(本記事は、2020年ノーベル平和賞を受賞した国連世界食糧計画(WFP)の職員である佐藤しもん氏の著書『寄付金、クラウドファンディングの集め方』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)

お金はあるところからいただく

クラウドファンディング
(画像=Miriam Doerr Martin Frommherz/Shutterstock.com)

これは資金調達の原理原則である。

無い袖は振れないとは言い得て妙でありお金が無いところからはいただくことはできないし、お金があるところからいただくほうがよほど成果はあがる。

明日の食事に困っているほど貧しい方からお金をいただくことはできない一方、富豪から大金をドカンといただけば、1回で大きなお金を集めることができる。当たり前のことを言っているようだが、いつでも、高額をいただく可能性があることを忘れず、できる限りリソースをかけ高額寄付をいただくことだ。

ただし、「お金はあるところからいただく」という原理原則は集める金額の最大化を目標とした場合に、より多くの仲間や支援者を得たい場合にはこの原則は適用されない。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングは、不特定多数の人から資金を集める行為を指す。

英語で記すとCrowdfundingであり群衆(Crowd)と資金調達(Funding)を合わせた造語だと知ればクラウドファンディングの意味するところがより明確になる。注意すべきはインターネットでのクラウドサービスを表す雲(Cloud)ではなく群衆のCrowdというところだ。

クラウドファンディングと言えばインターネットを通じて資金調達することだと認識する方が多いが、広義に解釈するとインターネットに限らず、様々な媒体を通じて一般の人から広く資金を募ることがある。

本書では世間一般に知られているクラウドファンディング、所謂、インターネットを通じての資金調達方法のみならずインターネットを使ったクラウドファンディングに助成金を加えた方法、電話を使う方法、街頭で募る方法、企業からスポンサーを得る方法など多様な資金調達の方法を解説していく。

自由の女神はクラウドファンディングで建てられた

クラウドファンディングの歴史は、1700年代に遡る。

今から300年も前に行われたクラウドファンディングの原型となるものは、広く一般の方々に印刷費用にかかる経費を支援してほしいと寄付を募り、そのリターン(見返り)として書籍に名前を掲載できる、という原始的なものであった。

それから100年ほど時が経った1800年代後半のこと、アメリカの独立100周年を記念しフランスからアメリカに両国間の友好の証として、自由の女神像が贈られることになった。

しかし、建設の途中で建設費用が足りなくなり、この歴史的な贈呈がとん挫しかけた際ある新聞社が奇策として紙面を使って建設のための寄付を呼びかけた。すると、10万人を超える人からの寄付が集まり自由の女神像は無事に建設された。世界遺産として今もアメリカを象徴する自由の女神像は、クラウドファンディングの力を借りて建築されたのだ。

市場規模は右肩上がり

国内におけるクラウドファンディングの市場は大きく5つの型(寄付型、購入型、融資型、ファンド型、株式型)に分けられ、どの型も年々右肩上がりに市場が伸び、今後もさらに伸びると予想されている。

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(画像=『寄付金、クラウドファンディングの集め方』より)

本書では、投資や融資を目的にしておらず多くの読者にお馴染みのクラウドファンディングである寄付型と購入型に着目し、この2つの型を合わせた市場規模の推移グラフを掲載しておく。グラフが示すように、この2つの型で年間130億円ほどの市場が見込める。

1人で行える資金調達

個人が大きなリソースをかけずに手っ取り早くその場でお金を集める方法として、もっとも効果的なものがクラウドファンディングだろう。

極端なことを言えばズブの素人でも、一人で、自宅で、全ての作業を行う事ができお金を集めることが可能だ。

活動する仲間がいなくても、外に出て寄付を呼び掛けなくても、自宅の中でスマホのアプリやクラウドファンディングのサイト上でお金を集めることができる。ネットでクラウドファンディングと検索すればいくつかのサイトを容易に見つけることができる。

「音楽フェスに参加したいので大阪までの新幹線運賃をおごってください!」
「受験に失敗し浪人確定なのでおめぐみを!」

このような支援してくれる人が本当にいるのか?と失礼ながらに思ってしまうような内容でも、実際に数万円のお金が集まってしまうから驚きだ。ほんの数日間のうちにである。もし、その訴求する内容が画期的で人々の共感を得るものならば、ひとつのプロジェクトで1,000万を超える額を集めることも夢ではない。

クラウドファンディングのコツ

クラウドファンディングにおいてもお金が集まりやすいやり方がいくつかある。

数万円という比較的少額の寄付であれば先の事例であげたような「私、今とても困っています」というようなダイレクトにお金が必要だということをアピールし、人の感情に訴えることができれば目標額を達成できる可能性は高い。素直な気持ちを率直に訴えることで人々の共感を得ることができ支援に繋がるのだ。

ここで覚えておきたいポイントは、期限付きにするとお金が集まりやすいということ。いついつまでにお金が必要、と具体的な期限を伝えることで支援を検討している人の心情に「今すぐこの人を支援しなくては」という強い気持ちを起こさせる。

もうひとつのポイントは、とにかく様々な手段で告知を複数回行うことである。同じ告知を複数回行うことの意味は後ほど詳しく記すが、人は情報を知って初めて支援を検討するので、多くの人に何度も告知することはより多くの支援をいただく上で必須である。

クラウドファンディングでの少額の支援に関しては、支援されやすい例として若者の学びに関するものが挙げられる。留学資金や研究開発費を集めた若者は非常に多く、人目を惹くインパクトのあるものやユニークな内容のものは支援されやすい傾向にある。

例えば「余命あとわずかのおばあちゃんに人生最後のプレゼントをしたい」とか「ニート同士のオフ会を開きたい」などである。アイデア勝負なところもあるが、たった一人で活動するにもかかわらず短期間でそれなりの額が集められるところがオンラインでのクラウドファンディングの魅力だろう。

クラウドファンディング未経験の方は、少額でも構わないので自分自身でオンラインのクラウドファンディングから挑戦してみてほしい。経験することで多くの学びが得られるはずだ。

集めたい目標額が10万円を超えてくると、先に挙げた少額を集める手法には少しやり方が変わってくる。ある程度高額のお金をクラウドファンディングで集める場合のコツは、集める金額の半分以上は身内で固めることだ。ここでいう身内というのは自分の家族だけではなく、自分と一緒にプロジェクトを立ち上げた仲間やその支援者、関係者を指す。

逆を言えば、身内以外の新規の方や見ず知らずの方がネットなどを通じて初めてそのプロジェクトを知って共感し寄付をするということは、全体の半分以下と考えた方がよい。つまり、仲間や所属する団体の会員や関係者などが多いほうがクラウドファンディングにおいては有利であり資金は集まりやすい。

寄付金、クラウドファンディングの集め方
佐藤しもん(さとう・しもん)
国際連合世界食糧計画WFP協会マネジャーNPO法人全日本育児普及協会代表理事、会長世界最大の人道支援団体でマネージャーとして勤務するかたわら、子育て支援のNPOを創設する。ファンドレイザーとして、国内では数少ない、10億円の寄付金を集めた実績を持つ。海外のイベントや、内閣府、教育委員会からも依頼を受け、講師として登壇多数。二児の父。

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