(本記事は、2020年ノーベル平和賞を受賞した国連世界食糧計画(WFP)の職員である佐藤しもん氏の著書『寄付金、クラウドファンディングの集め方』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)

大口寄付

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(画像=szefei/Shutterstock.com)

1ヵ月に一度のペースで、個人から1億円の寄付が入る団体が日本にある。

1年にすると、10人以上がその団体に1億円を寄付していることになる。ご厚意による1億円の寄付が、毎月のように入ってくる、こんな素晴らしい事は、民間企業ではありえないが、チャリティー団体であれば、ありえる話なのだ。ただし、良い活動をしてるだけでこのような大口寄付をいただけるかというと、そんなに簡単なものではない。

年間の寄付額が一定額以上の個人寄付者を、大口寄付者と呼んでいる。この一定額は、団体によって定義が様々だが大口は100万円以上としている団体が多い。

年間100万円以上寄付をしてくれる方を、大口寄付者と定義すると、この大口寄付者から、より多くの支援をいただくことや、新しい大口寄付者を増やすことが、非常に重要になってくる。繰り返しになるが、寄付集めの原理原則は、お金があるところから集めるのだ。

最初から大口の寄付をいただくこともあるが、最初は単発の寄付者だった方が、時間をかけて丁寧にドナージャーニーを行った結果、定期的に寄付をくれるようになり、最終的に大口の寄付をもらえた、というケースのほうが一般的である。

寄付者を階層に分け、ピラミッドの形で考えると分かりやすい。下から上に押し上げていく感覚だ。

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(画像=『寄付金、クラウドファンディングの集め方』より)

大口をいただいた際に

大口寄付をいただいた際の手順を記す。

お礼の電話、訪問、感謝状などの贈呈、お手紙と重ねてのお礼が大まかな流れだ。

高額の寄付をいただいた際、まずは、その団体の代表や役職者が、すぐに電話でお礼を伝えることが大切だ。これはできる限り、いただいたその日に連絡すると良い。電話では感謝を伝えるだけでなく、ぜひ直接お会いしてお礼をしたいと、次のアポイントを取ることが大切である。

そうすると、大抵の場合は、「そこまでしなくて結構、お気持ちだけうけとる」といった謙虚な返答をいただくが、重要なのは、「お伺いしてお礼をしたいほど、あなたの行為に感謝しています」というような、心からの誠意を示すことである。

運よくお伺いすることが許された場合、担当者1人でお伺いするか、代表と担当者の2人でお伺いする。2人でお伺いする際は、男性2人だとプレッシャーを与えてしまう可能性もあるので、できれば、男女ペアでの訪問が望ましい。訪問時は、大口寄付者だけに贈られる感謝状や盾など、プレミア感がつくようなものを持参する。

たとえ、大口支援者の方が北海道の田舎町に住んでいたとしても、訪問が許されるならば、訪問をして顔が見える関係づくりを行ったほうが良い。北海道までの往復交通費や宿泊費などの支出は、すぐにリカバーできるほど、将来の寄付が見込めるからだ。

訪問すれば、少なくとも30分ぐらいは、大口寄付者の目の前で会話が許されるのだから、その際に、何に興味関心があるのか、なぜ自団体を選んだのかなど、会話から読み取っておけば、将来、その方が興味を示す企画やDMを打ちやすくなる。

◎手紙は直筆で

訪問が叶わなかったとしても、お礼の手紙や感謝状を出すことを忘れてはいけない。そして手紙は、直筆をお勧めする。職員全員の直筆での一言コメントを寄せ書きにして贈ることは、心がこもっており、大いに喜ばれる。職員が多い団体で全員の直筆が難しい場合は、代表者のみの直筆の手紙でも良い。

○○様のおかげで、このような活動ができたなど、その方の名前をできる限りリピートして書く。直筆にこだわるのは、直筆の手紙をもらったら、人の手を通じた想いが伝わることと、なかなか捨てられないからだ。

◎定期的なコンタクトを

大口寄付者には、定期的なコンタクトを取り続けること。季節毎に活動を知らせるお手紙、ニュースレターを送る際に、一言直筆のメッセージを添えて送る、年に一度は、電話かけを行い感謝を伝えること。

また、その際には、必ず訪問の機会をお伺いし、訪問してお礼を伝えるチャンスを粘り強く待つ。顔が見える関係を構築できるか否かで、将来的な支援が大きく変わる。手紙、メール、電話、訪問、などを駆使して、年に3~4回はコンタクトを取って関係構築をしていきたい。

寄付金、クラウドファンディングの集め方
佐藤しもん(さとう・しもん)
国際連合世界食糧計画WFP協会マネジャーNPO法人全日本育児普及協会代表理事、会長世界最大の人道支援団体でマネージャーとして勤務するかたわら、子育て支援のNPOを創設する。ファンドレイザーとして、国内では数少ない、10億円の寄付金を集めた実績を持つ。海外のイベントや、内閣府、教育委員会からも依頼を受け、講師として登壇多数。二児の父。

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