2021年の株式市場について、証券各社のリサーチ部門は強気の予想を立てている。内外有力証券のレポートを見渡すと、「日本株が米国株に負けないパフォーマンスを示す可能性が高い」(野村証券)、「企業再編がさらに進む」(ゴールドマン・サックス証券)などポジティブな記述が目立つ。2021年も株式投資家にとっては魅力的な年となりそうだ。

2021年の株式市場は、低金利下での業績回復で強気相場

2021年大展望
(画像=エジ/PIXTA、ZUU online)

2020年の株式市場を総括するキーワードは、「大荒れ」と「IT」だろう。3月を大底とするコロナ暴落を経て、日米で株価が急反発。年間高値と安値の幅は日経平均で1万358円、ダウで1万2129ドルと大きかった。12月は日経平均株価がバブル後期の1991年以来の2万7000円台に急伸。米ダウ工業株30種平均は初の3万ドル大台乗せを果たし、ナスダック総合指数も史上最高値を更新した。金融緩和政策で供給された大量の資金が中長期的な業績拡大期待が最も高いIT銘柄に集中した結果だ。

野村証券は、高値3万500円を予想

日本株で最大の売買シェアを誇る野村証券は「日本株ストラテジー」(11月10日付、同日の日経平均は2万4905円)で2021年末の日経平均を2万8000円と予想している。2021年は四半期ごとにレンジの切り上げが続き、2021年7-9月は最高値2万9500円、10-12月は最高値3万500円とした。

野村レポートでは、「ワクチン期待、バイデン勝利よりも景気・業績回復の強さが本質」と指摘。2020年11月3日の米大統領選後、市場が軽視していた景気・企業業績の力強い回復ぶりを急速に織り込んで株価が上昇していると分析し、「この株高を懐疑的に見ない方が良いだろう」とアドバイスを与えた。

2021年の日本株については、政策決定プロセスの安定、コロナ感染規模の相対的な小ささ、中国景気拡大の恩恵の3点が欧米より有利に作用すると指摘している。

コロナ禍について野村証券は、「景気回復シナリオに対する最大の脅威」と位置付け、特に個人向けサービス業種は「ワクチンが浸透するまで低迷を余儀なくされる」と懸念している。一方、世界的規模で事業展開する製造業は「相応のコロナ耐性がある」との見方を示す。各国政府は外食や旅行を規制する反面、2021年春先のような製造業の活動停止を極力回避しているためだ。また、米国で耐久財消費がコロナ前水準を上回ったことから、「欧米のコロナ感染が日本の輸出環境を損ねるリスクは小さい」との見方を示している。

野村証券が投資先として「有望」とするのは「景気敏感かつ自力成長も高いセクター」。景気敏感型でリーマンショック後の低成長経済にも適応できた業種として、機械、電気・精密、自動車・輸送機、金融(除く銀行)の4つを挙げている。

レポートは11月10日付だが、市場関係者の間では2021年1-3月期に野村証券が予想株価を引き上げるとの見方が強い。

企業業績はV字回復。割安な日本株に海外投資家が注目

企業業績はどう推移するのか。SMBC日興証券は12月11日付レポートで、全上場企業の約7割をカバーする主要250社の経常利益ベースで2020年度に21.1%減益の後、2021年度は42.9%増益に転じると予想した。業績の方向性は最大級の株価材料だけに4割増益予想が市場参加者に与えた影響は大きかった。

2021年度の予想増益率が平均(42.9%)を上回るのは、金属製品(9.7倍)、ゴム製品(7.4倍)、陸運(2.8倍)、輸送用機器(2.8倍)、鉄鋼(2.6倍)など。

米ゴールドマン・サックスは11月10日付レポートで2021年の「目標水準」として日経平均2万7200円、東証株価指数(TOPIX)1875ポイントを挙げた。「循環的な追い風、構造改革、市場寄りの政策」が好材料になるという。