不動産投資で失敗しないためには、ローン返済期間の正しい考え方を知る必要があります。ここでは給与所得者の投資家が「老後資金」目的でマンション投資をはじめるケースで考えてみましょう。あわせてリスクを軽減する年代別スキームも紹介します。

不動産投資のローン返済期間の正しい考え方とは?

不動産投資
(画像=lucid-dream/stock.adobe.com)

一般的な不動産投資では、賃貸マンションの購入費用の大半を金融機関のローンでまかないます。物件の家賃収入でローン返済額とランニングコストを相殺していく流れが基本です。ここでポイントになるのがローン返済期間です。不動産投資において「完済年齢を何歳にするか」が成功・失敗を分けるといっても過言ではありません。完済年齢の成功と失敗パターンを確認しておきましょう。

「老後資金」目的の場合、リタイア年齢までに完済するのが基本

例えば給与所得者の投資家がマンション投資をする場合、返済期間を30~35年前後に設定することが多い傾向です。金融機関のなかには、45年といった超長期ローンもあります。長期ローンを組むことで毎月の返済額が抑えられるため、家賃収入と調整しやすい点は大きなメリットです。一方リタイア想定年齢を超えて完済年齢を設定してしまえば老後資金を作るはずの不動産投資が重荷となりかねません。

具体的に完済年齢の設定の失敗パターンと成功パターンを比べてみましょう。

完済年齢の失敗パターン:老後になっても家賃収入が入ってこない

例えば現在45歳の人が35年ローンを組むと完済年齢は80歳です。仮に70歳で退職した場合、リタイア後の10年間は依然として毎月の返済が残っているため家賃収入が手元に入ってきません。空室が出た場合、年金の一部をローン返済に回さなければならない可能性もあります。現時点で「家賃収入-(ローン返済+必要経費)≒0」だったとしても築年数が経過すると家賃が下落する可能性も否めません。

そうなれば家賃が値下がりした分を年金で穴埋めすることが必要です。もちろん戦略的な考えであえてリタイア年齢を超えて完済年齢を設定しているケースもあるでしょう。例えば「節税目的」「どこかのタイミングで売却処分する」といったケースです。ただしあくまでも老後資金が目的であればリタイアするまでにローンを完済するのが無難といえます。

完済年齢の成功パターン:老後にローン残債のないマンションが残る

例えばリタイア想定年齢70歳の35歳の人が35年ローンを組むとちょうど70歳までに返済が終わります。これであればリタイアと同時にローン残債のない賃貸マンションが手元に残り家賃収入が得られるわけです。まさに不動産投資で老後資金をまかなえる状態といえるでしょう。築年数の影響で購入時よりも家賃収入が多少目減りしている可能性もあります。

しかし入居者ニーズのある好立地であれば一定の家賃を確保できる可能性が高いです。もし70歳という完済年齢が高いと感じている場合は「不動産投資をはじめる年齢を5年早めて30歳で35年ローンを組み65歳までに完済する」といった選択もできます。

【年代別】リスクを軽減する不動産投資スキームとは?

「リタイア予定年齢までにローン返済を終わらせる」という考え方を理解すれば年代によってリスクを軽減する不動産投資スキームがあることも理解しやすくなります。ここでは、20~60代の不動産投資スキームを確認していきましょう。

  • 20~30代:新築マンションのローンをリタイアまでにムリなく完済
  • 40代:老後資金なら中古マンション、節税なら新築マンション
  • 50代以上:家賃収入をお小遣いにしたいなら築古の選択も
  • 60代以上:マイホームのリバースモーゲージなどで老後資金を捻出

20~30代:新築マンションのローンをリタイアまでにムリなく完済

20~30代のサラリーマンと相性がいいのは、新築または築浅のマンション経営です。仮に30年ローンを利用するとして30歳であれば60歳、35歳であれば65歳までにローンを完済できます。これならムリなく「老後資金」目的のための不動産投資ができるでしょう。20~30代の若いうちであれば余裕をもってローン期間を長めに設定しやすいため、毎月の返済額を抑えやすいこともメリットです。

また20~30代の給与所得者であればこれから結婚や子どもの育児・教育をする人も多いのではないでしょうか。結婚や子どもが誕生したことをきっかけに残された家族が生活に困らないよう生命保険に入る人も少なくありません。不動産投資ローンを組む際に団信(団体信用生命保険)へ加入することで生命保険代わりになることも魅力の一つです。

40代:老後資金なら中古マンション、節税なら新築マンション

40代のサラリーマンは、目的や重視することによってスキームが変わってきます。例えば老後資金を作る目的でリタイア年齢までに完済したい場合は、中古マンションのほうが相性がよいかもしれません。なぜなら40代で30年近いローンを組むと完済年齢が70歳以上になってしまうからです。例えば現在45歳でリタイア想定年齢65歳の人がいたとします。この人のリタイアまでの残り期間は20年です。

新築マンションを購入して20年後に完済しようとすると毎月の返済額が増えて家賃収入以外の持ち出しが多くなります。そのためリタイアまでの20年間のうちに完済できる価格の中古マンションを購入するほうが賢明というわけです。ただし不動産投資の目的が所得税節税の給与所得が高い人の場合は、40代でも新築または築浅のマンションのほうがよいかもしれません。

なぜなら住宅設備は新築や築浅の物件のほうが新しく減価償却費が計上しやすいからです。減価償却費が計上しやすくなることで効率的な節税スキームを作りやすくなります。

50代以上:家賃収入をおこづかいにしたいなら築古の選択も

不動産投資の目的が老後資金でリタイアまでの完済にこだわるなら40代と同様の理由で中古マンションが向いています。なかには現時点のキャッシュフロー重視のオーナーもいるかもしれません。例えば「家賃収入-(ローン返済+必要経費)」で手残りを生み出し「おこづかいにしたい」といった考え方です。こういった人は、購入価格が安めの築古マンションを選択する手もあります。

購入費用が少なくて済む分、毎月の返済額を抑えやすく手残りを確保しやすくなるでしょう。ただし築古マンションは空室リスクが高いことも忘れてはいけません。入居者ニーズが強い好立地物件の選択にこだわりましょう。

60代以上:マイホームのリバースモーゲージなどで老後資金を捻出

60代以上の人は、賃貸マンションをキャッシュで買うのではない限り老後資金を目的にする不動産投資はおすすめできません。ローンを主体に購入してしまうと返済年齢がかなり高くなってしまいます。そもそも一定の年齢を超えるとローン審査に通りにくいこともマイナス要因です。不動産を利用して老後資金を作るなら「リバースモーゲージ」や「リースバック」が現実的かもしれません。

・リバースモーゲージ
マイホームを担保にお金を借りつつその家に住み続ける方法。死亡後は物件を売却して一括返済します。

・リースバック
マイホームを売却して現金化しつつその家を賃貸契約する方法です。

「なんのために不動産投資をするか」を明確にする

不動産投資のローン返済期間の正しい考え方について解説してきました。老後資金が目的の場合、一定の年齢を超えると新築マンション投資でスキームを作ることが難しくなります。ただし目的が相続税対策のための不動産投資になると、中高年でも新築マンションとの相性が良い傾向です。マンションは、土地を共有しているため、実際の価値よりも相続税評価額を大きく圧縮できるメリットがあります。

また目的が所得税対策なら同様に中高年でも新築マンションを選択するのもありでしょう。このように不動産投資は目的によってスキームが変わってきます。そのため「なんのために不動産投資をするか」を明確にすることが最も大切になってくるのです。目的を明確にしたうえでベストな選択を検討しましょう。(提供:Incomepress


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