2020年4~6月のGDPの落ち込みが27.8%と戦後最悪だったことからもわかるように、コロナ禍においてわれわれを取り巻く現実は深刻だ。とりわけ大打撃を被った象徴的な業態が飲食業だが、Go toキャンペーンなどの行政主導の施策に頼らずとも“逆転の発想”でピンチをチャンスに変えようと大胆な試みに打って出た事業モデルがある。特集「コロナ禍で成功するベンチャー企業研究」の第2回は、移動式キッチンカーでこだわり抜いた一品を供す「TonkatsuARI」をご紹介する。

(文・フリーライター 根本直樹)

コロナ禍における集客のためのアイデア

新型コロナ,経営者
(画像=hirotake / pixta, ZUU online)

「コロナで客足がぱったりと途絶え、廃業に追い込まれる同業者をたくさん見てきました。テイクアウトやウーバーイーツの活用でなんとか延命を図ろうとしても、採算ラインには全然届かない。ビジネスモデルを抜本的に変えなくてはいけないと感じた結果、お客様を“待つ”のではなくこちらから“行く”スタイルで勝負してみようと思った。店舗を持たず、調理機能を備えた専用車で移動して、出先であげたてのとんかつを提供することにしたんです」

そう語るのは、移動式キッチンカーでこだわり抜いた「とんかつ」を提供しているシェフの三本秀之氏。ミシュランビブグルマンの常連店で修行を積んだ「とんかつ」のスペシャリストだ。

三本氏がプロジェクトを始動し始めたのは、新型コロナウイルスが猛威をふるい始めた今年1月。以来、急ピッチで準備を進め、今夏のプレオープンにこぎつけた。

サービス開始からまだ2ヵ月も経っていないが、結論から言えば三本氏の目論見は的中した。東京23区を中心に、予約制で顧客を募る「TonkatsuARI」は口コミで広がり、コロナ禍においても売り上げは右肩上がりで上昇。多い日は1日15万円ほどを記録したという。

予想以上の初動のよさに、三本氏が胸を張る。