現役をリタイアした後、「老後は豊かなセカンドライフを送りたい」と感じている人は多いのではないでしょうか。しかし現実は理想とほど遠い状態にある高齢者も少なくありません。「老後破産」「下流老人」といった言葉もそういった不安を増大させます。老後に厳しい生活になることは何としても避けたいと思うものの、聞こえてくるのは公的年金の支給年齢引き上げや減額など不安を感じるものばかりです。

消費税の増税による景気の冷え込みが指摘される中、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大による経済へのダメージがありました。もはや豊かなセカンドライフを夢見ることは非現実的なことなのかと絶望的になってしまっている人もいるかもしれません。このままでは豊かなセカンドライフどころか老後破産になってしまいかねないことから、貯蓄や資産運用などを検討している人もいるでしょう。

そこで本記事では、老後資金をしっかりと確保して豊かなセカンドライフを送るために有効な「本業以外の投資」にスポットを当て、今からでも十分間に合う具体的な運用術も交えて解説します。

「老後資金が2,000万円不足する」説の衝撃と現実味

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(画像=adrian-ilie825/stock.adobe.com)

2019年に金融庁の諮問機関が作成した報告書にあった「老後資金が2,000万円不足する」という説は、衝撃が広がったのと同時にどこか違和感なく受け止められた節がありました。それはおそらく多くの人たちの脳裏には同じ懸念があったからでしょう。公的年金や退職金に対する不透明感がある以上「このままだと老後資金は足りなくなる」と考えるのが社会的な共通認識と言えます。

すべての人に当てはまることではありませんが、この報告書に言われるまでもなく「何もしなければ老後資金が不足する人が大多数」と考えるのが無難です。老後の厳しい現実を受けて現役世代の人たちはどのように対応していくべきなのでしょうか。

公的年金に「自分年金」をどれだけ上乗せできるかで老後の質が決まる

豊かさを実感できるようなセカンドライフに必要なのは、老後の生活で自由に使えるお金です。公的年金だけで豊かな生活を達成できないと感じている人は多いのではないでしょうか。しかし漠然と不安だけを大きくしてしまうことはおすすめできません。老後資金を考えるうえでは、まず「公的年金がいくらもらえるのか」についてしっかりと押さえておきましょう。

自営業やフリーランスなどが加入する国民年金は、加入全期間の480ヵ月(40年)納付をした場合、満額で年額78万1,700円(2020年4月時点)となります。月額に換算すると約6万5,141円です(ただし実際年金は2ヵ月ごとに給付されます)。サラリーマンなど給与所得者が加入する厚生年金の場合は、平均値が月額14万円台で推移しています。

年金の1階部分だけである国民年金しかない場合はもちろん、2階部分もある厚生年金の受給者であっても老後に豊かさを感じられる受給額とは言えません。そこで重要になるのが公的年金に「自分年金」をどれだけ上乗せできるかです。

「自分年金」という言葉は造語で、老後に受け取れる不労所得を意味します。例えば国民年金のみで毎月6万円少々しか公的年金がない人であっても、自分年金がその数倍あれば豊かなセカンドライフを実感できるでしょう。そのため今後は公的年金だけに依存せず、「自分の老後資金は自分で作る」という認識が求められます。

「年利5%」で20年の長期投資ができると老後が変わる

現在40歳で60歳に向けて20年間の長期投資を年利5%で行ったケースをシミュレーションしてみましょう。今すぐまとまった資金がなくても取り組めるように貯金ゼロから毎月5万円ずつ積立投資をするものとします。金融庁のシミュレーターを使って試算したところ以下の結果となりました。

出典:金融庁「資産運用シミュレーション」.jpg
出典:金融庁「資産運用シミュレーション

運用が順調に進捗すれば20年目には約2,055万円となり、問題の2,000万円を見事に達成しています。投資元本は5万円を240ヵ月にわたって積み立てているため1,200万円です。しかし元本に855万円もの運用益が上乗せされていることが見て取れます。60歳の時点で本業をリタイアし積み立てを終了したとしても2,000万円の投資元本に対して5%の運用益が入り続けることにより自分年金になります。

2,000万円に対して毎年5%の運用益が入ると仮定すると年間約100万円、月換算で約8万3,000円の不労所得の発生が期待できるでしょう(税金は考慮せず)。そのためこれを公的年金に上乗せすることにより豊かなセカンドライフが現実味を帯びてきます。注目したいポイントは、20年後に半分近くの資産が元本ではなく運用益によって占められている点です。

しかもグラフを見ると、時間の経過とともに加速度的に黄色部分の運用益が大きくなっていることが分かります。これは「複利効果」と呼ばれるもので運用益も投資元本の一部として再投資をすることで加速度的に資産を増やすことが期待できるのです。このように時間を味方につけられるのは、長期投資が持つ最大のメリットと言えるでしょう。

今はまとまったお金がなくても老後まで時間がある人は、長期投資をすることによって時間を財産にすることができるわけです。

豊かなセカンドライフを実現する具体的な方法3選

時間を味方につけることの意義は理解できても「年利5%という高い利回りで資産運用はできるのか」と実現性に疑問を感じた人もいるのではないでしょうか。年利5%という前提には、もちろん実現性があります。ここでは3つの具体的な投資方法を紹介します。

・J-REIT積み立て
・米国株ETF積み立て
・不動産投資

1.J-REIT積み立て

J-REITとは、不動産で運用している投資信託の中で東証に上場されている銘柄群のことです。2020年10月14日時点のJ-REIT全体の分配金利回り平均は4.13%となっており、銘柄別に見ると22銘柄が5%を超えています。こうした高利回りの銘柄を選んで一定額を積み立てるのも良いですし、リスク分散を図るためにJ-REIT全体の値動きを示す東証REIT指数と連動するETFを積立購入するのも有効です。

以下の3つのETFはそれぞれに東証REIT指数と連動しており、年4回の分配金支払いがあります。しかしそれぞれに分配金の支払い月が異なるため、3つのETFをすべて保有していると分配金を毎月受け取る仕組みを構築することが可能です。

証券コード銘柄名称分配金利回り(2020年10月14日時点)
2556One ETF 東証REIT指数3.41%
1343NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信3.83%
1488ダイワ上場投信―東証REIT指数4.04%

2020年10月14日時点の分配金利回りは3.41~4.04%と5%には届いていませんが、一方でリスク分散が図られているため、この方法も長期投資向きです。

2.米国株ETF積み立て

世界一の経済大国でありコロナ禍によるダメージはあっても依然として成長力を維持している米国には、株主に対する配当性向が強い経済風土もあるため、配当の高い株式銘柄が多数あります。これらの米国個別株を積立投資するのも良いですが、個別株は株価の騰落が運用実績に大きく影響するため、こちらもリスク分散を図る意味から複数の高配当株で運用しているETFが長期投資向きです。

知名度が高く、経費率(日本でいう信託報酬)が極めて低い代表的な銘柄としては、以下の3つがあります。

銘柄名利回り
(2020年10月15日時点)
経費率
(2020年10月15日時点)
VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)3.37%0.06%
HDV(iShares Core High Dividend ETF)4.15%0.08%
SPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)3.68%0.07%

米国株を取り扱っている証券会社の口座であればこれらのETFは手軽に売買ができるため、毎月一定額を積み立てるなどの長期投資で自分年金づくりができます。

3.不動産投資

アパートやマンションなどのオーナーになり、家賃収入や物件の売却益などを狙うのが不動産投資です。他人資本である銀行の融資を活用した投資ができるため、「自己資金ベースだと高い利回りが実現する」「老後に向けて不動産による資産形成ができる」など多くのメリットがあります。数ある不動産投資の中でも初心者向きと言えるのは、低予算かつ低リスクで取り組める区分マンション投資でしょう。

ワンルームマンションなどを1戸単位で所有しそこからの家賃収入を安定的な副収入とするビジネスモデルです。家賃収入は、物件オーナーの状況にかかわらず入り続けるため、老後の自分年金だけでなく現役世代のうちであっても突然の病気やケガなどで働けなくなった場合のリスクヘッジにもなります。

老後資金は不動産投資などを活用して早めに対策しておこう

老後に豊かなセカンドライフを送るためには、若いうちから資産運用に目を向けることが大切です。さまざまな投資方法がありますが、不動産投資は自己資金が少なくても金融機関からの融資を活用して行うことができます。老後資金問題は、不安に感じているだけでは解決にいたりません。まずは「実際に自分がいくら年金をもらえるのか」「あといくら貯蓄すればいいのか」など現状を把握するところから始めてみましょう。(提供:Incomepress


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