コロナによる景気減速もどこ吹く風と言わんばかりに成長を続けるイー・ギャランティ。2007年のジャスダック上場時から前期(2020年3月期)まで増収増益を達成しているほか、2021年3月期も前期比29.3%の増収、同9.6%の営業増益を見込んでいます。“不況に強い業態”と言われる信用保証ビジネスを手掛ける同社ですが、ここまで成長を続けられた秘訣はなんなのでしょうか。今後の成長に向けた布石を含め、金融アナリストの三井智映子さんが江藤公則社長を取材しました。(※取材では、撮影時以外のマスク装着やソーシャルディスタンスの確保など新型コロナウイルスの感染防止に対する配慮を行っています)

江藤公則 MASANORI ETOH
イー・ギャランティ代表取締役社長
1998年、伊藤忠商事に入社。入社2年目に社内ベンチャー制度を活用し、金融債権の保証ビジネスを立ち上げる。2000年にイー・ギャランティを設立。2007年にジャスダック市場に上場し、ジャスダック上場企業の社長としては最年少記録(当時)を打ち立てた。2011年には東証2部、翌2012年には東証1部への鞍替え上場を果たしたほか、信用リスクに関するファンドの組成、ベンチャー出資を保証するサービスの販売、新型コロナウイルスの感染拡大にあわせた商品開発をするなど順調に業容を拡大させている。
三井智映子 CHIEKO MITSUI
金融アナリスト
北海道小樽市出身。NHK教育「イタリア語会話」でデビュー。2011年東京にはモーターショーにてMCデビューを果たす。2014年1月に「五木ひろし特別公演」で八重次役を務めたほか、数々の番組に出演。2012年10月からフィスコリサーチレポーターとしてYahoo!ファイナンスで株価予想などを行うほか、テレビ、雑誌、Webなど活動の場を広げた。2013年に『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門 』(講談社)を出版。2020年に独立し、解説投資の記事執筆やセミナー講師、動画配信( https://www.youtube.com/c/EventsIR/videos )などに従事。わかりやすい初心者向けの投資解説が武器。ツイッター@chiekomitsui、ブログ https://ameblo.jp/mitsui-chieko/

信用リスクを流動化して小口に分散

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(画像=末松正義、画像=ZUU online)

三井 本日はよろしくお願いします。御社は「売掛債権の信用リスク保証ビジネス」を展開されていますが、信用保証ビジネスは、一般のかたにはやや理解が難しい面があると思います。御社の事業について詳しく教えてください。

江藤 簡単に言うと、ある企業が倒産した場合にお客様に対して保証金をお支払いするサービスです。企業が持つ売掛債権や、金融機関が持つ金融債権などを保証するわけですね。相手先企業が倒産したり債権が不払いとなったりして、回収できるはずのお金が回収できなくなった時に、当社が代わりに保証するシステムになります。お客様は個人ではなく、一般の企業や金融機関です。

三井 いわゆるサービサー(債権回収業)とは異なるのでしょうか。

江藤 債権回収業にはならないようにしています。そもそも企業が倒産した場合は、原則としてその企業は法的倒産していますから、当社が回収に行くことはできません。当社も債権が分配されるのを待つのみになりますが、そのため一社一社の倒産確率を計算し、保証料率に沿った保証料をいただくことを前提にしています。債権の回収は期待せずに保証料で収支を合わせることになります。

三井 御社の強みはどのような部分になりますか?

江藤 信用リスクを引き受ける会社の強みというと、一般的には保証枠がつく(=高額の限度額が設定できる)ことが挙げられると思います。ある会社が3億円を保証してほしいと言っているのに1億円しかできませんとなると、顧客のニーズを満たせないですよね。その3億円を丸々保証できる枠を持てるのが、当社の強みのひとつだと思います。

三井 なぜそのような大きな枠を持てるのでしょうか?

江藤 それは「自社でリスクを抱えていない」からです。自社でリスクを抱えていると、自社の体力に応じた引き受けしかできませんが、当社は自社で引き受けた枠を複数のファンドなどに流動化しています。さらに、流動化も複数の投資家に対して行っているので、1社のみで引き受けるのと比べて大きな限度額の引き受けができるようになっています。これが当社の大きな強みだと思いますね。

やはり、リスクが小さい会社のほうが抱えられる信用の枠も大きくなります。信用リスクを多く抱える企業だと、貸し倒れが起きた際に全額が損失になってしまいますからね。リスクを多くのファンドや機関投資家に分散してヘッジすれば、1社1社が引き受けるリスクは小さくなります。たとえば、A社に対するリスクを、多くの投資家に1000万円ずつ50社に引き受けてもらって、合計で5億円の枠を確保するといった具合です。

三井 複数の機関投資家(流動化先)にリスクを分散しているのがポイントなわけですね。

江藤 自社ですべてのリスクを抱えるビジネスモデルだと、倒産確率に収束しないんです。万が一が起こることもありますからね。だからといって、確率に乗せるために何万社と引き受けると、抱えるリスクがとんでもない金額になります。流動化というビジネスモデルでリスクを小口分散させることによって、ほぼ予想通りの倒産確率になるんです。倒産確率通りになると低コストでの引き受けが可能となり、お客様が支払う保証料もその分安く設定できます。

三井 価格面にも流動化というビジネスモデルが反映しているわけですか!受け入れる投資家側としてもリスクが分散され、ウィンウィンの関係になりますね。

江藤 そうです。リスクが分散されたうえできちんと保証もされるので、投資家にとってもメリットになります。

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(撮影=末松正義)

市場規模約200兆円!成長の余地はまだまだ大きい

三井 信用保証のマーケットでどの程度のシェアを握っていらっしゃるのですか?