金の投資方法はいろいろありますがそれぞれに特徴が違うため、投資の目的を明確にして選ばなければなりません。投資に利用する会社をどこにするのかも悩ましい点です。今回は、金の投資方法を比較してそれぞれのメリット・デメリット、利用に向いている人についてまとめました。また貴金属会社と証券会社の比較、ネット証券で金投資におすすめの会社も比較しています。
金の投資方法全11パターンを比較!
金の投資方法は、細かく分けると10パターンに分類できます。これらの投資方法を「投資の価格帯)「収益性」「安全性」の3項目で比較しました。
種別 | 投資の価格帯 | 収益性 | 安全性 |
---|---|---|---|
金地金 | 高 1キログラムで 数百万円 |
高 割安な生産コスト |
低 盗難、一括購入リスク |
金貨 | 中 1枚数万円~ 数十万円 |
低~中 生産コストが割高 |
低 盗難、一括購入リスク |
純金工芸品 | 中~高 50万円~ |
低~中 生産コストが割高、 美術的価値が出る 可能性も |
低 盗難、一括購入リスク |
純金積立 | 低 毎月1,000円 から可能 |
中 長期保有で 値上がり期待 |
中~高 積み立てで 変動リスク分散 |
金鉱株 | 中 20万円~ |
中~高 ハイリターン もあり得る |
中 一括購入リスクと 元本割れの可能性 |
金投資信託 | 高 100円から可能 |
中 長期保有で 値上がり期待 |
中 積み立てで 変動リスク分散 |
金ETF | 高 1口数千円から可能 |
中 長期保有で 値上がり期待 |
中 積み立てで 変動リスク分散 |
金CFD | 中~高 数千円から可能 |
高 ハイリターン可能 |
低 ハイリスク |
金先物取引 | 中 10万円から可能 |
高 ハイリターン可能 |
低 ハイリスク |
金限日取引 | 中~高 数千円から可能 |
高 ハイリターン可能 |
低 ハイリスク |
金のeワラント | 高 数千円から可能 |
高 ハイリターン可能 |
中~高 ハイリスクなものの 購入金額の範囲内に 限定できる |
それぞれの投資方法の特徴とメリット・デメリットについて、以降で解説します。
金地金のメリットとデメリット
・メリット:加工費が安く長期保有での値上がりも期待できる
・デメリット:多額の資金が必要、盗難リスク、保管費用がかかる
・向いている人:まとまった資金を安全資産の金として所有したい人
金地金を直接購入して保管する方法です。金地金の購入単位は数種類ありますが、売却を考えると加工費の一番安い標準の1キログラム単位での購入がおすすめです。ただ1キログラム単位では数百万円の購入資金が必要となります。例えば2020年11月13日9時30分時点での金の価格は店頭小売価格で1グラム約7,032円(税込み)。つまり1キログラムの場合約703万円かかることになります。
また手元に置く場合は盗難リスクが高まりますが、盗難リスクを回避するには専門業者へ委託する保管費用がかかります。金地金は、ある程度まとまった資金を安全資産として所有したい人や、子どもなどに分配するために金を利用したい人におすすめです。
金貨のメリットとデメリット
・メリット:少額から投資できる、デザインなど楽しめる要素あり
・デメリット:割高、傷つくと価値が下がる
・向いている人:少額から投資したい人
金貨には、収集型金貨(日本政府の発行する記念金貨はこのタイプ)と地金型金貨(投資用金貨)の2種類があります。投資として金貨を購入する際は、外国の政府が発行している投資用金貨の購入がおすすめです。地金型金貨としては、カナダ政府の発行しているメイプルリーフ金貨やオーストリアのウイーン金貨などが有名です。
純金の少額投資がしやすく手元でデザインなどを楽しむ「観賞用」としての魅力もある金貨への投資。しかし鋳造にかかる費用や加工費が上乗せされている分、割高で傷をつけると価値が下がってしまいます。また、金地金同様に盗難リスクなどのデメリットもあります。
純金工芸品のメリットとデメリット
・メリット:金の価値+芸術的価値としてプレミアがつく可能性もある
・デメリット:加工費が割高
・向いている人:観賞用として金を楽しみたい人
純金工芸品に加工した金を購入するのも金投資の方法の一つです。技術力の高い職人が美術品として加工した場合は、価値が上がることもあります。そのため純金工芸品の購入は、「美術工芸品として金を楽しみたい」という人向きの投資方法です。
純金積立のメリットとデメリット
・メリット:少額から投資できる、時間的なリスク分散、現物を引き出せる
・デメリット:まとまった金額を積み立てられないと引き出せない、引き出す場合は配送料がかかる
・向いている人:少額から積み立てたい人
純金積立は、金地金を少額から少しずつ購入できる金への投資方法です。金地金の購入とは違い保管費用がかからず一定量が貯まってきたら現物の金を引き出すこともできます。時間的なリスク分散ができるため、初心者が始めやすい投資方法の一つです。デメリットとしては「ある程度まとまった金額を積み立てないと引き出せない」「現物を引き出したときに配送料がかかる」などがあります。
少額から安定資産の金を所有しておきたい人全般におすすめです。
金鉱株のメリットとデメリット
・メリット:ハイリターン
・デメリット:元本割れのリスク、長期投資には向かない、現物と交換できない
・向いている人:短期的な取引をしたい人
金の価値だけでなく金鉱会社や純金をメインに扱う会社の「企業価値」にも投資する方法です。例えば日本では、純金の精錬する三菱マテリアル<5711>などがあります。現物株の保持は、通常の株式と同じくハイリスクハイリターンで元本割れのリスクがあったり原文と交換できなかったりする点はデメリットです。基本的には短期投資を目的とした人に向いているでしょう。
金投資信託のメリットとデメリット
・メリット:少額投資できる、積み立てで時間的なリスク分散、プロの運用
・デメリット:元本割れのリスク、現物と交換できない
・向いている人:超少額から長期投資をしたい人、金の管理にかかる手間を省きたい人
金関連の投資信託は、商品にもよっても異なりますが「100円」という超少額からも投資ができ、積み立てで購入すれば純金積立と同じくリスク分散の効果がある点が魅力です。また運用はプロのファンドマネージャーが行うため、自分で運用の判断を行う手間をかけずに済みます。少額から金に長期投資をしたい人、特に初心者におすすめです。
金ETFのメリットとデメリット
・メリット:少額投資できる、プロの運用、一部は現物と交換可能
・デメリット:元本割れのリスク
・向いている人:少額から長期投資したい人、金の管理にかかる手間を省きたい人
金ETFは、証券取引所に上場している投資信託(ETF)の中で投資対象を金にしている商品です。金ETFと金投資信託の違いは、金投資信託は最低投資金額が100円からと少ない点ぐらいで金の投資先としての性質はかなり似ています。
金CFDのメリットとデメリット
・メリット:ハイリターン、金の価格下落でも儲けられる
・デメリット:メリットの裏返しでハイリスク
・向いている人:短期的にハイリターンを狙いたい人、金の価格が下落する局面でも儲けたい人
金のCFDとは、現物を取り扱わず売買で発生した損益のみを決済する取引です。金価格の上昇だけでなく下落局面でも設けることができる投資手法の一つでもあります。売買期限が定められているため、短期投資に適しています。レバレッジ効果によってハイリスクハイリターンの投資となり時には投資額以上の損失が出ることもあるため注意が必要です。
金先物取引のメリットとデメリット
・メリット:ハイリターンを狙える
・デメリット:初心者には仕組みが難しい、ハイリスク
・向いている人:先物取引の経験がある上級者
金の将来的な価格を決めて取引をする方法です。期限を決めるため、長期投資向きではありません。初心者にとっては仕組みを理解するのが難しくハイリスクなため、上級者向きの投資手法です。
金限日取引のメリットとデメリット
・メリット:FXと同じように売り・買いが可能、ハイリターンが狙える、投資額以上の損失は出ない
・デメリット:ハイリスク
・向いている人:FX取引に慣れている人、短期的にハイリターンを狙いたい人
金限日取引は、FXに似た仕組みでレバレッジを利かせた売買取引が可能な投資手法です。先物取引と同様、値上がりと値下がり両方で利益を出せる仕組みですがその分ハイリスクでもあります。FX取引に慣れている人や短期売買で儲けたいと考えている人におすすめです。
eワラントのメリットとデメリット
・メリット:FXと同じように売り・買いが可能、ハイリターンが狙える、損失が出ても追加で支払いを求められることはない
・デメリット:ハイリスク
・向いている人:損失を限定した投資がしたい人、短期的にハイリターンを狙いたい人
eワラントとは、決済する日と価格帯を決めてその範囲内で価格が収まれば満期に差分を受け取れる権利を証券化した金融商品です。指定の範囲内に価格が収まれば大きな利益が得られますが、金価格が価格帯に収まりきらない場合は損失となります。eワラントは、仕組みが難しい金融商品の一つです。しかし数千円の少額から投資できるメリットがあります。
投資金額+手数料分以上の損失は出ないため、損失を限定しつつハイリスクハイリターンを目指したい人におすすめです。
金投資をするなら貴金属会社?ネット証券会社?
金投資のために利用する運営会社としては、主に貴金属会社とネット証券会社を検討することになります。これらの会社について投資商品のバリエーションと純金積み立てのしやすさに関する項目を比較しました。
比較項目 | 貴金属会社 | ネット証券会社 |
---|---|---|
投資商品の バリエーション |
少ない | 株や投資信託などもあり バリエーションが多い |
手数料 | 購入時のみ約1.5~3.0% 保管料や年会費がかかる場合も |
購入時のみ1.65~2.2% |
現物転換 | 可能 | 不可能な会社もある |
受け取る形 | 金地金、コイン、 ジュエリー、工芸品など |
金地金のみ |
受取単位 | 1グラムから可能 | 最低でも100グラム以上 |
比較結果から貴金属会社とネット証券会社の違いとどちらを利用するかの判断ポイントについて解説します。
貴金属会社
貴金属会社はいずれも金の現物の扱いに長けており、会社によってはジュエリーや金貨、工芸品への加工も可能です。安全資産として金を長期保有する場合や財産を分配するのに現物の金を利用したい人には、貴金属会社がおすすめです。
ネット証券会社
ネット証券会社は、純金積立だけでなく金に関連した株や投資信託など金への投資手段が豊富に用意されている点が大きな特徴です。一方で金の現物の扱いについては、貴金属会社ほど手段が多くありません。金の現物にこだわらない場合や金に短期投資したい場合には、ネット証券会社のほうが向いています。
金投資(純金積立)におすすめのネット証券3社を比較
金の投資におすすめのネット証券の中で初心者でも始めやすい純金積立のある会社3社の違いについて比較しました。
種別 | SBI証券 | マネックス証券 | 楽天証券 |
---|---|---|---|
選べる 投資商品の種別 |
・純金積立 ・スポット購入 ・金関連の投資信託 ・金ETF ・金資産関連の株式 ・eワラント |
・純金積立 ・スポット購入 ・金関連の投資信託 ・金ETF ・金資産関連の株式 |
・純金積立 ・スポット購入 ・金関連の投資信託 ・金ETF ・金資産関連の株式 ・金先物取引 |
純金積立の 手数料(税込み) |
2.2% | 1.65% | 1.65% |
保管方法 | 特定保管 | 消費寄託 | 消費寄託 |
現物引き出し | 1キログラムより | 100グラムより | 引き出せない |
申込単位 | ・1,000円より 1,000円単位 ・1グラムより 1グラム単位 |
・1,000円より 1,000円単位 ・1グラムより 1グラム単位 |
・1,000円より 1,000円単位 |
比較結果からそれぞれのネット証券にどのような特徴があるかを解説します。
SBI証券:eワラント&純金積立は特定保管で安心
SBI証券は、金に関する投資商品の種別が多く、特にeワラントがある点が大きな特徴です。eワラントは投資商品としては勉強しないと難しい面もあります。しかし少額から投資可能かつレバレッジを利かせることができ、さらに投資金額以上の損失が出た場合も追加の支払いを求められず利用しやすい点が魅力です。
純金積立に関しては他社に比べて手数料が高くなっていますが、唯一特定保管されています。万が一会社が破たんしても積立金は保証されるため、安心して積み立てすることができるでしょう。
マネックス証券:手数料の安さと100グラムから引き出せる点が魅力
マネックス証券は、純金積立の手数料が安い点と100グラムから現物を引き出せる点が魅力です。金関連の投資商品の種類については他社と同等レベルの種類をそろえていますが大きな特徴はありません。
楽天証券:金先物取引をしたい場合の選択肢
楽天証券は、金先物取引ができる点が他社と大きく違うポイントです。先物取引は上級者向きですがレバレッジを利かせてハイリスクハイリターンを狙える投資方法であり、短期的に差益を狙っていきたい人に向いています。純金積立の手数料は安いのですが、現物の引き出しができない点は他の2社に後れを取っている点です。
金の投資方法や利用する会社選びは投資の目的によって決めよう
金に投資する手段はさまざまです。しかし投資方法には、長期運用向き・短期的な取引向きなどそれぞれに個性があり投資目的によってある程度絞り込めます。安全資産として財産のポートフォリオに組み込むなら長期運用に向いている投資方法を選ぶと良いでしょう。逆に短期的に投資をして大きな利益を狙う場合は、短期投資に向いている投資方法を選ぶのがおすすめです。
貴金属会社とネット証券会社の使い分けも同様です。貴金属会社は金の現物の扱いに、ネット証券は株や投資信託などの投資手段を選びたい場合に選択してみてはいかがでしょうか。
※2020年11月13日現在の情報をもとに執筆しています
文・藤森みすず
大手Slerにてシステムエンジニアを経験後、フリーランスのライターに。FX・保険・不動産・フィンテックなど、金融に関する記事を多く手掛ける。
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