本格的なEV(Electric Vehicle:電気自動車)の時代がやって来るといわれて久しいですが、近年になっていよいよその動きが顕著になってきました。「米国大手EVメーカー『テスラ』の株価が高騰している」「世界各国でガソリン車の新規販売を禁止する動きが見られる」など、にわかにEVへの注目が高まっています。
これは人類の歴史を考えると大きなパラダイムシフトのため、EV化の進行に伴うさまざまな変化が考えられます。本記事では、カーライフや社会への変化だけでなく投資家にとっての投資行動に及ぼす影響を幅広く考察していきます。
EV時代に向けて、いま起きていること
「EVの時代が来る」と感じている人は多いかもしれません。しかしなぜそのように感じるようになったのでしょうか。そのきっかけとなった事実やニュースなどを2つ紹介します。
- 米EVメーカー「テスラ」社の株価高騰(自動車メーカー内での時価総額首位に)
- EV補助金が40万円→80万円に拡充を検討
米EVメーカー「テスラ」社の株価高騰(自動車メーカー内での時価総額首位に)
投資家にとって最もインパクトが強かったのは、大手EVメーカー「テスラ」の株価高騰でしょう。2020年7月1日、それまで自動車メーカーの中で時価総額首位だったトヨタを抜き、テスラがトップとなったのです。企業規模ではトヨタのほうが大きいのは明白なのですが、「株式の時価総額で逆転が起きた」ということは、多くの投資家が今後はEVの時代が到来しテスラが大きな存在感を発揮すると見ていることの現れでしょう。
EV補助金が40万円→80万円に拡充を検討
国の施策となるEV購入者への補助金が40万円→最大80万円と倍に増額されることが検討されています。日本は、2020年10月26日に菅首相が所信表明で国の方針として「2050年までに温室効果ガスの排出を実質的にゼロにする」と宣言しました。これを達成するためには、EVの普及が欠かせない要素の一つとなるでしょう。
現代では、ガソリンやディーゼルで走る車を当たり前のように感じている人が多くいます。しかし、かつての道路は馬車や徒歩が主役だったため、エンジンで走る車は「未来の乗り物」でした。古い町並みが残っている地区では、車が通りにくいような狭い道が数多く見られますが、これらは「車以前」の時代では十分機能していた道路の名残です。
そのため私たちが見ている現代の道路の風景がやがてEVや自動運転車で埋め尽くされるようになることも決して意外なことではありません。すでに次世代を見すえた動きは世界各国で進んでおり、テスラを擁するアメリカには2番手となるEVメーカーがあります。またすでに先行している中国にも有力なメーカーが多い傾向にあります。
EV時代のカーライフはこうなる
すでに国やメーカーなどはEV時代を見すえているわけですが「これからEVの普及が始まる」と思っていてはいけません。なぜなら私たちの身の回りでは、すでにEVの普及が始まっているからです。国産メーカーからもEVは続々と投入されており、コンセプトカーとしての色合いが強かったころと異なっています。
2020年12月時点ですでに投入されている電気自動車の「LEAF(日産)」「Honda e(ホンダ)」などは、市場でのシェア獲得を目的とした新型モデルです。駐車場や高速道路のサービスエリアなどにもEV向けの充電設備を見かけることも多くなり、道路のインフラもEVに最適化されつつあります。EVの技術的な課題であった「航続距離」「充電に要する時間」が着々と解消されているのです。
事例紹介:本格的なEV時代を感じさせる「GO SHARE」
地域的なEV化の取り組みとしてユニークな事例を一つ紹介します。これは「GO SHARE」という沖縄県の石垣島で実施されている電動バイクシェアのプロジェクトです。利用登録をすると石垣島の島内を走れる電動バイクが利用可能になり、バッテリー切れが近づいてきたら島内各地にある充電ステーションでフル充電されたバッテリーパックと交換して瞬時に充電完了することができます。
「EVは充電に要する時間が課題」と述べました。しかし「GO SHARE」は常にフル充電されたバッテリーを用意しているため、交換する時間の課題を解決しています。こういった仕組みがEVにも応用されるようになるとクルマ社会そのものが大きく変わる可能性もあるため、要注目のプロジェクトです。
EV時代の投資はこうなる
EV時代に向けて投資家目線で知っておきたい情報について紹介します。投資家として注目したいのは、株式市場における「EV関連銘柄」です。
1.上場EVメーカー、既存自動車メーカー
EV時代の本格到来を感じさせる出来事としてテスラ株の急騰について言及しました。まだ自動車メーカーとしての規模はそれほど大きくはなく、年間の販売台数はトヨタと比べて約30分の1に過ぎません。しかしテスラの時価総額がトヨタを抜いたのは、まぎれもなくEV時代に向けた伸び代への期待感です。テスラ株はすでに高値圏にあるため、ここからのさらなる上昇余地は限定的かもしれません。
しかし「明日のテスラ」を市場から見つけ出すことは有効な戦略の一つです。日本では、日産やホンダがEV分野では比較的先行しているため、こうしたメーカーの飛躍に期待する投資も妙味があるでしょう。さらに自動車メーカーとして世界のトップクラスとして君臨し続けてきたトヨタについても、今後のEV戦略によっては上昇余地がおおいにあります。
その他にも「BYD」や新興メーカー「NIO」などを擁する中国勢も今後さらにEVに力を入れる可能性は高いため、投資家として見逃せない存在になるかもしれません。
2.EV関連銘柄
1で紹介したのは、EVそのものを製造・販売している銘柄です。しかしEVは自動車メーカー単体の経営資源だけで作られるものではなく、各種部品メーカーからの供給によって成り立っています。日本国内勢には、EV向けの部品供給で業績を伸ばしている企業が多い傾向にあります。こうした銘柄は「EV関連銘柄」と呼ばれています。
EV関連銘柄の最右翼は、EV向けモーター製造の大手「日本電産<6594>」です。モーター製造技術における世界的なブランド価値を活かして、EV向けモーター開発にも積極的な投資を行っています。EVだけでなく自動車部品メーカーとして国内最大手の地位を誇る「デンソー<6902>」もEV向けの投資に積極的です。EVの重要な基幹部品「インバーター」で世界的なシェアを有しています。
そのシェアをさらに高める経営戦略を掲げているため、今後さらにEV関連銘柄としての存在感が増していく可能性が高いでしょう。EVの基幹部品の製造で知られる「ニチコン<6996>」も同社製品を採用する自動車メーカーが着実に増えていることからEV関連銘柄としての注目度が高い傾向です。今後普及が進むと見られているワイヤレス充電システムについて開発企業とのライセンス契約も締結しています。
ニチコンが提唱する充電設備の普及が株価成長の鍵といえるでしょう。ここで紹介した3社以外にもEV専用のモーターコア製造で業績を伸ばしている「三井ハイテック<6966>」、EV向け電池開発で先行する「TDK<6762>」などEV関連銘柄には魅力的な銘柄が目白押しです。EVは、着実に進化しており私たちの社会に浸透しています。
今後もその流れが続くことを前提にEVの成長力を投資活動に結び付けることは、合理的かつ有効な戦略だといえるでしょう。
社名 | EVへの関連 | 株価 (2020年12月11日終値) |
---|---|---|
日本電産 | EV向けモーターを製造し、開発にも積極的に投資している | 1万2,460円 |
デンソー | EVのインバーターにおいて世界的なシェアを有している | 5,777円 |
ニチコン | EVの基幹部品の製造 | 1,202円 |
三井ハイテック | EV専用のモーターコア製造 | 3,445円 |
TDK | EV向け電池開発 | 1万3,940円 |
(提供:Incomepress )
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