(本記事は、佐藤 祐一郎氏の著書『小さくても勝てる!』の中から一部を抜粋・編集しています)

毎週1回の戦術会議でお客様のニーズに近づく

小さくても勝てる!
(画像=stockwerk-fotodesign/stock.adobe.com)

●PDCAサイクルを回す

自社をサービス業ととらえなおすと、お客様との接点である社員のレベルを高めていく必要があります。大企業とは規模やブランドで劣る中小企業は、教育によって1人ひとりの人材を差別化の手段にしなければならない。

そこで、お客様から「阪神佐藤興産の中尾さんにお願いしたい」と言っていただける「行列のできる人づくり」をしたいと考えて、当社では社員教育、そして採用に取り組んできました。

私が営業活動に取り組み、そしてそれを組織展開したときから、取り組んでいるのが、部門ごとに毎週1回行っている「戦術会議」です。

戦術会議では、各社員が自分のお客様のところに出向いた際に、要望や期待などの「声」を聞いてきます。その内容を報告し、その報告に対して私や直属の上司、また担当取締役が行動のアドバイスをする。翌週は、そのアドバイスをやってみた結果を報告する。戦術会議は時間にして30分です。

たった、これだけのことかと思われるかもしれませんが、これを3年間毎週繰り返してきた。

お客様の声は小さなことであっても、そのとき実際に動いている現場での最新の情報です。その情報に対するアドバイスが有効に機能すれば、小さなことでも確実に改善されていきます。すると、その社員のお客様に対して何をすべきかの焦点が絞られ、一方で視野が広がっていく。それが営業と現場の活動の両輪のスキルになっていくのです。

そして、そのことにより、社員にとって目先のことだけではなく、“目先の先”を見据えたお客様への対応が可能になるのです。

かつては、私が社員に対して「ああしろ、こうしろ」と、直接思いつくままに指示をしていました。まったく組織的ではなく、ただ指示を飛ばすだけでチェックもしていませんでした。社員が理解しているのか、伝わっているのか、気にもとめていないかはまったくわからず、私の自己満足になっていました。

しかし、この戦術会議という仕組みを導入してからは、考え方や営業活動が整然となり、組織としての営業の方向性についても社員が共通の理解のもとに行動できるようになりました。

戦術会議は、PDCAサイクルを回す場そのものです。

・社員が拾ってきたお客様の声をもとに仮説を立て(Plan)・社長や上司のアドバイスをもとに実行し(Do)
・翌週の会議でチェックし(Check)
・改善策を考え、実行する(Action)

このPDCAサイクルをぐるぐる回しながら、お客様の本当のニーズに近づいていく。行列ができる人づくりのために不可欠な取り組みです。

小さくても勝てる!
佐藤祐一郎(さとう・ゆういちろう)
阪神佐藤興産株式会社 代表取締役社長
1957 年、兵庫県尼崎市出身。大阪府立寝屋川高校、関西大学を経て、清水建設に入社。日本ペイントを経て、1984 年、父が創業した阪神佐藤興産に入社。 1996 年より現職。同社は、大手ゼネコンが競合にもかかわらず、ほぼ負け知らずと話題。整理・整頓・清潔が徹底された明るい雰囲気の現場見学会も好評。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます