ピーバンドットコムが運営するEC(電子商取引)サイトで扱うプリント基板は、電子機器に不可欠な基幹部品の一つです。「1-Click見積」「価格の安さ」「納品のスピード」など、プリント基板業界の既存の概念を覆すピーバンドットコムは、今後ますますの成長が期待されます。今回は同社の代表取締役社長、田坂正樹さんにビジネスの詳細や成長性、今後の事業展開などについてお話をうかがいました。
識者プロフィール
1971年東京生まれ。1995年、FA機器や金型などを手掛けるミスミ(現ミスミグループ)に入社。2000年にWEB広告などを手掛けるブレイク・フィールドの会社設立に参画する。2002年、現在の会社の前身となるインフローを設立(2012年に現社名に変更)。2003年にはプリント基板ネット通販サイト「P板.com」を本格的にスタートさせる。会社を2017年に東証マザーズ、2019年には東証1部上場を果たすなど順調に会社を成長させている。
全ての電気製品に搭載するプリント基板を「在庫なし」で製造
馬渕 本日はよろしくお願いします。まず、田坂社長がピーバンドットコムを創業するに至った経緯からうかがいたいとおもいます。FA(工場自動化)機器部品や工具などを手掛けるミスミのカルチャーが田坂社長の仕事観のベースになっていると耳にしたのですが、なぜ「プリント基板をネットで気軽に調達できる」ビジネスを起業されたのでしょうか。
田坂 新卒で入社したのがミスミでした。ミスミでは2つの新規事業に携わり、いわゆるBtoB(企業向けビジネス)のカタログ通販のマーケットがあることを学びました。大学生時代から、将来は起業をしようと思っていたのですが、ミスミで学んだことをeコマース(電子商取引)にシフトさせ、商材をFA部品からプリント基板にシフトさせたのがピーバンドットコムというわけです。
ミスミで扱っているようなネジや金型のような商材は大きな倉庫が必要になります。そうすると在庫のコストがかかってしまうため、BtoBにおいて起業する際に〝在庫を必要としないビジネス〟がないか考えていたのです。
馬渕 在庫がないことがポイントだったのですね。そもそも、プリント基板は在庫を抱えないビジネスモデルなのですか?
田坂 はい。たとえば、一般的なプリント基板メーカーは基板の図面をもらってから製造しているため、プリント基板自体の在庫を抱える必要はありません。ただ、この業界にはネット通販の形式でやっている会社がなかったんですよ。特にプリント基板に強烈なビジネスチャンスがあったわけではなく、ベンチャーとして起業する時のリスクが少なかったんです。
馬渕 リスクが少ないビジネスモデルが御社の強みのひとつになるわけですね。
田坂 そうです。図面をもらってから作り始める「オーダーメイド製品」であるがゆえに、在庫を抱える必要がないことは強みですね。
馬渕 製造業というと在庫を抱えるイメージがありますが、必ずしもそうではないのですね。もう少しプリント基板がどんなものかイメージできるように、プリント基板がどのようなものに搭載されているか教えていただけますか?
田坂 プリント基板は、電子機器の中の部品と部品を繋ぐものとして必要不可欠なものです。テレビや冷蔵庫、洗濯機などの家電はもちろん、パソコンや携帯電話、ゲーム機、自動車など、電気製品と名の付くもの全てに用いられていて、大きさも製品に合わせて様々です。また、製品によっては1枚だけではなく複数枚が使われています。
馬渕 直接消費者の目に入ることはほとんどありませんが、わたしたちの生活には欠かせないものなのですね。
競合不在!「プリント基板業界のラクスル」と呼ばれる理由とは
馬渕 御社が運営されているECサイト「P板.com(ピーバンドットコム)」は、具体的にどのようなビジネスなのでしょうか。「プリント基板業界のラクスル」などと呼ばれる理由と御社の強みについてお話ください。