米国のセキュリティトークン取引所「tZERO」は、株式情報をリアルタイムに配信する「Refinitiv (リフィニティブ)」への統合を発表。

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

Refinitiv​ (リフィニティブ)は、190か国以上の40,000以上の企業/組織と提携し、700 万以上の銘柄に関するデータを管理/提供しており、このことで世界各国における株式分析/調査を促進しています。

tZEROのCEOであるSaumNoursalehiは、「私たちの最も重要な焦点は、セキュリティトークン(デジタル証券)の採用を促進することです。本日の発表は、より多くの金融サービス専門家がRefinitivの堅牢なネットワークを通じてtZERO ATS市場データに簡単にアクセスできるようになり、セキュリティトークンの認知を拡大するのに役立つため、エキサイティングな出来事です」と述べています。

tZERO Marketsのローンチなどセキュリティトークン市場を牽引するtZEROは、デジタル資産と私募市場の相互発展に向けて大きな役割を果たしており、本稿ではセキュリティトークン市場の現状とその将来性について考察していきます。

目次

  1. セキュリティトークン市場の将来性
  2. セキュリティトークン市場の現状
  3. まとめ

セキュリティトークン市場の将来性

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(画像=STOnlineより)

tZEROの子会社であるtZERO Marketsは、ブローカーディーラーとして金融業界規制当局(FINRA)から承認を得ており、個人投資家はアプリを通じてtZEROでのセキュリティトークン取引を行えるようになりました。

自社で売買仲介/自己売買業務を行えるようになることで、より効率的な運営が可能となり、今後は直接上場による取り扱い銘柄の増加/ボストンセキュリティートークン取引所(BSTX)の開設などtZEROエコシステムの拡大が見込まれています。

最近では、セキュリティトークン発行プラットフォームとして日本でも知名度の高いSecuritizeが、セキュリティトークン取引所Securitize Marketsのローンチ計画を発表。

INX、TextureCapitalもセキュリティトークン取引所の開設を目指しているなど、インフラストラクチャーの整備が米国では行われています。

2020年のIPO市場は直接上場(ダイレクトリスティング)やSPAC(特別買収目的会社)のIPOで大型の資金調達を行い、その資金で成長企業を合併/上場する事例が確認されており、私募市場における取引所ビジネスを検討する上でも概念的な部分でその要素を取り入れることも必要であるとも考えられます。

IPOによる資金調達を行わずとも私募市場における資金調達で多くの資金を調達できる環境が整備されたことで、今後は私募市場における取引の活性化/流動性向上への機運が高まることが予想されます。

一方で、AirbnbやDoorDashといったテック系スタートアアップ企業のIPOは世間からも大きな関心を呼んでおり、構造的な合理性の追求に向けて市場の変革に向けた取り組みと従来市場との共存が今後10年では図られることでしょう。

デジタル資産が新たなアセットクラスとして機関投資家に受け入れられつつある現在において、セキュリティトークンのエコシステムは大きな可能性を秘めていると言えます。

私募市場の発展のみならず、金融機関によるブロックチェーン上での証券発行、不動産など希少価値の高い資産のトークン化など幅広い領域をセキュリティトークンエコシステムは担っており、セキュリティトークン取引所はその基礎基盤として市場の成長を支えていくと考えられます。

セキュリティトークン市場の現状

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2020年は、私募市場の流動性向上に向けてセキュリティトークン取引所を開設する動きが米国では確認されており、市場構造の合理化を目指す取り組みが進んでいます。

私募市場における機関投資家向けサービス事業者「TextureCapital」は、金融業界規制当局(FINRA)からブローカーディーラー/ATSの承認を得ており、CEOのRichard Johnsonは下記のように述べています。

「私募市場は混乱の危機に瀕しています。トークンの発行や二次取引などの基本的な機能はすでに開発されています。将来的には、DeFi(Decentralized Finance)の創造性を活用して、グローバル市場を再構築し、経済全体の資本フローを改善するという大胆なビジョンを実現します。」

1990年代からの規制緩和によって成長を遂げた米国私募市場は、2兆ドルの規模を誇っている一方、従来の株式市場とは異なり、多くの投資家が参加できるようなインフラストラクチャーの整備は限定的なものとなっていました。

近年では、機関投資家向けプライベートエクイティ取引プラットフォームNasdaq Private Market、Forge、ClearListの活用も行われており、デジタル資産と私募市場を繋ぐセキュリティトークン取引所の潜在的需要は高いと考えられます。

米国企業とファンドは、2019年に「レギュレーションD」に準拠して1.5兆ドルを調達していますが、ほとんどの私募証券は流通市場で取引されていません。

そのことからセキュリティトークンの発行から流通までをシームレスに統合するエコシステムの構築をtZERO、Securitize Markets、INX、TextureCapitalなどが目指しているのが現状です。

中国建設銀行/ソシエテジェネラルなど金融機関によるブロックチェーン上での証券発行やINXのダイヤモンドスタンダードコインに代表される希少価値の高い資産のトークン化計画にも着目し、市場全体をより包括的に捉える市場戦略が各企業には求められています。

まとめ

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デジタル資産はビットコインに代表されるように絶対的な希少性を有し、量的緩和による法定通貨の価値毀損が進む現在においてはインフレヘッジの観点から大きな支持を集めています。

実際にベネズエラではピザハットのピザを購入するのにビットコインが用いられることが認められ、PayPalも決済手段としてビットコインを法定通貨に自動変換し、決済できる仕組みを構築することで、ボラティリティの課題を解決し、店舗もビットコインではなく、法定通貨で売上を計上できるようになる計画を有しています。(現在は出金制限がかけられています)

セキュリティトークンは資産のデジタル化を法規制に準拠した形で実現し、金融機関での証券発行にブロックチェーンを用いる場合にも概念的には証券のデジタル化として1つのエコシステムを形成すると考えられます。

STO=資金調達のみならず、直接上場によるセキュリティトークン取引所での私募証券の取引など様々な事例が今後は創出されることが予想され、デジタル資産と私募市場の相互発展を促進することでしょう。(提供:STOnline