2020年9月、第99代内閣総理大臣として菅義偉氏が就任しました。7年8ヵ月続いた歴代最長の第二次安倍晋三政権が幕を閉じ、新政権が誕生したのです。日本のかじ取りを行う内閣総理大臣の仕事は多大で、また責任も重大です。そんな内閣総理大臣の報酬は一体いくらくらいなのでしょうか?
目次
内閣総理大臣は「国家公務員」?
内閣総理大臣は、国家公務員の“特別職”という扱いです。その給与は、「特別職の職員の給与に関する法律」によって定められています。そして、その額は一般職の国家公務員の給与改定に応じて、適時改定されています。なお、内閣官房内閣人事局「国家公務員の給与(令和2年版)」によれば、特別職に該当する職員は29万8,530人いるようです。
令和元年から、内閣総理大臣は月給201万円
内閣総理大臣の給与は月給制です。月給の額は、201万円です。これに、地域手当として月額40万2,000円(月給の20%)が加算されます。また年2回支払われる期末手当というものがあり、年間で月給の3.4ヵ月分が支払われます。これらの合計額にいくつかの調整が行われ、実際に支払われる金額は年間で約4,049万円となっています(2020年10月現在)。
さらに、「文書通信交通滞在費(文通費)」という手当が総理大臣を含むすべての国会議員に支給されています。これは毎月100万円を非課税で受け取ることができるもので、現状、使途を公開する必要がありません。もちろん経費に充てるために支給される手当ですが、単純に合計するなら年間で最大1,200万円が、給与とは別に内閣総理大臣の手元に入ることになります。
また、これも内閣総理大臣に限ったことではありませんが、国会議員には交通費に関して優遇措置があります。JRのほぼ全線が無料で乗れる“特殊乗車券”と、選挙区間の往来の際に使用できる“航空券引換証”の支給があります。
現在は給与の一部を国庫に返納している
野田政権下の2012年、東日本大震災の復興財源を捻出するために、2014年までの時限措置として「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」で内閣総理大臣は3割、閣僚や副大臣は2割、政務官は1割の給与を国庫に返納することを決定しました。第二次安倍政権下では、臨時特例終了後も行財改革目的で自主的に同額の国庫返納を継続していました。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、それらの返納額とは別に、国会議員の歳費が2020年5月から1年間、2割削減される法律が定められました。これを受けて、内閣総理大臣や閣僚も国会議員の減額分と同じ額の25万8千円を1年間返納することを当時の安倍政権は決定しています。これらの返納を菅総理も踏襲するなら、文通費を除く菅総理の年収は約2,524万円程度となりそうです。
▽2020年の総理大臣の年収試算
・年間給与額:約4,049万円
→行財改革目的の国庫返納額(年間給与額の30%):約1,215万円
→新型コロナウイルス感染拡大に伴う国庫返納額(25万8,000円×12ヵ月):約310万円
=約2,524万円
各国の首脳の年収と比べてみる
米国大統領の年収は、40万ドルです。執筆時点の為替レート(106円)で換算すると、約4,240万円となります。日本の総理大臣より若干多いものの、ほぼ同額といえます。
しかし厳密にいえば、米国大統領にもそれに加えて5万ドルの経費用手当てと、10万ドルの非課税の旅費手当、さらに1万9,000ドルの娯楽費が支払われます。それらもすべて合計すると約4,971万円となり、文通費も含めた日本の総理大臣の合計受取額よりも逆に若干少なくなります。ただしもちろん、こうした比較では為替レートによって多少の変動があります。
ちなみに、現在のトランプ氏は大統領としての給与は1ドルしか受け取らないと宣言して選挙を戦いました。実際、トランプ氏は様々な団体などへの寄付を行っているようです。
その他の国の首脳の給与については、2020年9月6日付の日本経済新聞でも報じています。それによれば、ドイツの首相は約3,258万円、英国首相は約1,979万円、韓国の大統領は約1,891万円だといいます。中国の国家主席では約212万円です。ただし、各国それぞれに物価水準が違うことはもちろん、報酬以外の首脳の特権などにも違いがあると思われるため、一概に比較はできません。とはいえ、表面的には、日本の総理大臣は比較的高給であるといえそうです。
民間企業の役員報酬は総理より高いのか
東京商工リサーチの集計によると、日本の上場企業の役員のうち、2020年3月期に1億円以上の報酬を得た人の数は485人に上りました。過去最高を記録した前期からは100人ほど減少しているとはいえ、日本企業でも高額の報酬を払う文化が根付いてきたことを感じさせます。
1位は、住友不動産の元会長である高島準司氏で、22億5900万円が支給されました。同社では取締役の報酬の5割前後をプールし、退職金などに充てています。高島氏の急逝にともない、退職時報酬として支払われたようです。これは多少特別な例であったとしても、3億円以上の報酬を受け取った役員は48人もいました。
さらに、デロイト・トーマツが2019年7月~9月に行った別の調査によると、売上高1兆円以上の企業における社長の報酬総額の中央値は9,855万円だったといいます。こうした社長の報酬は業績などによって大きく変動するケースも多く、内閣総理大臣のようにほぼ安定しているわけではありません。それでも、業績の悪くない大企業の社長ともなれば、日本の総理の2倍以上の報酬を得ていてもおかしくない状況となっていると見られます。
内閣総理大臣の年収を高いと見るか、安いと見るか
日本の内閣総理大臣の年収は、他国の首脳と比べると若干高めといえるかもしれません。しかし、日本の民間の大企業の役員などと比較すると、かなり低いという印象は否めません。しかも、日本企業の役員報酬は、欧米の企業と比べるとまだかなり低めであるところは衆目の一致するところです。
日本の内閣総理大臣の仕事は重責であり、その日常も分刻みの過密なスケジュールです。一挙手一投足は常に注目され、ストレスも多い仕事だろうとも想像できます。そうした仕事の報酬が、4,000万円強の年収では少ないのではないかと感じる人もいるかもしれません。
一方で、内閣総理大臣の権限は非常に強力です。日本という大国のかじ取りを担えることは、報酬の多寡など関係ないほどにやりがいのある職業なのかもしれません。また、内閣総理大臣の報酬にはなり得ませんが、内閣には「内閣官房報償費」、いわゆる「官房機密費」というものがあります。内閣官房長官が必要だと判断すれば使える経費で、その使途は公表されません。官房機密費は、毎年10億円が計上されているとみられます。自身の裁量で使途が決められる大きな資金枠を、内閣総理大臣は持っているともいえます。
日本の内閣総理大臣の仕事には大きな重責がある一方、大きな権限も付随します。それらのバランスをどのように考えるかで、年収として高いのか、はたまた低いのか、見方はわかれそうです。(提供:JPRIME)
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