賞与
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○ 民間企業の2020 年冬のボーナス支給額を前年比▲8.0%と予想する(毎月勤労統計ベース)。なお、今冬はボーナス支給がされない事業所が増加する可能性が高いことから、ボーナスの支給がない労働者も含めた平均では前年比▲11.5%となるだろう。

○ 本日公表された今夏のボーナスは前年比+0.5%と予想外の増加となったが、これはあくまで「賞与支給があった事業所における一人当たり平均」の値であることに注意が必要である。今夏は新型コロナウイルス感染拡大の影響で賞与が支給されない事業所が多かったことから、賞与支給のある事業所に雇用される労働者の割合は、前年と比べて2.4%ポイントも低下している。賞与が支給されなかった事業所も含めた全労働者一人当たり平均でみると、今夏のボーナスは前年比▲2.4%となっている。こちらの方がより実態に近いだろう。

○ 冬のボーナスは一段の悪化が必至である。多くの企業では春闘時にボーナス支給額を決めることから、20年の春闘では新型コロナウイルス前の業績をもとに交渉がされていた。そのため、夏のボーナスは、新型コロナウイルスによる悪影響を反映しきれていない。一方、今冬のボーナスでは、急激に落ち込んだ20年度前半の業績を元に支給する企業が夏対比で増えることから、大幅悪化が避けられない。加えて、厳しい経済状況を受けて、ボーナスの支給を見送る企業も増加することが予想される。ボーナスの支給がない労働者も含めた平均では前年比▲11.5%と、二桁の減少になるだろう。

○ ボーナスの大幅減少は来年の夏まで続く。21年春闘では、大幅な悪化が確実視される20年の業績を元に交渉が行われることになるため、ボーナスも大幅削減が避けられない。月例給与に影響する春闘賃上げ率についても前年割れとなるだろう。景気は既に持ち直しに転じているが、景気の遅行指標である賃金についてはしばらく厳しい状況が続く可能性が高い。

第一生命経済研究所
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第一生命経済研究所 調査研究本部
経済調査部長・主席エコノミスト 新家 義貴