個人投資家として活動し、投資関連書籍も数多く出版されているコアプラス・アンド・アーキテクチャーズ株式会社代表取締役の玉川陽介さん。現在、不動産投資を主としている玉川さんは、2020年9月に保有する不動産時価が100億円を上回ったそうだ。資産100億の常勝投資家に2021年の経済展望を聞いた。(取材・執筆・構成=ZUU online編集長 菅野陽平)

「資産100億の常勝投資家」が予測する2021年の経済展望
(画像=ZUU online)
資産100億の常勝投資家・玉川陽介氏インタビュー
玉川陽介(たまがわ・ようすけ)
コアプラス・アンド・アーキテクチャーズ株式会社 代表取締役
1978年神奈川県生まれ。学習院大学卒。大学在学中に情報処理受託の会社を創業し成長させる。M&Aにより上場会社に同社を売却後は、国内外の株式、債券、デリバティブ、不動産など多様な種類を取引する個人投資家となる。東洋経済、ダイヤモンド、日経新聞などへの寄稿多数、過去に学習院さくらアカデミー講師(金融リテラシ)ほか金融経済、不動産の講演を開催。金融商品分析や不動産投資の書籍は計10万部を超えるロングセラー。 2020年9月、コアプラス・グループの保有する不動産時価が100億円を超え、個人の経営する賃貸業において日本最大級となった。

――2021年の経済展望についてお伺いしたいと思います。

不動産賃貸市場はコロナ禍で飲食店舗が苦戦しています。2021年は閉店の動きがさらに加速するのではないでしょうか。チェーン店も各社軒並み低調で閉店が目立ちます。最悪期から見ると「それでもまあまあ消費は回復してきたかな」という状況です。それでも、この苦戦状態ですから、先行きの目処が立たないのでしょう。

当社は住居物件が多いので、新型コロナウイルスによる影響はあまり受けていません。住居の賃料滞納もほぼありません。このような弱い実体経済のなかで、米国株が最高値近辺、日本株が29年ぶりの高値更新というおかしな状況が続いています。中央銀行の大規模緩和の効果はもちろん、債券市場に投資妙味がなく債券から株に資金が流れていること、新型コロナウイルス関連の公的支援で行き渡った救済資金が「カネ余り」を生み、その一部が金融市場に流れたことが予想されます。

実体経済が弱いなかの高値更新は異常で、いずれ調整が入るはずです。特にズームやテスラ、新型コロナウイルス関連の製薬銘柄などモメンタム銘柄は急落の可能性があるでしょう。代替肉ブームで乱高下しているビヨンド・ミートのような、流行り廃りが激しい銘柄のチャートが参考になるのではないでしょうか。

いまだに正常な経済にはほど遠い状況です。政府支援なしでは実体経済の正常化は厳しいでしょう。日本でも、コロナ公的支援の第二弾が出るのではないかと思います。新型コロナウイルス特効薬のニュースで株高反応がありましたが、特効薬が出ても人々の行動パターンは急には変わらず、この先、数年は「満席」にならない経済が続くのではないでしょうか。

海外のリスク要因としては、タイなど東南アジアの不動産バブルが崩壊して、世界経済混乱のトリガーとなる可能性が挙げられます。新型コロナウイルスで一番ダメージを負うのはインバウンド産業であり、GDPの2〜3割が観光業であるタイも例外ではありません。

タイのバンコク郊外では、1棟あたり1,000部屋規模のワンルームばかりのタワーマンションを大量に供給中です。しかし、現地人が気軽に一人暮らしできる賃料水準でもなく、賃貸需要は外需に依存しているともいえます。日本のバブル期に、ダイアパレスが全国津々浦々に作られて破綻していったことを思い出させます。同じ道をたどるかもしれません。タイの大手デベロッパーなどは破綻するところも出るのではないでしょうか。

その他、米中の対立が加速して、中華圏経済と欧米経済が分断されるリスクがあります。イスラム圏と欧米の貿易交流が低調なように、中華圏との交易について規制が厳しくなり、対中国の仕事がやりにくくなる可能性はあるでしょう。そうすると対中国需要が減って、中国勃興前のキャパシティに戻ってしまいます。インバウンド、製造業など多くの業界にマイナスでしょう。

「資産100億の常勝投資家」が社会的責務を重要視する理由
コアプラス・アンド・アーキテクチャーズの社内(画像=コアプラス・アンド・アーキテクチャーズ株式会社)

信用創造で景気が良くならない理由

――このような非常事態時こそ、金融機関の動向が注目されますが、玉川さんは現在の融資姿勢をどう見ていますでしょうか。

コロナ禍で国内経済が停滞するなか、それを再び活性化させるためには、金融機関の信用創造の役割は重要です。そのため、政府保証により、いわゆる「コロナ融資」での資金が大量供給されました。そこまでは良かったのですが、コロナ融資は無リスクで地域金融機関の売上げになるため、そればかりに偏り、本来の融資業務をおろそかにする地銀信金が散見されるという逆転現象が起きています。

金融機関は、自らの力量でリスクを評価して貸出をする事業性評価を進めるべきでしょう。特に、東京の地域金融機関は公的保証に頼り、自らはリスクを取らないことも少なくありません。実際に私も「うちは今はコロナ融資しかやっていません」と言う融資担当と何人かお会いしました。「コロナ融資で目標額を達成してしまったので、来年4月以降でないと新規融資は難しいです」と言われることもありました。

「保証協会による保証」があるので、地域金融機関はリスクを取らずに余った預金を貸し出して利益を出せてしまいます。そのため、保証協会の審査が厳しい地域のほうが、地域金融機関が自らがんばるしかないので貸し出し姿勢が前向きという金融機関関係者もいるくらいです。自らがんばる前に政府保証に依存している構図にも見えます。

じつは、中小企業融資の現場には、貸出のリスクは保証協会、その利益は地域金融機関に。という政府保証依存の構造があります。そのような無リスク融資ができるならば、自らリスクをとる必要はないわけです。しかし、これでは、動物園の動物が野生で狩猟する感性を忘れてしまうように、事業性評価をする目利きの力が失われるように思います。

しかし、いつ潰れるかわからない零細企業に小口の融資を行うのは高リスク低利回りのため民間金融機関としてはやりたくありません。そのため、保証協会は「最後の砦」とも言われ、零細企業の泣きつく先となっています。もちろん、このようなセーフティーネットはどこの国にもあり日本にも必要です。

では、仮に保証協会の保証制度がなくなれば、零細企業の店主は運転資金を借りられず破綻が相次ぐのでしょうか。じつは、日本政策金融公庫も零細企業向けに同じようなセーフティーネット融資を行っています。借りる側からすれば、保証協会がなくても公庫の融資枠を拡大してもらえれば同じことです。むしろ、保証協会と公庫の両方に融資を申し込む手間が減っていいかもしれません。

困るのは、地域金融機関でしょう。無リスクでの収益源がなくなってしまい「保証協会は利益を生んだのに、公庫には仕事を取られて民業圧迫」の状態です。しかし、政府保証の窓口代行はもともと国に与えられた無リスク報酬のような制度ですので、この構造から早々に卒業し、本来の金融機関の役割として融資を増やして利益を上げるべきではないでしょうか。国の支援を受けなければ利益が出ない金融機関はそもそも成立しません。合併させて退場してもらうのが社会のためとも言えます。

「貸出先がない」という金融機関担当の弁を耳にすることが多いですが、貸出を伸ばしている金融機関もありますし、無担保で融資を出す金融機関もあります。地方はともかく東京都心で「貸出先がない」というのはそのまま信じていいのか懐疑的です。資産100億をかかげる当社グループですら500万円の運転資金を申し込んでも9割方は断られるのが実態です。

本来の金融の理論のように、企業の信用力により金利を大きく変えるなどの工夫をしたり、米国で行われているようなクリエイティブな融資スキームを導入するなど、融資に対する「ゼロ回答」をしないために改善余地はあるはずです。金融庁も、金融機関に対して政府保証と非政府保証の融資比率などを開示させるなどしてもいいと思います。そんななか、関西の金融機関は積極的で元気がいいと聞いたこともあり、当社では関西進出も検討しています。

株価下落で悲観シナリオも。長期的に見ればインフレと増税は確実

――2021年はどのような1年になりそうでしょうか。

突き詰めると、「紙幣増刷による資産インフレ+ GOTOトラベルやコロナ融資など救済措置」と「実体経済のコロナ不況」のどちらが勝つか。という展開です。長期的に見ればインフレと増税は確実でしょう。

「働かないのに救済資金がもらえる」ということは、いままで働いて蓄えた人のお金が間接的に接収されるか、もしくは、今後に分割払いで長期返済を迫られる、ということです。短期的には金融政策による株高と政府による財政出動で不景気な印象はあまり感じませんが、足下では実体経済のほころびが露呈しています。頼みの綱である株価が下がる局面があれば、低調な実体経済があらわになり、2021年は良くない年になる可能性があります。