中国の中央銀行「中国人民銀行」が、深セン市と協力して合計1,000万元(約1億5,700万円)分のデジタル人民元(DCEP)を配布した実証実験で、実際に95%の当選者がデジタル人民元を使ったことが明らかになった。19日、深セン市がプレスリリースで発表した。
この実証実験は、深セン市の住民に向け参加者を募集し、スマートフォンアプリのデジタルウォレットに、抽選で5万人に1人あたり200元(約3,000円)分のデジタル人民元が配られた。
実証実験に使われたデジタル人民元は10月12日から18日の1週間で、深セン市羅湖区の高級品の店から軽食レストラン、スーパーマーケットなど3,000以上の商店で当選者の95%の市民が使用した。
デジタル人民元の当選者は、合計で6万2,788回の取引を行い880万元(約1億4,000万円)を使ったという。
ロイターの20日の報道によると、中国の専門家は中国人民銀行が発行する世界初の中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)実用化へ向けた一歩として、実験を評価した。
香港の暗号資産(仮想通貨)取引所HKbitEXの共同創設者であるWang Shibin氏は、「デジタル人民元が理論的な内部実験から実用化へ向けて動いたことを意味する」と今回の実験を評価した。
中国ではすでにキャッシュレス・モバイル決済が普及しているが、現時点ではアリババグループ系の「Alipay」やテンセント・ホールディングスの「WeChat Pay」が有名だ。こうした中でデジタル人民元の登場は経済により広範な影響をもたらすことになる。
また、中国人民銀行副総裁であるFan Yi Fei氏が、2022年に中国で行われる予定の北京オリンピックで、デジタル人民元を発行する予定との見込みを示している。しかし今回の実証実験が順調に進んだことで、北京オリンピックより発行が早まる可能性もあると一部メディアは報道した。
中国は習近平主席の元、ブロックチェーン技術の開発・推進を表明している。14日、深セン市の式典で習主席は「未来の産業を育成し、デジタル産業を発展させる」と述べ、デジタル人民元の振興に意欲を見せた。
こうした中で、「デジタル人民元の開発も加速度的に進んでいるのではないか?」と複数のメディアが度々報じている。
一方で、デジタル人民元は利用する個人や企業の取引データが中国当局に筒抜けになる可能性があり、データの管理や利用がどうなるのか見えない面も日米欧らから指摘されている。
今回の深センでの実証実験は、こうした各国の懸念を踏まえ、「運用実態は透明だと訴える狙いもあるのでは?」と見る専門家もいる。(提供:月刊暗号資産)