本記事は、永長淳氏の著書『トラブル不動産SOS 〝売れない″を〝売れる″に変えるノウハウ』(ロギカ書房)の中から一部を抜粋・編集しています。

別荘
(画像=PIXTA)

使用頻度が少ないセカンドハウスの売却。

※「トラブル不動産SOS 〝売れない″を〝売れる″に変えるノウハウ」では具体的な事例をもとに、“売れない”を“売れる”に変えるノウハウをお伝えします。

静岡県熱海市(リゾートマンション・維持費が高い・仲介)

【物件概要】

  • 所在‥静岡県熱海市
  • 種別‥居宅
  • 権利‥所有権
  • 概況‥JR最寄り駅から徒歩25分圏内。専有面積約20坪強。

【経緯】

T氏(60代)は2年前に、セカンドハウスとして知人から熱海市のマンションを購入しました。初年度は夏場に5回ほど利用しましたが、翌年は回数が減り3回となり、今年はまだ利用していません。年間の使用回数からホテルを利用する方が良いと考え、売却し換金することにしました。

【課題】

バブル崩壊後、全国的にリゾート地の需要が減りました。熱海も同様でしたが、昨今インバウンドの影響から人気が戻りつつあります。

本件マンションは相模湾の前に位置していて、夏には目の前で熱海海上花火大会を見られます。マンション内には駐車場が完備され宿泊者用に貸し出しています。

本件マンションはT氏のようにセカンドハウスとして利用している人もいれば、環境や生活面、そして都心へのアクセスが良いことから自宅として住んでいる人も多く見られます。

フロント業務は日中だけですが管理員は常駐しており、マンション内では24時間入浴可能な温泉大浴場があります。これらを維持管理していく費用として、毎月管理費等が4万円強徴収され、専有面積の平米単価では600円を越えています。

需要が見込める地域とマンションではありますが、月々の支出が大きい点が所有するうえでのハードルとなります。

そして昭和40年代に新築された本件マンションは、今まさに大規模修繕工事に着手しているところでした。

【解決への道】

当社はT氏より、購入価格や支払った諸経費を含めてマイナスにならないように売却したいとの依頼を受け販売に協力します。

T氏の自宅には地元の仲介会社から、限定的なお客様がいるので売却して欲しいといったダイレクトメールが定期的に多数届いていて、そこには具体的な希望価格も記載してあります。

熱海の人気が徐々に戻り始めているとはいえ、まだ相場が上向いているわけではないことや、マンション内や周辺の取引事例などから成約が見込める価格を説明します。また、具体的な希望価格をもつ購入者が実在するならば、一度そこに記載された価格で販売活動し反応を見てみよう、ということで販売価格を決定します。

セカンドハウスとして利用しているままなので、いざ販売活動を行う際には、

  • 残置物等の撤去
  • ハウスクリーニング
  • 内覧時の鍵対応

これらを検討する必要があります。

T氏には、最後に夏の花火大会を見てから退去するとの意向がありました。

新たに住むことになる買主が自身でリフォームする可能性があるので、個人であるT氏が大がかりな改修を行う必要はないと提案します。

  • リビングダイニング家具一式
  • 数人が泊まれる寝具一式
  • その他生活用品多数

これらの撤去費用とハウスクリーニング、そして一部補修で約20万円強の見積もりを見せ、理解してもらったうえで、退去直後から着手できるよう手配します。

管理人が常駐しているので、挨拶と今後の販売計画を説明します。案内などの日程が決まったら連絡するので、仲介会社へ鍵を手渡すようお願いし、鍵一式を預けることにしました。

【結果】

本件マンションの部屋タイプは、本件と同じ20坪強とその半分の10坪強の2種類あります。20坪強のタイプが売却に出ることは少ないようで、問い合わせや内覧希望が定期的にありました。しかし、いざ具体的に購入したいという話には至らないまま3か月が経過します。

T氏と今後の販売契約について打ち合わせをします。

  • 定期的に内覧がある
  • 価格を変更することが売却に直結するわけではない
  • 早期売却には2~3割変更する必要がある

これらを説明し、もう少し様子を見ることにします。

4か月目に内覧したお客様A氏(50代)から購入申し込みがありました。

価格面で交渉がありましたが、これまで価格を提示した具体的な話がなかったこと、このまま活動を続けてみても高値を模索できる確証がないことをT氏には説明し、了承をもらいます。

A氏は本件マンションの大規模修繕工事に携わっていて、マンションについては詳細に理解していました。そのため、価格交渉がまとまってからは契約、引き渡しまでスムーズに進み、無事に取引を完了しました。

結果、T氏は約1割強の値引き価格交渉を受けましたが、現在でもその成約価格からそれほど相場に変動はないようです。

【対策】

3か月間という媒介契約期間を一つの目安として、仲介会社はお客様に対し販売活動の提案を行います。当初は高値の模索で、流通相場の1割程度でも割高に販売価格を設定し活動を行うことがあります。しかし具体的な引き合いがない場合は、成約しやすい価格帯へと徐々に価格変更します。

具体的な購入申し込みになると、5%程度から値引き交渉があります。そのため5%以内で価格変更しても集客面では意味がないことが多く、10%前後から効果があります。

これだけインターネットが普及しているので、仲介会社もレインズだけではなく、ポータルサイトへの掲載により集客を図ることが一般的になっています。一般消費者は販売している物件の情報が簡単に入手でき、流通相場も把握しやすくなりました。

そのため、価格変更のタイミングや、徐々に価格を下げるということが、一般消費者にどのように捉えられるかを考える必要が出てきています。

  • 長く売れていないと、売る気がないと思われる
  • 徐々に価格を下げると、まだ下がると思われる
  • 大幅に価格を下げると、売り急いでいると思われる

本件においては具体的な購入申し込みには至っていませんでしたが、3か月経過時点においても定期的に内覧希望がありました。

結果的にはタイミングよく具体的な案件となりましたが、実際はこの時点で、価格変更についてどう対応するかが重要だったと考えています。

T氏は売り急いでいなかったということもあり、もう少し様子を見るという判断が逆に高値の模索に結びついたわけです。

トラブル不動産SOS 〝売れない″を〝売れる″に変えるノウハウ
永長淳
株式会社EINZ(アインズ)代表取締役。1978年、北海道帯広市出身。大学卒業後、東証一部大手不動産仲介会社に入社。10年勤務後、転職。2012年不動産会社を設立し独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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