カードローンの返済は義務ですが、カードローンの債務者が死亡したら、その返済はどうなるのでしょうか。カードローンの債務者が死亡した場合の返済義務は、基本的に相続人に引き継がれます。

カードローンの債務は債務者の死亡によって「マイナスの資産」になる

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(画像=BBuilder /stock.adobe.com)

カードローンの債務者が死亡すると、カードローンの残債は「マイナスの資産」として残ります。

資産には、プラスの資産とマイナスの資産があります。

プラスの資産とは、以下のようなものです。

・土地
・住宅
・現金
・株券・債券
・金

マイナスの資産には、以下のようなものがあります。

・借金
・未払金
・税金

カードローンは借金であるため、マイナスの資産です。そのため債務者は、返済をしなければなりません。債務者が死亡しても、カードローンはマイナスの資産として残り続けます。

カードローンの債務者が死亡すると借金は相続される

カードローンは、債務者が死亡してもマイナスの資産として残り続けます。どのように残り続けるのかというと、債務者の相続人に引き継がれるのです。

相続といえば、土地や住宅などのプラスの資産を引き継ぐイメージがあるかもしれません。しかしプラスの資産だけではなく、マイナスの資産も相続人に引き継がれます。

つまりカードローンの債務者が死亡した場合は、相続人が債務者となってカードローンの返済義務を負うことになるのです。

相続人は特別なケースを除いて法律で決められており、それを法定相続人といいます。

法定相続人になれるのは、以下の人です。

・配偶者
・第1順位:子ども/代襲相続人(子どもが死亡している場合の孫)
・第2順位:両親
・第3順位:兄弟姉妹/代襲相続人(兄弟姉妹が死亡している場合の甥・姪)

配偶者は、必ず法定相続人になれます。その他は、自分よりも上の順位の人いなければ法定相続人になれるのです。

例えば被相続人に子どもがおらず、両親が生きている場合は両親が相続人になりますが、子どもがいれば両親は相続人になれません。

債務者の死亡によるカードローンの相続は拒否できる

相続は、「必ずしなければならないもの」ではないことをご存じでしょうか。カードローンのような「借金」を相続したい人はいないでしょう。相続を拒否する際に使える「相続放棄」と「限定承認」という制度を紹介します。

方法①:相続放棄

相続放棄とは、被相続人の財産や負債、その他の権利義務を一切引き継がない方法です。

相続は、以下の条件を満たせば放棄できます。

  1. 自分が相続人となって相続が開始されたことを知ったときから3ヵ月以内に
  2. 被相続人の最後の住所地を管轄とする家庭裁判所へ
  3. 相続放棄する旨を申述する

申述人は法定相続人で、放棄したい人が単独で行うのが決まりです。相続放棄をすることで、カードローンの返済義務はなくなります。ただし、プラスの財産の相続もできなくなってしまうことに注意しましょう。

方法②:限定承認

限定承認とは、被相続人の債務の多少が不明で財産が残る可能性がある場合に、相続によって得られる財産の限度で債務を引き継ぐ方法です。

厳密にいえばカードローンの相続を放棄したことにはなりませんが、マイナスの資産を減らす効果はあります。限定承認を利用するのは、財産が負債よりも少ないことが予測されるときです。

限定承認も相続放棄と同じように、以下の条件を満たすと実行できます。

  1. 自分が相続人となって相続が開始されることを知ったときから3ヵ月以内に
  2. 被相続人の最後の住所地を管轄とする家庭裁判所へ
  3. 限定承認する旨を申述する

相続放棄と異なる点は、相続人全員で申述しなければならないことです。相続人同士で意見が割れると、限定承認は利用できないことに注意しましょう。

相続放棄できない事例

相続放棄をすると債務者のカードローンの返済する必要はなくなりますが、相続放棄には「自分が相続人となって相続が開始されたことを知ったときから3ヵ月以内」に裁判所に申述するという決まりがあることに注意しましょう。3ヵ月が過ぎても相続放棄をしなかった場合、相続放棄をしたくてもできなくなってしまうのです。

ただし、相続放棄の条件は「自分が相続人となって相続が開始されたことを知ったときから」なので、自分が相続人となったことを知らないうちは時間が進まないことを覚えておきましょう。

カードローンの債務者が死亡したときの各金融機関の対応

カードローンの返済義務は基本的に相続人に引き継がれますが、カードローンによっては債務者が死亡したときの対応を定めているところがあります。

例えばオリックスクレジットカードローンでは、相続が開始されると直ちにカードローンの返済を求めることになっているのです。

もともと多くのカードローンが、オリックスクレジットカードローンのような対応をとっていました。しかし最近では、そのような対応がなくなりつつあります。

例えば三菱UFJ銀行バンクイックは、かつては相続開始にあたって貸越元利金などを支払うよう規定していました。しかし、平成30年にその規定を廃止したのです。現在は、相続開始後直ちに金銭的の支払いを求めるケースは少なくなっています。

相続したカードローンを支払わなかったときのリスク

カードローンの返済義務を相続によって引き継いだ場合は、必ず返済しなければなりません。返済を怠った場合は、以下のような不利益を被ります。

リスク①:信用情報が悪くなる

カードローンの返済義務を怠ると「延滞」となり、信用情報が悪化します。

カードローンに申し込むと、CICや日本信用情報機構などの信用情報機関に情報が記録されます。信用情報機関には顧客一人ひとりの支払い状況も送られるため、返済を怠っていることも記録されるのです。

返済が滞ったままだと以下のような不利益を被る、いわゆる「ブラックリスト」に入ります。

・クレジットカードを作れなくなる
・ローンを組めなくなる
・携帯電話などの分割払いができなくなる

リスク②:遅延損害金を支払わなければならない

期限までにカードローンの返済をしなかった場合は、遅延損害金を支払わなければなりません。遅延損害金とは、借金の返済が遅れたことによる損害への賠償金です。遅延損害金額は、以下のように計算します。

遅延損害金=延滞元金×遅延損害金利率÷365日(うるう年の場合は366日)×延滞日数

返済が遅れれば遅れるほど、高い遅延損害金を支払わなければならなくなるのです。

リスク③:カードローンの利用停止

カードローンの返済を怠ると、カードローンの利用が停止され、新たな借入や増額ができなくなります。カードローンの利用停止は、返済が履行されない限り続くので注意してください。

番外編!住宅ローンは相続しなくてもよい?

番外編として、住宅ローンの相続について解説します。

住宅ローンとは、住宅の購入費を金融機関から借りる仕組みのことです。住宅ローンの債務者が死亡した場合は、カードローンと同じように相続人に返済義務が引き継がれるのでしょうか。

実は、住宅ローンについては相続人に返済義務が引き継がれません。なぜなら住宅ローンを組む際は、団体信用生命保険に加入するからです。

団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者が死亡した場合にローンの残高を全額返済してくれる保険です。住宅ローンの債務者が死亡すると、団体信用生命保険による返済が実行されるため、相続人が返済する必要はないのです。

相続したカードローンはきちんと支払おう!

カードローンの返済義務は相続の対象ですが、相続放棄や限定承認によって返済義務を免れることもできます。

カードローンの返済義務を相続によって引き継いだ場合は、カードローン会社の規定にしたがって返済するようにしましょう。返済を怠ると信用情報に傷がつき、あらゆる不利益を被ることになるからです。

「返済が嫌なら相続放棄する」「相続したならきちんと支払う」を心がけましょう。

文・魚住 剛司
大学卒業後、大手生命保険会社に入社。個人への保険営業と資産運用コンサルティング業務に従事し金融・資産運用の基礎を学ぶ。1年間でお金や投資についての本を100冊以上読破し、資産を10倍以上に増やす。その経験を活かして初心者向けの資産運用方法など、お金についての情報発信を開始。現在は、金融専門のライターとして活動している。FP2級を保有。

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