家具や生活用品で有名なニトリホールディングスに関する、電撃的なニュースが飛び込んできた。これまでは自社の成長を中心に発展してきた同社が、TOB(株式公開買い付け)を発表したのだ。そして、その相手は、なんとホームセンターの大手企業・島忠である。しかも相手は他社とのTOB交渉の真っ最中なのだ。今回は、この話題ついて最新情報も交えて深く掘り下げてみたい。

DCMによるTOBへの挑戦状

ニトリホールディングス,株価
(画像=PIXTA)

家具大手のニトリホールディングスが、大手ホームセンター企業・島忠に対し、TOB(株式公開買い付け)による買収を検討していることが明らかになった。これまで島忠をめぐっては、同じくホームセンターの大手企業であるDCMホールディングスが完全子会社化に向けたTOBを実施している真っ最中。ニトリは二社間に割って入った形になる。これは極めて異例の展開だ。ニトリは何を狙って、今回のような奇策に打って出ているのだろうか。

記事執筆時点の10月22日現在、ニトリは「当社が発表したものではない」としながらも、「島忠を含め、M&Aを通じた成長の可能性を日々検討している」と含みを持たせたコメントを発表した。「日々、検討している」と言いながら、これまでニトリはM&Aを実施しておらず、自前による企業拡大を続けてきた。

ニトリにとって島忠が魅力的な理由

ニトリは商品の企画から生産、販売に至るまで自社で手掛けるSPA(製造小売り)モデルを武器に、2020年9月29日現在、国内555店舗、海外68店舗を展開。コロナ禍でも、手頃な価格で巣ごもり消費や在宅勤務需要をつかみ、2020年3〜8月期は営業益で最高益を記録した。

しかし、ここのところ積極出店にも限界が見え始めている。特に大都市圏では出店余地が乏しくなってきており、2015年に当時のプランタン銀座へ小型店舗を出店したのを皮切りに、新宿タカシマヤタイムズスクエア店、心斎橋アメリカ村店、上野マルイ店など、それまでの大型店とは違った都市型店舗への出店に注力していた。

大型店舗と違って、そうした都市型店舗では売れる商品も違う。「家具など大きな商品は売れず、持って帰られる小さな商品や雑貨が中心」(ニトリ幹部)。しかし、ニトリの主力商品はあくまでも家具が中心。実はそうした商品群には弱い。そこで、ホームセンターとしてさまざまな商品を扱い、家具から出発していて親和性も高い島忠に狙いを定めたと見られる。

「島忠の不動産にはそんなに興味はない」とニトリ関係者は言うが、東京や埼玉県など首都圏を中心に展開している約60店を手中に収められることも魅力のひとつ。しかも、島忠の純資産は約1815億円で、DCMによる買収額1600億円を上回っており、「横入りしても十分お買い得」(同)に映っていると解説する関係者も少なくない。

ニトリとDCMではどちらが有利?

だが、“横入りTOB”というニトリの異例の戦略に勝ち目があるのか。