新型コロナウイルスによる経済の悪影響が心配されている。それでも、日米の株式市場は底堅く推移しているが、実は富裕層のほとんどが今後12カ月の投資マインドについて慎重になっているという。そして、潤沢なキャッシュポジションを抱えた富裕層投資家たちが、これまでの運用方針の転換を考えている。
2020年の大幅マイナス成長は必至で、目先には超悲観的
6月にIMF(国際通貨基金)が発表した2020年の世界経済の成長見通しはマイナス4.9%で、4月時点の予想値を1.9%も下方修正している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)が想像以上に悪影響を及ぼしており、「回復は従来の予想よりも緩やかになる」との見解を示しているのだ。
2021年には世界経済が5.4%の成長を遂げるとIMFと予想しているが、依然として世界的に感染者の数は増加傾向にあり、こちらも下方修正される可能性があるだろう。こうした情勢を踏まえて、米国の富裕層はリスクオフのスタンスに傾いている様子だ。
シティグループのプライベートバンク部門が9月に公表した調査結果(6〜7月に実施)によれば、回答した富裕層の約4分の3が今後12カ月間の投資マインドについて「慎重」とのスタンスを示しているという。しかも、「極度に慎重」との返答も含めると、全体の84%がリスクオフのモードになっていると言える。
そして、約半数の富裕層が「今後1年間におけるポートフォリオのトータルリターンは1〜5%にとどまるだろう」との見解を示しているという。こうした富裕層のスタンスに対し、シティグループのプライベートバンク部門は保守的すぎると受け止めているようだ。
6月に発表した「2020年中間見通し」でも顧客の一部がポートフォリオにおける現金の比率を35%にまで拡大させていたことが明るみになった。この状況について、プライベートバンク部門のCIO(最高投資責任者)を務めるデービッド・ベイリン氏は、「あまりにも多額の現金を保有しており、ポートフォリオの大幅な変更が必要」と指摘している。
確かに、キャッシュポジションへの緊急避難状態を続けている富裕層は、増やすチャンスを放棄してしまったとも受け止められる。2〜3月に暴落した世界の株式市場は、主要国の大胆な金融・財政政策を好感して反発に転じており、いち早くリスクオンのモードに切り替えた投資家はその恩恵を受けている。
ジャンク債へのハイレバレッジ投資で辛酸をなめたアジアの富裕層
ただし、一極集中の投資は今までにも増して危ういと言えそうだ。現実に、アジアの富裕層には、偏向的な投資行動で窮地に陥っている人が少なくないという。