本記事は、Nami Barden氏、河合克仁氏、Krishnaraj氏の著書『世界のエリートが実践する 心を磨く11のレッスン』(サンガ)の中から一部を抜粋・編集しています
「メタ認知」によって「思考」と「自分」を切り離す
コンシャスネスとは「意識」の学びです。日本ではまだ耳慣れない言葉かもしれません。しかし、グローバルレベルでは、大変人気のある学びの1つです。
幸せに生きているコンシャスリーダーは、「自分には選択肢がある」ということを知っています。周りのシチュエーションは変えられなくても、自分自身の心の状態は変えられると知っているのです。
「苦悩の心の状態」を何年もそのままにして放っておくことはせずに、「苦悩の状態」である時間を極力短くすることを徹底します。なぜならば、「苦悩の心」から出す決断は良い結果に結びつかず、長続きしないことを経験から知っているからです。コンシャスリーダーは、苦悩を解消するときに得られる大きな気づきを、人生の学びとしてひとつひとつ自分のものにしていきます。そして再び平穏な心をもって、その後の人生において強く大きく羽ばたいていきます。
コンシャスリーダーは、マインドの中に存在する思考と感情を観察するときに、メタ認知をすることができます。メタ認知とは心理学で1970年代にジョン・H・フラベルが提唱したもので、「自分が認知していることを認知している」という高度な認知力を意味します。つまり、メタ認知とは、一歩下がって物事を見つめるスタンスのことです。
例えば、満員電車の中で人に押されながら嫌な思いをしている自分の姿を思い出してください。満員電車の中では、イライラとした感情が出ると共に、「なぜこんなに人が多いんだ、なぜ僕を押すんだ」と嫌な思いが湧き出てくるものです。しかし電車を降り、近くの高層ビルに上り、最上階から下を見たとき、どう感じるでしょうか。
アリのように小さな人々や駅を、上から落ち着いた心で眺めることができます。たくさんの人が電車に乗り、降りていく。忙しそうに動いている人々。ビルの窓からこの様子を見下ろしているとき、自分の感情は揺れ動きません。「あ、人がいるな」「忙しそうだな」「電車にたくさん人が乗っているな」と、ひとつひとつ距離を置いて物事を観察することができます。思考や感情移入をせずに一歩下がって見ること、これがメタ認知です。
内なる心の状態や頭の中の思考を見ていくときも、メタ認知をします。「感情=自分」とならないように、一歩下がって、イライラした気持ちやがっかりした気持ち、寂しさなどの感情をひとつひとつ見ていきます。そしてその結果身体に起こる変化にも気づいていきます。「胃がキリキリしているな」「おなかが硬くなってる」「首が硬いな」「呼吸が浅くなっているぞ」など、身体の変化にも気づくことができるでしょう。
また頭の中の思考をひとつひとつ挙げていくときも同じで、「思考=自分」になってはいけません。「こんな嫉妬心を持っているなんて恥ずかしい」とか「こんな考えをするなんて人間失格」と自分のことを責めているというのは、もうすでに「思考=自分」となってしまっています。メタ認知をして、思考から「一歩下がって見る」というスタンスを大事にしてください。
コンシャスネスについて学ぶということは、コンシャスリーダーになるための第一歩を踏み出すことです。コンシャスネスの学びは心を磨く旅です。ある日突然「コンシャスリーダー、誕生!」となるのではなく、少しずつ自分の中に気づきを得ていくことで、コンシャスリーダーへと近づき、心が磨かれ強くなっていく旅なのです。
「一度、コンシャスネスについて学んだから、もう終わり」という知識前提の学びではありません。初めは自分がどっぷりと苦悩に漬かっている状態だったとしても、毎日の生活で気づきを増やしていき、問題を解決しながら気づきを見出していくことで、少しずつ自分のコンシャスネスレベルが上がっていきます。そうすることで、一歩一歩コンシャスリーダーへ近づいていくのです。
また、「心を磨く旅」だからといって、「永遠に続く学びだなんて、大変そうだし、難しそう」などと不安に感じることもありません。苦しいのに何もしない状態では、辛い人生のまま生きていくことになるでしょう。しかし、少しずつコンシャスネスの学びを深めていくことで、自分の力で自分の苦悩を解消することができ、そのたびに私たちの心はスッと軽くなるのです。人と会うのも楽しくなり、チャレンジ精神を持って楽しく仕事をすることができるようになります。
つまり、この心の旅は、永遠に続く辛く厳しい旅なのではなく、自分が人生で飛躍していくことができる素晴らしい経験が詰まった旅です。毎回苦悩を解消し、本来の自分自身を飛躍させることができる、素晴らしい人生構築の旅なのです。
僕自身、苦悩の状態に陥ることや、自分の欲に負けてしまうことは、毎日の生活でたくさんあります。しかし、「コンシャスネス」という視点に出会ったおかげで、たとえば妻との意見の違いにも寛容になれたり、今までならば声を荒げて思いをぶつけたくなるような人に出会っても、落ち着いて接することができるようになりました。
また、「成果をあげなければいけない」という追われる感覚が消え、「今やるべきこと」に集中できたり、コントロールできないことを手放せるようになりました。自分の欠点を素直に認め、その欠点を補ってくれる人の力を借りられるようにもなり、結果的には、短期間で今まで以上の成果をあげることができるようになりました。
一言で言うならば、肩肘張らずに、自然体で過ごす時間が増え、結果的に大きな、そして継続的な成果にも結び付いているのです。
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