空室リスクを軽減するマンション経営といえば、入居者ニーズのある東京23区の物件を選ぶのがセオリーです。一方、最近では名古屋のマンション経営にも注目が集まります。たとえば、2020年9月30日付の日経新聞では、コロナ禍でも名古屋市中心部の新築マンション販売の好調ぶりを伝えています。なぜ今、名古屋のマンションが「買い」なのでしょうか。その理由を探ります。

リニア開業が名古屋のエリア価値を高めている

不動産投資
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

マンション経営の対象エリアとして、名古屋がクローズアップされている要因は、やはりリニア中央新幹線の開業が大きいでしょう。超電動方式というグローバルで見ても画期的な技術を生かしたリニアは世界から脚光を浴びています。

リニアが開業すれば名古屋の知名度が一気に高まり、仮にコロナが収束したとすれば、大きなインバウンド効果が期待されます。それと同時に、東京圏と名古屋圏、さらに今後のリニア延伸で大阪が一体になることで、世界最大の巨大経済圏「スーパー・メガリージョン」が創出され、長期的な経済効果も見込まれます。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算によると、リニア開業による経済効果は品川−名古屋間で10兆円超、大阪延伸で17兆円と巨額です。すでに、名古屋駅周辺で数多くの開発プロジェクトが進められています。その効果で名古屋市の不動産価値が高まっているのです。

名古屋圏では、交通インフラ・複合施設・エンタメ施設の開発が進む

ただ「リニア開業の影響で名古屋が活況だ」といっても、他エリアの個人投資家からすると、その勢いを実感しにくいのではないでしょうか。具体的に、名古屋でどのような開発プロジェクトが進んでいるのかをチェックしてみましょう。

名古屋圏で進む開発1:交通インフラ

リニア中央新幹線の乗降駅である名古屋駅を中心に、鉄道網のみならず、交通網の整備も急ピッチで進んでいます。これにより、名古屋駅周辺がリニアで活性化し、交通量が急増してもモノやヒトのスムーズな移動が期待されます。

具体的には、名古屋駅近くの黄金インターチェンジや新洲崎ジャンクションの整備、名古屋最大の繁華街、栄近くのインターチェンジの新設手続きなどが進んでいます。

名古屋圏で進む開発2:複合施設

名古屋市のショッピング施設・複合施設の新規オープンやリニューアルは、かなりの数になります。日本を代表するデベロッパーの大型開発としては、三菱地所グループが栄エリアで地下4階・地上36階建ての複合施設(延べ床面積9万9,500メートル)の開発協議を進めています。供用開始は2026年目標にしているようです。

久屋大通公園北エリアでは、三井ショッピングパーク「RAYARD Hisaya-odori Park」が2020年9月に開業。施設周辺の公園(南北1km)と施設を合わせて運営・管理するPark-PFI制度では日本最大級の規模となっています。ショッピングや飲食だけでなくスポーツ、コミュニケーションといった幅広いコンテンツを提供する新たな名古屋のシンボルとして期待されています。

地元で注目度の高い開発としては、歴史ある百貨店「丸栄」跡地の食をテーマにした大型商業施設のプロジェクトがあります。新型コロナの影響で当初予定していた2020年末の開業が延期になっていますが、2022年2月以降には開業する見通しとなっています。

名古屋圏で進む開発3:エンタテイメント施設

これは市中心部の開発ではありませんが、名古屋インターチェンジから高速利用で約10分の位置にある長久手市に開業する『ジブリパーク』も名古屋圏の経済を盛り上げるエンタテインメント施設として期待されています。

施設内は、敷地面積約7万ヘクタール、5つのテーマから構成されますが、2022年秋の時点では、このうち、となりのトトロをモチーフにした「どんどこ森エリア」などの3エリアを先行オープンする予定になっています。

名古屋市中心部では人口増加も見込まれる

一般的に、賃貸マンションの資産価値が上昇する要因としては「周辺エリアで大型開発が行われること」、「将来の人口が安定し増加すること」といわれます。これにより入居者ニーズが高まり、インカムゲイン(家賃収入)と キャピタルゲイン(売却益)が有利になるわけです。ここまでの内容で2つの要因のうち、「大型開発」については申し分のない環境であることがご理解いただけたのではないでしょうか。

次に、もう1つの要因である「将来の人口」をチェックしていきます。この記事の冒頭で参考にした、名古屋市のマンション価格の好調ぶりを伝える日経新聞の記事では、価格が上昇傾向にあるエリアとして、中区・東区・中村区などを具体的に挙げています。この3区のうち、名古屋随一の繁華街の栄を抱える中区の今後20年間の人口予測を確認してみます。

予測人口2020年との比較
2020年9万1,674人
2025年9万6,674人+5,000人
2030年9万9,410人+7,736人
2035年10万1,394人+9,720人
2040年10万3,666人+11,992人

出所:名古屋市「将来人口推計」

上記の通り、中区は今後20年間ずっと人口が増え続けています。特筆すべきことは、20年間で(2020年と比較して)10%超という高い人口増加が見込まれている点です。当然ながら、入居者ニーズが持続・上昇する可能性が高いことから、長期的に安定したマンション経営をしやすい環境といえるでしょう。東京都の中心部に匹敵する魅力を備えたエリアであることがわかります。

投資エリアとしての名古屋エリアに死角はないのか

ここまでは、名古屋エリアのプラス材料にフォーカスしてきました。ここから先は、名古屋エリアに投資をするときのリスクにも目を向けていきたいと思います。

名古屋のリスク:リニアの開業予定日がずれ込む可能性

名古屋エリアのマイナス材料としては、もともと2027年を予定していたリニア開業予定日がズレ込みそうなことです。

原因は、静岡県内の8.9キロの工区が手つかずのためです。トンネルがつくられると周辺の水量が減り、名産品である茶栽培に影響が出ることが懸念されています。2020年10月、静岡県の茶農家100人以上がリニアの静岡県内での工事差し止めを求めてJR東海を提訴しています。

名古屋エリアに投資を検討している人からすれば行方が気になると思いますが、他の工区では工事が進んでいるため近い将来、リニアが開業するのはほぼ間違いないでしょう。ただ、「リニア開業がいつになるか」は名古屋経済にとって影響が大きいため、注視していく必要があります。

名古屋のリスク:コロナ禍で市全体の地価は下落傾向

他の都市と同様、新型コロナの影響は名古屋市の経済にとっても逆風となっています。基準地価(7月1日時点の地価)で見ると、2019年の商業地の地価は全16区が上昇しましたが、2020年は14区が下がりました。

ただこの新型コロナによる逆風は、他の大都市や地方都市も同様の傾向です。収束すれば、名古屋経済が一気に勢いを吹き返す可能性はあります。

名古屋でマンション経営をするなら中心部物件がベター

ここでは、名古屋のマンション投資環境をプラス面とリスクの両方から見てきました。ひとつの考え方として、コロナ禍が収束してからだと他の投資家との物件買い付け競争が激化するため、今のうちに投資を実行する選択があります。

ただコロナ禍の影響は不透明な部分もあるため、エリア選びについては慎重なスタンスも必要でしょう。名古屋の賃貸マンションなら何でも買いではなく、記事内で触れたような資産価値が高まっている市中心部の物件にフォーカスするのが賢明です。(提供:Dear Reicious Online


【オススメ記事 Dear Reicious Online】
40代からの将来設計。早いほどおトクなマンション経営
マンション経営の物件選び!初心者がまず知っておきたい必須のポイント
少子高齢化社会が不動産の可能性に与える影響
「働く」だけが収入源じゃない 欧米では当たり前の考え方とは
実は相性がいい!?不動産×ドローンの可能性