、クレジットカードを新規で発行する場合は、相応の審査を受けることになる。

原則として、ETC利用料金の請求はクレジットカードの利用料金と合算して一括で請求されるため、経費の管理を一元化できる。法人ETCカードやETCコーポレートカードと比べて、発行コストを抑えられるというメリットもある。

カード選びのポイント

法人用としてETCカードを選ぶ際は、上記の3種類の中からどのタイプにするか決めなければならない。すでに法人用のクレジットカードを保有しているなら、そのカードに紐付くETCカードの特徴を理解し、自社に向くかどうかを見極める必要がある。

カード会社によって特徴が異なる

クレジットカード付帯のETCカードは、カード会社によって特徴が大きく異なる。具体的には、発行費用・年会費・更新費などのコストやクレジットカード固有のポイント還元率、発行可能枚数、経理上の使いやすさなどをチェックするといいだろう。

クレジットカードを持っていない場合や、クレジット機能が必要ない場合は、道路会社や協同組合が発行する法人ETCカード、またはETCコーポレートカードの導入を検討しよう。それなりにコストはかかるものの、ETCマイレージサービスや、時間帯割引・利用料金に応じた割引などの恩恵が大きくなる可能性がある。

法人ETCカードとETCコーポレートカードのどちらを選ぶかは、事業規模や利用頻度、利用する高速道路の種類、利用する時間帯、利用する車両を限定するかどうかなどを考慮する必要があるだろう。

法人用ETCカードのメリット

ETCの誕生には、高速道路の料金所における渋滞緩和を大きな目的として制度化が進められたという背景がある。ETCには渋滞の緩和だけでなく、キャッシュレス化を促進したり、料金所付近での発進・停止が減ることによって排気ガスや騒音を減らしたりする効果もある。

ただし、これらのメリットは法人に限ったものではなく、車社会を中心とした社会全体に影響を及ぼすものだ。それでは、法人がETCカードを導入するメリットには、どのようなものがあるのだろうか。主なメリットと具体的な内容を解説する。

割引やポイント獲得による経費削減

法人用のETCカードを導入することで得られる主なメリットとして、経費削減が挙げられる。前述のとおり、ETCカードを導入することで、カードの種類によっては曜日・時間帯などに応じた割引や、ETCマイレージサービスで得られるポイントの恩恵を受けられる。

クレジットカード付帯のETCカードなら、クレジットカード固有のポイントとETCマイレージサービスのポイントを二重取りできる可能性もある。いずれにしても、有料道路の利用が多いほど、割引やポイントによって実質的な利用料金が安くなるため、結果的に経費削減につながる。

割引やポイントは法人に限ったメリットではないが、経費削減を課題とする法人にとっても、大きなメリットと言えるだろう。

利便性の向上や業務の簡略化

社員にETCカードを持たせることで、料金所をスムーズに通過できたり、出張先などでレンタカーを利用しやすくなったりするため、利便性が向上する。

また、交通費の立て替えが必要なくなることや、利用明細の管理が楽になることによって、経理業務の簡略化にもつながるだろう。さらに交通費の詳細を把握できるようになるため、不正防止にも役立つはずだ。

法人用ETCカードの作成について

法人ETCカードやETCコーポレートカードは、各種事業協同組合を経由して発行するのが一般的だ。ETCコーポレートカードはNEXCOに直接申し込むこともできるが、組合経由での申し込みに比べて、余計に保証金を積み立てる必要があるため、組合に申し込むことをおすすめする。

具体的なカードを作成方法

組合経由でカードを作成する場合は、各組合のホームページで簡単な手続きをするだけで申し込める。通常は、出資金・カード発行手数料・取扱手数料などが必要だ。出資金は、原則として脱退時に返金される。

クレジットカード付帯のETCカードは、クレジットカードをすでに持っている場合は、ETCカードを申し込むだけで発行してもらえる。特別な審査がないため、特別な事情がない限りスムーズに発行してもらえるだろう。

ETCカードと一緒にクレジットカードも作りたい場合は、カード会社の審査を通過しなければならない。希望のカード会社にアプローチし、発行に関する所定の手続きを行う必要がある。

ETCマイレージサービスの仕組み

ETC法人カードや、クレジットカード会社が発行するETCカードを利用する場合、ETCマイレージサービスに登録すれば、利用額に応じてポイントを獲得できる。よりお得に有料道路を利用するために、ETCマイレージサービスの仕組みを理解しておこう。

ETCマイレージサービスとは

ETCマイレージサービスは、ETCカードを利用して有料道路の料金所で通行料金を支払う際に、支払額に応じてマイレージポイントを獲得できるサービスである。NEXCO東日本・中日本・西日本、阪神高速道路株式会社および本州四国連絡高速道路株式会社が共同で運営しており、他にも多くの地方道路公社が参加している。このサービスの登録料・年会費は、ともに無料だ。

獲得したポイントは、道路事業者ごとに定められた交換単位に応じて無料走行分に交換し、通行料金決済時に利用できる。無料走行分は「還元額」と呼ばれ、有効期限は定められていない。複数のETCカード間でポイントや還元額を合算することはできず、還元額の換金もできないことになっている。

ポイント還元について

ETCマイレージサービスで獲得したポイントの還元率は、道路事業者によって異なる。ポイントは事業者ごとに貯まるが、事業者間でポイントを合算できない場合がある。平日朝夕割引サービスの還元率は、対象の時間帯に走行した月々の回数に応じて都度決定される。したがって、当月の走行回数が確定した段階で還元率が決定することになる。

還元額と違い、ポイントには有効期限があるため、所定のポイントが貯まったタイミングで自動的に還元額に変換される「自動還元サービス」の利用をおすすめしたい。自分で手続きを行う手間が省ける上に、ポイントの失効リスクを回避できるからだ。

法人用ETCカードを活用して経費を削減しよう

法人向けのETCカードには、法人ETCカード・ETCコーポレートカード・クレジットカードに付帯するETCカードの3種類がある。それぞれに特徴や魅力があるため、自社に合ったカードを選ぶことが大切だ。

ETCカードを導入することで、割引やポイント獲得による経費削減や、経理業務の簡略化などが期待できる。特に配送業者のような有料道路の利用が多い業種では、より大きなメリットを得られるだろう。(提供:THE OWNER

文・八木真琴(ダリコーポレーション ライター)