コロナ禍の不動産業界で「買い時の好調カテゴリ」と「回復が立ち遅れるカテゴリ」が鮮明になってきました。ここでは「いま(または今後)買い時」と投資家から注目される3つの分野にフォーカスします。

注目分野1:取扱量が急増!物流施設関連のREIT

買い時,不動産
(画像=ezume-images/stock.adobe.com)

物流施設関連は、コロナ禍のライフスタイルの変化によって注目度が高まっています。

首都圏は不動産投資額(2020年1~9月)で世界1位

コロナ禍で世界中の投資家による「(日本の)首都圏の不動産買い」が進んでいます。グローバルな不動産サービスを展開するJLL(ジョーンズラングラサール)が行った調査によると2020年1~9月間における首都圏の不動産投資額は世界1位の見通しです。ニューヨークなど他の主要都市が不動産投資額の順位を下げる中、なぜ首都圏の不動産投資額が好調なのでしょうか。

JLLでは、アメリカやヨーロッパなどと比べて首都圏は新型コロナ感染者数が少なく安定性が高いためと見ています。有識者においても同様の意見は多い傾向です。国内の視点で見ると新型コロナ感染者数の増加が懸念されます。しかしグローバルの視点で見ると東京は感染者が少なく安心・安全な都市という評価が高まっているのです。

首都圏の買い時な不動産の中でも人気は物流施設と住宅

同調査によると首都圏における不動産買いの投資家の比率は、海外投資家が38%です。2019年の海外投資家比率21%から急伸しているため、世界中の投資家が「首都圏の不動産は買い時」と考えている様子がよく分かります。カテゴリ別に見るとオフィスの人気が落ちる中、全体に占める投資割合は物流施設が30%、住宅は22%で好調です。

物流施設は、コロナ禍でネット通販の利用量が急拡大した影響が大きく、この流れはコロナ終息後も続くと見られ、各地で物流施設への新設・投資が進んでいます。

個人投資家が物流施設に投資するならREIT

個人投資家が物流施設に投資する方法としては、REIT(不動産投資信託)の買い付けがあります。証券総合口座を持っていれば、一般の国内株式と同じような感覚で手軽に売買することが可能です。なおそれぞれのREITには銘柄ごとのテーマがあります。例えば「オフィス」「ホテル」「インフラ」「物流施設」などです。物流施設系の国内REITとしては、以下のような銘柄があります。

銘柄名銘柄コード1年間値上がり率
SOSiLA物流リート投資法人2979
GLP投資法人3281+13.4%
日本プロロジスリート投資法人3283+6.7%
ラサールロジポート投資法人3466−5.2%
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人3471
三菱地所物流リート投資法人3481+11.9%
CREロジスティクスファンド投資法人3487+9.6%
伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人3493+7.7%
日本ロジスティクスファンド投資法人8967+5%

(引用:かぶれん)※2020年12月7日現在

ただし、上記の表で分かる通りすべての物流施設系REITが値上がりしているわけではありません。また物流施設系REITの中には、2020年後半になって割高感が出てきたため値下がり傾向の銘柄もあります。ボラティリティがあるため、物流系REITに着目する投資家は買付タイミングが鍵を握りそうです。

注目分野2:コロナ禍で東京が再評価!23区のマンション

物流施設と並んで「買い時の不動産」として見逃せないのが首都圏・東京23区のマンションです。

今後5年間、東京23区の新築マンション価格・賃料は安定的

上述したJLLの「首都圏の投資額は世界1位」という調査で物流施設と並んで好調なカテゴリが住宅でした。首都圏の住宅といえばやはりマンションが中心となります。別のデータを見てみても今後の首都圏のマンション価格・賃料は安定的といえるでしょう。2020年11月26日に一般社団法人日本不動産研究所が公表した「東京23区のマンション価格と賃料の中期予測/2020年下期」によると東京23区の新築マンションの価格・賃料は「今後5年間ほぼ横ばいまたはやや上昇する」との見通しです。

コロナ前は「首都圏のマンション価格が割高なのではないか」「暴落するのではないか」との意見も散見されました。しかし国内の需要回復や世界中からの投資を受けて底堅く推移する可能性が高いでしょう。また主要国のコロナ後の経済情勢などによっては、さらに世界中の投資マネーが首都圏・東京に流入しマーケットの追い風になるシーンも考えられます。

区分マンションの融資審査は投資家の信用力を重視

個人投資家が首都圏・東京23区のマンションへ投資するには、収益物件を購入して運用することが方法の一つです。投資をする際に利用される不動産投資ローンは、引き続き低金利のため資産形成を進めやすい環境といえます。不動産投資に対する金融機関の融資については、1棟物件に対する審査のハードルが上がっている傾向です。

しかし首都圏・東京23区のマンション投資(区分所有)に対する融資は、投資家の信用力が重視されるため、安定収入さえあれば比較的融資を受けやすい環境といえるでしょう。1棟物件の融資とは、区分けして考えることが必要です。

注目分野3:温暖化ガス実質ゼロの衝撃!太陽光発電

菅首相が所信表明演説で「2050年までに国内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにする」と述べたことから再び脚光を浴びるようなったのが太陽光発電の分野です。

太陽光発電の強みは「固定価格買取制度」があること

2012年7月から売電した電気を固定価格で20年間買い取る制度(FIT:固定価格買取制度)がはじまり企業や個人投資家から注目を集めました。固定価格が段階的に下落していく中、個人投資家の注目度が減っている感もありましたが菅首相の「温暖化ガス実質ゼロ」を表明したことから再び注目度が上がっています。

年度買取価格(10キロワット以上)
2012年度40円+税
2013年度36円+税
2014年度32円+税
2015年度・2015年7月~:27円+税
・2015年4~6月:29円+税
2016年度24円+税
2017年度・21円+税(10キロワット以上2,000キロワット未満)
・入札制度により決定(2,000キロワット以上)
2018年度・18円+税(10キロワット以上2,000キロワット未満)
・入札制度により決定(2,000キロワット以上)
2019年度・14円+税(10キロワット以上50キロワット未満、50キロワット以上250キロワット未満、250キロワット以上500キロワット未満)
・入札制度により決定(500キロワット以上)

参照:資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2012年度~2019年度)」

太陽光発電に投資する際は「廃棄問題」をクリアに

個人投資家が太陽光発電に投資をする方法としては、山地や僻地などに太陽光発電の設備を設置し専門業者にメンテナンスを依頼するのが一般的です。ただ最近では大型台風や集中豪雨が増えてきているため、設備の破損や故障のリスクが高まっています。あわせて太陽光発電設備で危惧されているのは、「太陽光発電設備の廃棄をどうするか」ということです。

太陽光パネルは、鉛やカドミウムなどの有害物質を含んでいることがあるため、廃棄に手間もコストもかかります。投資を始めるなら廃棄問題の部分をクリアしたうえでチャレンジするのが賢明です。

手軽に太陽光発電投資に投資するならETFの選択も

こういった廃棄リスクが負担に感じる場合は、太陽光発電を含む再生可能エネルギー施設を運用するインフラ系ETF(上場投資信託)を購入することも方法の一つです。REITと同様に証券総合口座があれば手軽に売買できます。なお2020年12月13日時点でインフラ系のREITは「日本再生可能エネルギーインフラ投資法人<9283>」や「東京インフラ・エネルギー投資法人<9285>」など7銘柄です。

「買い時の好調カテゴリ」だからこその注意点も

ここでは代表的な「買い時の好調カテゴリ」を紹介してきました。ただこれらは注目度が高いだけに「割高な銘柄をつかまない(REITやETF)」「資産価値のある物件を適正価格で購入する(東京23区マンション)」などを意識したほうがよいでしょう。またこれら以外にも好調な不動産分野が新たに台頭することも考えられます。

個人投資家であればアンテナを常に張り巡らし新たな時代感覚を研ぎ澄ます努力が必要です。(提供:Incomepress


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