ここへきて、新型コロナ第3波が懸念されている。これまでも営業自粛を受けた賃料免除や軽減など、オフィスビルや商業施設の運営には逆風となったコロナ騒動。今後も慎重な見通しで望まざるをえない情勢だが、「ステイホーム」でむしろ堅調なのが賃貸需要。今後の見通しについて検証していく。

新型コロナが地価上昇を止めた!
オフィスも商業施設も逆境に

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(画像=Stossi Mammot/PIXTA、ZUU online)

周知の通り、新型コロナウイルスの世界的なパンデミック(大流行)が経済に大きな打撃を与えており、その影響は不動産市況にも及んでいる。国土交通省が公表した「地価LOOKレポート(2020年第2四半期)」によれば、全国100地区のうちで上昇を示したところはわずか1地区にとどまっていた。

前回調査では73地区が上昇しており、このところ右肩上がりが続いてきただけに、まさにコロナが“冷や水”を浴びせた格好だ。前回調査で下落していたのは4地区だったが、今回調査では38地区に増加していた。

なお、唯一の上昇地区は仙台市の「中央1丁目」だった。残る61地区は横ばい傾向を示しており、全体的に不動産市況は踊り場に差し掛かっていると言えそうだ。

緊急事態宣言の解除後もリモートワーク(在宅勤務)を継続させる企業が少なくないこともあってか、オフィスビルの需要も振るわない様子である。三菱地所リアルエステートサービスが2020年6月に実施した顧客調査によれば、コロナ禍を踏まえてオフィス移転計画の凍結(見合わせ・保留・選定延期)に踏み切った企業は全体の53%に達していたという。

しかも、リモートワークへのシフトを念頭に置き、中長期的にオフィス賃貸面積の圧縮を検討している企業が54%に上った。三幸エステートとニッセイ基礎研究所による「オフィスレント・インデックス」を見ると、2020年第3四半期における東京都心部Aクラスビルの成約賃料(月坪)は3万8048円で、前期比では2.1%の減少となっていた。

コロナの直撃を受けている宿泊施設や商業施設が悲惨な状況であることは、容易に想像がつくだろう。「GoToトラベル」の効果で宿泊施設の稼働は回復基調を示しているものの、世界最大の法人向け不動産サービスを展開するシービーアールイー(CBRE)によれば、2020年第3四半期における繁華街の空室率は東京・銀座が2.6%(前期比+0.9%)、大阪・心斎橋が5.0%(前期比+3.7%)、名古屋・栄が3.2%(前期比+3.2%)と、いずれも上昇傾向を示している。

eコマース重要拡大で物流施設は空室率が最低水準に!
一方で住宅市場は?

例外的に好調なのは、“巣ごもり消費”でeコマースの需要が拡大してその恩恵を受けている物流施設だ。同じくCBREの調査によると、首都圏における大型マルチテナント型物流施設の空室率(2020年9月末)は0.5%(前期比▲0.1%)となり、過去最低水準まで低下しているという。

では、住宅市場のほうはどのような状況なのだろうか?不動産経済研究所の公表データによれば、首都圏における2020年9月のマンション新規発売戸数は2477戸(前月同月比+5.0%)、7〜9月の累計は6229戸(前年同期比+1.9%)に達していたし、日本不動産研究所の調査では2020年8月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)が11カ月連続で上昇していた。

このように、今のところ新型コロナがもたらした景気の悪化は住宅の販売やその価格にはさほど影響を及ぼしていないようだ。感染予防の観点から自粛を求められて旅行やショッピング、外食を控えたとしても、自分が住むための場所は必要となるのだから、その意味では当然とも言える結果かもしれない。

むしろ、「ステイホーム」を求められて自宅で過ごす時間が長くなっているのだから、より快適な住まいを求めるニーズは今まで以上に高まっているとも受け止められよう。実際、在宅勤務になって手狭さを感じるようになり、グレードアップした住まいに引っ越したという人も少なくない様子だ。

さて、ここからが肝心な話で、コロナ禍は賃貸住宅の需要にも何らかの変化をもたらしているのだろうか?不動産投資を行う立場の観点から、現状を探ってみたい。