2018年度税制改正で、今年分からサラリーマンの不動産オーナーの納税額が増えるかもしれません。「一律38万円」が当たり前だった基礎控除や配偶者控除が変わったからです。今回は増税の内容を見た後、3つの節税策をご紹介します。
今年から所得税が大幅改正…稼いでいるサラリーマン大家は増税に
サラリーマン不動産投資家は、今年分から納める税金が増えるかもしれません。2018年の税制改正が2020年分の所得税から適用されるからです。改正内容は高所得のサラリーマン向けが中心です。高所得の人ほど課税される所得額が増えることになります。
今年はコロナ禍で賃貸契約の解約や減額、支払の猶予で家賃収入が減ったオーナーも多いかと思います。不動産所得が赤字なら損益通算で多少、増税の痛みが和らぐかもしれません。一方、賃貸事業へのコロナの影響が小さく、比較的安定的に収益を得られていたオーナーには、増税が重くのしかかる可能性があります。
税負担を重くした3つの税制改正
サラリーマンオーナーの税負担が今年から大きくなる主な原因は、次の3つの改正です。
給与所得控除が下がった
1つ目の原因は給与所得控除が全体的に下がったことです。給与所得控除とは給与所得を計算する際、給与年収から差し引く項目です。「サラリーマン経費」とも言います。
例えば、給与年収360万円に適用される給与所得控除は昨年まで126万円でしたが、今年から116万円になりました。つまり、課税される給与所得が10万円増え、納税額もその分大きくなります。
【参考】給与所得控除(国税庁)
基礎控除額が段階的に減った
2つ目の原因は基礎控除の大改正です。2019年分までは、所得額に関係なく誰でも一律38万円を所得の合計額から差し引けました。しかし2020年分以降、基礎控除額は合計所得金額に応じて変動します。具体的には次のようになります。
【納税者の合計所得金額】 【基礎控除の額】
2400万円以下 48万円
2400万円超2450万円以下 32万円
2450万円超2500万円以下 16万円
2500万円超 0円
合計所得額2500万円を超えると基礎控除額が0円になってしまいます。給与所得額と不動産所得の合計額が2500万円を超えるオーナーは去年よりも38万円分、課税所得が上がります。適用される所得税率が40%、住民税所得割の税率が10%だとすると、19万円も納める税金が増えるのです。
配偶者控除の額が減る
3つ目の原因は配偶者控除額が高所得世帯ほど減ってしまう点にあります。昨年まで、合計所得金額1000万円以下なら配偶者控除は一律38万円を所得の合計額から差し引くことができました。
しかし今年から、本人の合計所得額に応じて控除額が決まります。配偶者の年齢が年末時点で70歳未満のケースだと、次のようになるのです。
【納税者の合計所得金額】 【配偶者控除の額】
900万円以下 38万円
900万円超950万円以下 26万円
950万円超1000万円以下 13万円
「給与所得+不動産所得」が980万円の人なら、25万円分所得額が上がります。適用される所得税率が33%、住民税所得割の税率が10%なら年間11万円弱の増税です。
増税に負けない節税方法
こういった改正で納税額が増えるのは困ったものです。ここで気になるのが節税対策です。次の3つを活用すれば、増税の影響を小さくできるはずです。
所得金額調整控除を活用する
1つ目の節税策としてお勧めしたいのが所得金額調整控除の活用です。この制度は今年から始まります。給与年収が850万円を超える人で次の要件に該当するなら、「(給与年収額-850万円)×10%」を給与所得から差し引ける仕組みです。
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 本人・同一生計配偶者・扶養親族のいずれかが特別障害者である
なお、給与年収1000万円を超えると、控除できる金額は一律15万円になります。しかしこの控除は扶養控除と違い、共働き夫婦が同時に適用を受けることができます。また、扶養親族である子が16歳未満でも控除の対象になります。
iDeCo
2つ目の節税策として有効なのがiDeCo(個人型確定拠出年金)の活用です。iDeCoには次の3つの節税効果があります。
- 1年間に支払った掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除できる
- 運用時の配当益・譲渡益はすべて非課税
- 受取時は「公的年金等の雑所得」か「退職所得」のいずれかになるため税負担が小さい
ただ、会社からの退職金と併せると、退職所得の節税効果が薄れてしまうかもしれません。しかし、「老後2000万円問題」も合わせて考えると検討するだけの価値はあります。
ふるさと納税
3つ目の節税策として考えたいのがふるさと納税です。ふるさと納税は、地方自治体に対する寄附制度です。一定額を寄付すると「寄附額-2000円」分、所得税・住民税を抑えることができます。他、受け取る返礼品も魅力の一つです。「ふるさと納税は節税にならない」という声もありますが、「生活に必要な肉や米を寄附で買い、『買った金額-2000円』分納税額を抑えられる」と考えれば節税だと言えるのです。
とはいえ、無制限に寄附すればその分節税できるわけではありません。所得税の寄附金控除、住民税の寄附金税額控除にはいずれも上限額があります。
その一方、節税のタイミングも節税額も納税者の気持ち1つで自由に選べるという長所があります。いったん加入すると脱退が難しいiDeCoや節税額をコントロールできない調整控除に比べれば柔軟性に富んでいます。
高所得サラリーマンを狙い撃つかのような税制改正は困ったものですが、対策次第で納税額を抑えられます。この3つをご自身に合わせて活用してみてください。(提供:YANUSY)
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