経済協力開発機構(OECD)が11月16日〜20日に開催している「2020年グローバル・ブロックチェーン政策フォーラム」で、米国財務省の幹部が暗号資産(仮想通貨)税制について「2つの課税方法を議論する必要がある」とコメントしたことがわかった。20日、Bloombergが報じた。
これは財務省税務政策局の上級顧問である Erika Nijenhuis 氏が「Crypto-tax – Ensure a robust and transparent tax policy framework」と題したパネルディスカッションで発言したもので、同氏によると、現在、米国では暗号資産の税務処理を行うための報告規則を作成中で、課税方法によってトレードオフの関係が生まれる問題点を議論しているとのこと。
その上で、Nijenhuis 氏は投資家に対する課税方法として、「国際的な共通報告基準(CRS)のようなリスクに焦点を当てた方法」と「取引報告に焦点を当て納税義務を課す方法」のどちらかを選択する必要があるとの考えを示した。
なお、CRSとは外国の金融機関等を利用した国際的な課税回避の防止を目的としてOECDが作成したもので、金融口座情報を各国の税務当局間で自動交換するための制度。
現在、日本を含む100以上の国・地域がCRSに参加し、参加各国に所在する金融機関は、管理する金融口座から税務上の非居住者を特定し、当該口座情報を自国の税務当局に報告する必要がある。
Nijenhuis 氏は提案した2つの課税方法に関して「どちらを選ぶにしても簡単な選択ではない」と述べており、それぞれの方法が暗号資産取引所などの関連企業に与える負担やコンプライアンス強化などを考慮する必要があると語った。
一方で、パネルディスカッションに参加した米暗号資産取引所Coinbaseの税務担当副社長であるLawrence Zlatkin氏は「米国は取引に焦点を当てた報告規則を作成すべきではない。なぜなら、大量の集計データは取引所に莫大な負担をかけ、税法の施行に必ずしも役立つわけではないからだ」と欠点を指摘。
さらに暗号資産取引を行うユーザーの負担にも焦点を当て、「取引所が当局に報告をする場合にしても、個人ユーザーは保有する暗号資産の実質的な損益を計算しなければならないだろう」と語った。
暗号資産の税制に関しては日本においても議論が進められており、今月4日に開催された自民党の「予算・ 税制等に関する政策懇談会」において、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が2021年度の税制改正に関する要望書を提出している。
こちらは暗号資産取引によって生じた利益に対する課税方法を20%の申告分離課税として扱うことなどが盛り込まれている。(提供:月刊暗号資産)