ちまたでは「公的年金だけでは老後資金はまかなえない」などと叫ばれていますが、実際に自分の年金がどの程度もらえるのかはご存じですか? 年金に対する不満は口にするけど実際の受給額や制度の内容については非常に複雑なため、よく理解していない人も少なくありません。そこで本記事では、Q & A 形式で公的年金の疑問を分かりやすく紹介します。

年金の基本やもらえる金額から「年金制度は破綻するのか」といった気になる疑問まで再確認していきましょう。

Q.年金の種類は?受け取り方は?

年金
(画像=romolo-tavani/stock.adobe.com)

A.年金の種類は2種類、受け取り方は3通りあります。

私たちはふだん便宜上「年金」と呼んでいますが、公的年金は大きく分けると「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。国民年金は、自営業者や学生など厚生年金に加入していない人第1号被保険者が加入する年金です。一方、厚生年金は会社員や公務員などの第2号被保険者が加入します。どちらの年金も受け取り方は3通りです。

・老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)
老後を支えるもので支給開始年齢に達したときから受け取れます。

・障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金)
病気やケガが原因で生活に支障のある障害が残ったときに支給されます。

・遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)
老齢年金や障害年金を受給する人が亡くなったときに家族などが受け取れます。

なお老齢年金・障害年金ともに厚生年金のほうが上乗せして保険料を納付している分、手厚い支給額になっています。

Q.老齢年金はいつからもらえるの?

A.原則65歳から受給できます。

男性は1961年、女性は1966年の4月2日以降生まれの人は65歳以降から受給できます。老齢年金は、55歳や60歳からという時代もありました。しかし定年引き上げや財源などの問題から65歳からとなっています。これまでも何度か受給年齢が引き上げられた過去があるため、年金制度が厳しくなれば「さらに支給年齢が引き上げになるのではないか」と不安になる人も少なくありません。

原則65歳にならないと年金は受給できませんが、「繰り上げ受給」を選択することで60歳からもらうことも可能です。ただし年金額が減ってしまったり障害年金受けられなくなったりするなどのデメリットもあります。逆に65歳で受け取らず「繰り下げ受給」をすることで年金額を増やすことも可能です。

Q.支払う年金保険料はどのように計算されているの?

A.会社員の場合、標準報酬月額に保険料率18.3%をかけて出します。

会社員の人であれば給与や賞与から厚生年金の保険料が天引きされています。厚生年金保険料は、給与をもとにした標準報酬月額に保険料率18.3%をかけて算出しているのが特徴です。標準報酬月額というのは、給与の額に合わせてあらかじめ設定された等級のこと。ボーナスも同様に賞与をもとにした標準賞与額に保険料率18.3%をかけて算出します。

この計算方法は、会社員や公務員など加入する厚生年金のもので自営業者などが加入する国民年金の計算は「2004年度に決められた保険料額×保険料改定率」です。保険料改定率というのは物価や賃金の変動率から算出されるもののため、年度ごとに国民年金の保険料が変わってきます。2020年度の場合は、1万7,000円の保険料額に対して保険料改定率0.973が乗じられるため保険料は1万6,540円です。

Q.厚生年金の保険料の推移はどうなっているの?

A.約15年の間に4%以上も増えています。

年金制度の運営が厳しい状況になってきたため、約15年で厚生年金の保険料率は上昇してきました。その流れを振り返ってみましょう。例えば2004年の段階で厚生年金の保険料率は13.934%でした。それが毎年引き上げられ2017年には18.3%に達しました。つまり十数年の間に4%以上も増えたのです。ただし厚生年金の保険料は事業主と折半のため、本人負担分はこの半分の9.15%になります。

今回の引き上げは18.3%で予定していた上限に達したため、その後は固定されました。しかし今後年金制度の運営が厳しい状況に陥れば保険料率がさらにアップされる可能性も否めません。

Q.年金の財源は?十分足りているの?

A.足りない分をこれまでの積立金でカバーしています。

日本の老齢年金制度は「世代間扶養スタイル」といわれるものです。具体的にいえば「高齢者のもらっている年金を現役世代の保険料でまかなう」という仕組みになっています。 ただし厚生年金と国民年金の財源を現役世代の保険料でまかなえているのは約7割です。残りの2割強は国庫負担(税金)でまかないさらに足りない分を積立金で埋めている状態となっています。

積立金とは年金保険料の一部をストックし運用してきたお金です。これまでの日本は、団塊世代が現役世代だったころに年金保険料が潤沢に入ってきたため、積立金が十分にありました。アベノミクス以降は、株式市場の好調などを背景にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産運用がうまくいきストック額が増えています。ただし厚生労働省の将来の財源見通しによると今後現役世代が減っていく予想です。

そのため2030年代半ば前後から積立金を取り崩していく時期に入る可能性が高まるでしょう。

Q.年金制度は破綻する?しない?

A.「破綻」の定義で見方が変わってきます。

このテーマについては「破綻する」の定義によるでしょう。(いくらでもよいので)「とりあえず年金が受け取れる」という意味であれば破綻リスクは低いです。なぜなら日本の年金制度は「世代間扶養スタイル」なので働き手がいる限り年金保険料が入ってきます。そのため「ある日突然保険料がまったく入ってこない」といった事態は考えられません。

また積立金のストックもあります。運用成績によっては足りない分の一部をカバーできる可能性もあります。ただ「現在のレベルの年金制度を維持し続ける」という意味なら破綻リスクも否めません。なぜなら年金の大半をまかなう現役世代の保険料が減り積立金にも手をつければ制度の中身が逼迫(ひっぱく)していくことが明らかだからです。

Q.国民年金はいくら、厚生年金はいくらもらえるの?

A.国民年金は加入期間、厚生年金は加入期間と収入で変わってきます。

国民年金は、40年間保険料を納めたときで「年間78万1,700円(月額換算:6万5,141円)」です。ただし未納や一部免除の期間があったり付加保険料を納めていたりする場合は減額・加算など調整されます。なお2018年度の国民年金の平均額は約5万5,708円でした。一方で厚生年金は、以下の計算式で割り出されます。

・年金額=報酬比例年金額+経過的加算+加給年金額

2018年度の厚生年金の平均額は14万3,761円ですが男女で6万1,282円の差があります。(男性平均:16万3,840円、女性平均10万2,558円)。これは男性の給与が高かったり勤務年数が長かったりする影響でしょう。実際に一般の人が自分の年金額を計算するのは手間がかかります。今すぐに将来の年金額や見込み額を知りたいときは、年金シミュレーションを利用するとよいでしょう。

Q.もらえる年金がシミュレーションできるサイトは?

A.年金シミュレーションには、公的なもの、民間のものがあります。

公的機関が提供する年金シミュレーションとしては、日本年金機構が提供する「年金見込額試算」があります。コースは「かんたん試算」「詳細な条件で試算」の2つです。

・かんたん試算
現在と同じ条件でこのまま60歳まで年金を支払い続けたときの見込額を算出するものです。

・詳細な条件で試算
今後の収入や受給開始年齢を個別に設定できます。

より気軽に利用できる民間の年金シミュレーションの一例としては、三井住友銀行が提供する「年金試算シミュレーション」があります。登録不要、基本的な情報入力をするだけで配偶者も含めた年金見込額をスピーディーに算出可能です。

  • 日本年金機構の年金シミュレーション詳細はこちら
  • 三井住友銀行の年金シミュレーション詳細はこちら

Q.「ねんきん定期便」は何のために送られてくるの?

A. 過去の納付状況や将来の年金見込額がチェックできます。

「ねんきん定期便」は、過去の保険料の納付実績や将来受け取る年金給付額がまとめられた重要な情報です。届くタイミングは、毎年その人の誕生月ですが1日生まれの人だけは誕生日月の前月送付になります。「ねんきん定期便」で注目したいチェックポイントは、これまでの保険料の納付実績の部分です。特に直近の加入状況は細かく記されているため、「加入もれがないか」についてしっかりとチェックしましょう。

なお「ねんきんネット」へログインし「ねんきん定期便」をペーパーレス化することも可能です。ただしペーパーレス化した場合でも35歳、45歳、59歳という節目には郵送されます。(提供:Incomepress


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