家賃収入などで不労所得を形成できるのが魅力の不動産投資。しかし、収入が増えてくると所得税の税率も上昇し、悩まれる方も多いのではないでしょうか。

そこで選択肢として挙がるのが「法人設立による節税」です。本項では、不動産投資において法人を設立するメリットや節税のポイントについて解説します。

法人と個人の税率比較

法人設立,節税
(画像=jo-panuwat-d/stock.adobe.com)

不動産投資で、法人化を行う利点として「税率の優遇措置」が挙げられます。日本では、個人の所得税は収入に比例して大きくなる累進課税方式となっており、税率は5%から最大で45%と、所得によって課税額が変わってきます。

年間所得が4,000万円を超えると、所得税率は45%となります。仮に4,000万円の収入を得たとしても、個人であれば1,800万円の納税をする必要があるのです。

一方で、法人の場合は実質的な税金の負担率である「実行税率」で計算されます。実効税率とは法人税、地方法人税、法人事業税、法人住民税を合わせた税率で、個人に課せられる所得税よりも少ないケースがあります。

東京都を例にすると、法人の実効税率は年間の法人所得が800万円を超えた場合に課税される33.5%が天井の値となります。

個人の場合、所得税は「年間所得900万円以上、1,800万円以下は33%」、「年間所得1,800万円以上、4,000万円以下は40%」です。そのため、年収が1,800万円を超えたあたりからは、法人を設立した方が税率の面で優遇措置を受けることができると言えます。

税率優遇以外の法人設立のメリット

前述した税率の優遇以外にも、法人を設立するメリットが存在します。以下より、個別にご紹介します。

資金が調達しやすくなる

法人を設立すると、不動産投資に必要な資金調達がしやすくなるメリットがあります。個人投資家の資金調達方法としては、人から借りる以外は、ローンを組んで金融機関から借入を行うしか方法がありません。

一方で、法人化を行えば「株式を発行して資金を集める」、「ソーシャルレンディングを利用する」など、資金調達の選択肢が広まります。

また、金融機関からの融資に関しても、審査が個人に比べ通りやすい、ローンの金利の引き下げ交渉が通りやすい、融資の上限額が増えるなどの利点があるのです。

個人の場合、ローンの完済時の年齢制限が設けられますが、法人の場合にはそういったケースは発生しません。

そのため、リタイア後の資産運用として不動産投資を検討している方などは、法人化するメリットが大きいと言えます。

損失を翌年に繰り越せる

法人を設立しておけば、不動産投資で赤字が発生した場合に、繰越期間が個人の場合に比べて長いこともメリットです。損失の繰越が可能な期間は、個人は3年、法人は10年となっています。

翌年の売上が黒字であった場合、繰越した赤字分で黒字分の収益を相殺し、所得税を抑えられます。不動産投資は動く金額も大きいので、赤字金を長期に渡って繰り越せる点に大きな節税メリットがあります。

また、法人は決算日を自由に設定できる特徴もあります。法人では決算から2ヶ月後に税金の納付期限がやってきますので、資金に余裕がある時期に決算を行うと、キャッシュフローに余裕を持たせた納税ができるのです。

不動産投資では入退去や売買が活性化する時期が決まっていますので、決算のタイミングも決めやすいと言えます。

物件を短期売買する投資にも向いている

不動産を購入して短期で売却して利益を得る運用方法を検討している場合、個人よりも法人で行った方が節税メリットを得ることが可能です。

個人で不動産を売買するとなると、利益は所得税とは別の申告分離課税として扱われます。5年以内に売却すると、譲渡金に対し所得税30%、住民税9%、復興特別所得税2.1%が課せられます。

法人の場合は分離課税が適用されませんので、課税額は不動産の譲渡金に対し法人税率をかけた金額となります。資本金1億円以下の法人の場合、法人税率は800万円以下で15%、800万円以上で23.2%ですので、短期投資を個人で行うケースに比べて節税が可能です。

ただし、個人で長期投資を行った場合は税率が所得税15%、住民税5%、復興特別所得税2.1%となります。

法人設立の注意点

法人化すると節税メリットを多く得られる一方、いくつかのデメリットも発生します。法人化の注意点について個別に見ていきましょう。

青色申告ができない

個人事業主の場合、確定申告の際に青色申告を行うと、控除を最大65万円まで受けることができます。法人を設立し、不動産投資で得られた利益を法人所得として換算すると、この税制上の優遇措置を受けられなくなるのです。

家賃収入などの利益があまりない場合、上記の青色申告控除を受けて所得税の納付額を減らした方が、全体的な支出を抑えられる可能性があります。

以上の理由から、不動産投資は初心者の場合、法人化は利益の目処が立ってからにした方が賢明です。

法人所得を自由に使えない

個人で不動産投資を行う場合、家賃収入などから諸経費やローンの返済金を差し引いた余剰金がそのまま所得となります。

ところが、法人を設立すると、不動産収入は法人の剰余金として扱われるのです。自由に使うためには、そこから給料として一定額を自分に支払う形をとらなければなりません。

具体的な法人での節税対策

法人を設立すると、節税メリットが大きいとご説明しました。以下より法人で実施できる具体的な節税対策についてご説明します。

所得を給料として親族に分配する

法人を設立し、法人所得を給料として親族などに再分配すると節税が行えます。会社の不動産所得は、親族に分配してしまうと贈与税が課せられます。しかし、親族に不動産投資事業の一部を手伝ってもらい、働いた分を給料として支払えば、合法的に所得を分散可能です。

前述の通り、個人の所得税は累進課税となっておりますので、不動産収入が増えてきたら法人を設立し、親族に給料を支払った方が節税効果が高いのです。

あくまでも業務に見合った給与を支払う必要があり、親族の所得が増えすぎると所得税や住民税も増えていきますので、バランスを保つことが大切です。

法人化すると、所有物件を親族に残す際に相続税がかかりません。自分にもしものことがあった場合、なるべく多くの資産を親族に残したいと考えている人は法人化に向いていると言えます。

不動産投資でかかった支出金を経費として計上する

不動産投資にかかった費用を経費として計上すると、法人所得を抑え節税が可能になります。経費として計上できる費用として、以下が挙げられます。

・自分を含めた社員への給料
・オフィスの賃料
・業務中の移動費や飲食代
・広告宣伝費
・法人向け生命保険の保険料
・社用車の購入費用
・レンタルサーバー代
・物件の維持管理費用
・書籍購入費やセミナー代

まとめ

不動産投資で法人化をすると、税率の優遇をはじめとする節税メリットを受けられます。しかし、サラリーマンの方は副業として法人を設立した場合、勤めている会社の規約によっては制裁を受ける可能性もあります。

事前に会社の規約を確認するなどして、トラブルを避けるようにしましょう。(提供:Dear Reicious Online


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