(本記事は、2020年ノーベル平和賞を受賞した国連世界食糧計画(WFP)の職員である佐藤しもん氏の著書『寄付金、クラウドファンディングの集め方』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)

トレンドはSDGs

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(画像=ADragan/Shutterstock.com)

SDGsとは、国連が定めた国際目標であり、サステイナブル・ディベロップメント・ゴールズの略だ。日本においては、政府や企業における昨今のトレンドでもあり、企業の役員クラスの方々や、政治家の方々が、SDGsを表すカラフルなバッチをスーツにつけて私はSGDsを推進しますと、誇らしげにアピールしているのを見る機会が多くなった。

2017年に経団連が、スローガンに掲げ、SGDsを基に、経団連が提唱する企業行動勲章を抜本的に改定したことが日本の大企業を動かし、今では、SDGsを知らない経営者など、非常識と言われかねない勢いである。

寄付を集める側はこのトレンドに乗らない手など、あろうはずもなく、このSGDsに結びつけた企画にすることで、企業から関心を引き出し、寄付を募るのだ。

CRM

コーズリレイティッドマーケティング(CRM)は、企業が社会貢献に結びつく商品やサービスを提供する手法で企業にとって売上や自社のブランディングの向上といったメリットがある。

CRMで有名なものだと、1960年代から続くベルマーク運動がある。

ベルマークがついている商品を買い、そのマークを切って送ると社会貢献活動への寄付となる運動だ。

チャリティー団体は、自団体のロゴやマークを商品につけてもらい、その商品が1つ売れたら数パーセントを寄付としていただく、という仕組みを作ればCRMで寄付をいただくことが可能である。

また、商品にチャリティー団体のロゴと売り上げの数パーセントが社会貢献活動に使われるという文言が入ることで、企業は自社のCSRを見事に可視化できる。

一方、消費者は、商品を買う事で社会問題の解決に貢献することができ、ハッピーな気持ちにもなれる。

このように、団体も企業も消費者も、ウィン・ウィン・ウィンになる関係、近江商人の「三方よし」の関係を作ることができればCRMでの寄付集めは成功できる。

CRMは、団体の知名度やブランド力に左右されるところが大きい。

団体に一定の知名度や信用度がなければ、企業側は自社商品に団体のロゴをつけることを承諾してくれないだろう。しかし、あきらめることなかれ。ロゴがなくてもCRMは可能である。

自団体の活動と親和性のある商品であれば企業が行う商品企画の段階から、団体側の代表などがアドバイザーとして入らせてもらい、アイデア出しや試作品のモニタリングを行う。そして、商品が完成したら「チャリティー団体推薦、売り上げの1部が寄付に」という文言を企業側に使ってもらうことで、ウィンウィンの関係を築くことだってできるのだ。

例えば団体が赤ちゃんの健康支援をしているチャリティー団体なら、哺乳瓶の製造や子育てグッズを販売している企業と組むのが良いだろう。ここでも、自団体の強みを生かし、企業の利益を考え営業することがポイントとなる。

最後に、CRMにおいて言えることは、一度CRMとして支援いただけたら長期支援が見込めるということである。これには理由があり、商品を製造するメーカーは、パッケージを変更するとなると型を変える手間が相当かかるため、一度大きくパッケージを変更したら、モデルチェンジせずに同様のパッケージを数年は使うものである。

少しずるい方法かもしれないが、CRMを導入してくれる企業には初年度のみ格安で利用してもらい、2年目以降使用料を上げていく、という戦略も一手あるのだ。

企業からは寄付以外もいただける

今すぐ寄付はできないが、寄付以外の支援なら喜んで、と言ってくれる企業も多くある。寄付以外の支援の例をいくつか挙げておく。

・社員にチラシを配布してくれる
・会議室やイベント場所を貸してくれる
・社員に向けてボランティアを募ってくれる
・社員がプロボノとして参画してくれる
・社内食堂や各支店に募金箱を置いてくれる

ここに挙げたものは、どれも無償である。場合によっては、直接寄付をいただくより大きな支援に繋がるものもある。

ある大手のコンビニエンスストアは、各店舗に募金箱を置いている。1年間でどのくらいの募金が集まるか、想像してみてほしい。

実に、年間3億円ほどである。

店舗数が1万6千店舗あって、コンビニのようにレジ通過が多ければ、年間で3億円もの募金が集まるのだ。ここまで読んで、「1店舗につき募金箱から年間2万円ぐらいの寄付が集まる」と考える方は、ファンドレイザーに向いているだろう。

講演会やセミナーでの登壇

その業界で知名度が高く人気もある方であれば、講演会に登壇し、謝金をいただく形でお金を集めることができる。官公庁や学校など、非営利な組織からの依頼であれば、いただける謝金は1回1時間程度の講演で数万円と少額であるが、企業や民間組織からの依頼であれば、1回の講演で100万円を超える場合もある。

しかし芸能人やタレントでない限り、これだけ高額の謝金をもらえる方は、日本でも数名しかいないので、その他大勢の方は数万円の謝金で、講演会を受けているのが現状である。

それ故、リソースがかかる割に、入ってくるお金の面では厳しく講演会のみでファンドレイジングに繋げるのは厳しいが、「共感と仲間を得る」というファンドレイジングのもう1つの側面には合致しているし、一定の広報効果も期待できる。

また、やり方を工夫すれば、謝金にプラスして寄付をいただくことも可能であり、ある団体では、講演会をした直後、参加者に定期寄付の申込書を配布し、何人かのスタッフを配置し、その場で定期寄付者への登録を促すことで、1回の講演で10名ほどの定期寄付者を得ている。

定期寄付者は1人でも登録してもらえれば、LTVの価値で計算すると、数万円以上に値するので、講演会の謝金にプレスして、数十万円ほど将来的な寄付を得ているのだ。

最後に「あなたも登壇できる可能性がある」ということを書いておきたい。

登壇する上で特別な資格や学歴はいらず、自分の経験を話すだけでも登壇して謝金をもらえることもある。

例えば、NPOの代表ならば、NPOを立ち上げた経験、苦労、成功体験、成果や課題などを話すことができるはずだ。

それほど特別な経験がなくても、ヨガ入門、上手なイラレの使い方、SEが教えるPC入門、スマホでうまく撮れる写真講座など、自分の趣味やポジションを活かした登壇も可能なので自分の売りを探して登壇してみてほしい。

寄付金、クラウドファンディングの集め方
佐藤しもん(さとう・しもん)
国際連合世界食糧計画WFP協会マネジャーNPO法人全日本育児普及協会代表理事、会長世界最大の人道支援団体でマネージャーとして勤務するかたわら、子育て支援のNPOを創設する。ファンドレイザーとして、国内では数少ない、10億円の寄付金を集めた実績を持つ。海外のイベントや、内閣府、教育委員会からも依頼を受け、講師として登壇多数。二児の父。

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