近年では、大規模な財政出動による株価上昇が各国で観測され、将来的な通貨価値の毀損/インフレへの懸念が高まっています。

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

そのため多くの投資家は従来のアセットクラスとは異なる代替資産をポートフォリオに加えることを検討しており、最近ではビットコインへの資金流入が増加傾向にあります。

ブロックチェーン技術を活用したトークンの発行/取引は、2016年頃から一般投資家の間で急速に広まり、規制当局による投資家保護の取り組みを経て、現在では機関投資家向けデジタルアセット市場の形成が行われています。

これまで安全資産として知られてきたゴールドや米国大企業の株式のみならず、様々な資産のデジタル化による資本市場のさらなる活性化が期待されています。

本稿では、機関投資家の長期的な資産形成の実現に向けたデジタルアセット市場の形成についてスイス「Sygnum Bank(シグナム バンク)」の事例を参考に考察していきます。

目次

  1. スイス・デジタルアセット市場について
  2. Sygnum Bank(シグナム バンク)について
  3. 裏付け資産の多様化がデジタルアセット市場の未来を形成
  4. まとめ

スイス・デジタルアセット市場について

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

スイスではスイス証券取引所(SIX)が開発/運営を手がけるデジタルアセット取引所「SIX Digital Exchange」のローンチが予定され、世界に先駆けて金融市場のデジタル化が行われてきました。

クリプトバレーと呼ばれるツーク市は、800社以上のブロックチェーン企業が存在しており、2020年9月にはブロックチェーン法が成立(2021年1月以降に施行予定)。

スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)は、銀行業および証券業のライセンスをデジタルアセット関連企業であるSygnumとSEBAに発行しており、スイス連邦政府はブロックチェーン技術を対象とした法的枠組みの変更は現在のところ必要ないとしつつも法規制によるリスクマネジメントの必要性はあるとの認識を持っています。

従来の法規制はブロックチェーン上に発行された金融資産を想定していないことからスイスにおいては証券、金融、民放などの分野で、日本と同様に法改正の検証が必要であると言えます。

Sygnum Bank(シグナム バンク)について

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

「Sygnum Bank」は、デジタルアセットに関する発行プラットフォーム「Desygnate」/取引所「SygnEx」の立ち上げを発表。

世界初のデジタルアセット銀行としてスイスとシンガポールでライセンスを取得している「Sygnum Bank」は、機関投資家向けデジタルアセット市場の形成に向けた取り組みを進めています。

最近では、セキュリティトークン発行プラットフォームとして日本でも積極的な展開行っている「Securitize」もセカンダリーマーケットへの参画を発表しており、市場のインフラ整備とともに参入プレイヤーの増加が期待されます。

これまでは米国においても発行プラットフォームと取引所サービスの提供は別会社が行なってきましたが、今後はよりシームレスなプラットフォームの運営を実現することで、デジタルアセットの発行企業は二次流通を見据えた戦略の構築が可能となります。

そのことで償還期間の長期化など新たな特徴を有する金融商品を組成する可能性も広がり、発行企業増加/投資家層の獲得は、高利回りで多様性のあるデジタルアセットポートフォリオの構築を促進することにもつながります。

「Sygnum Bank」は、ベンチャーキャピタル、中小企業株、不動産、美術品と収集品などこれまで非流動的で投資機会のなかった資産を「Desygnate」を活用してセキュリティトークンとして発行し「SygnEx」で安全に取引できるエコシステムを構築し、従来の資本市場で資本を調達する際にスタートアップや中小企業が直面する多くの課題を解決することを目指しています。

美術品と収集品取引プラットフォーム「マスターワークス」をはじめとしてクラシックカー、競走馬などの所有権を小口化し、投資の活性化を促すサービスの事例も近年では確認されています。

裏付け資産の多様化がデジタルアセット市場の未来を形成

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

「発行者と投資家の両方が独自の投資機会を創出し、アクセスできるようにすることは、当初からSygnum Bankの大いなる使命でした。DesygnateとSygnExを使用して、ブロックチェーンを活用したビジネスソリューションを市場に投入し、資本市場の参加者がビジネスを行うための新しい機会を創出します。」

SygnumのグループCEOであるMathiasImbachはこのように述べています。

「SygnEx」では、スイスフランにペッグされたステーブルコイン「デジタルCHF(DCHF)」による即時決済が可能とされ、リアルタイム取引/カストディ機能を統合したデジタルアセット取引所として2021年初頭のローンチを予定。

銀行業および証券業のライセンスに基づき提供される「Sygnum Bank」のトークン化ソリューションはスイスブロックチェーン法に準拠しており、健全な法的枠組みが整備されているスイスでは下記の企業がトークンの発行をすでに実施/検討しています。

  • 資産運用会社「AzimutGroup」
  • 不動産投資会社「ImmoZins」
  • 不動産トークンプロバイダー「CrowdliToken」
  • 電気自動車会社「BAK Motors」
  • ワイン投資会社「Fine Wine CapitalAG」

まとめ

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

セキュリティトークンは「法規制に準拠した希少性の高い資産のデジタル化」のユースケースを創出する新たな概念として注目を集めており、従来の株式のみならずあらゆる資産の流動性を向上させるために現在では、法的な枠組みの精査や法整備に向けた取り組みを各国は進めています。

暗号資産、セキュリティトークンなどブロックチェーン技術を活用してデジタルに表象される資産を「デジタルアセット」と呼び、ビットコインに代表されるようにすでに多くの投資家がその恩恵を享受しています。

価格変動の激しさやスキャムプロジェクトに多くの投資家が悩まされていた時期は過ぎ去り、デジタルアセット市場は法的枠組みにも続いて健全な発展を遂げようとしています。

すでにスイスではデジタルアセット市場における裏付け資産の多様化など、その可能性をより確信的なものにするための取り組みが進んでおり、新たな市場形成に向けて期待が寄せられています。(提供:STOnline