いまなお新規の感染者数が20万人前後で推移し、日本よりはるかに新型コロナウイルスによるダメージが大きい米国。経済はロックダウンによって一時は完全にストップし、ピーク時の完全失業者の数がゆうに2000万人を超えるなど、恐慌レベルの混乱に襲われた。しかし、経済はそこからV字回復を見せている。株式相場も史上最高値の更新が続くなど好調を維持しているが、2021年もこのまま好調をキープできるのだろうか。米国経済や株式相場に精通するエモリファンドマネジメントの江守哲さんが2021年の米国相場を分析する。

識者プロフィール

江守 哲 TETSU EMORI
エモリファンドマネジメント代表取締役
慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事に入社し、非鉄金属取引に従事。1996年に英国住友商事(現欧州住友商事)に出向しロンドンに駐在。その後、Metallgesellschaft Ltd.、三井物産フューチャーズを経て、2007年7月にアストマックス入社。ファンドマネージャーに就任する。2015年4月にエモリキャピタルマネジメントを設立し代表取締役に就任(2020年12月にエモリファンドマネジメントに社名変更)。株式・為替・債券・コモディティ市場の情報提供などを事業として展開。「米国株は3倍になる」(2017年ビジネス社)、「金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり」(2020年プレジデント社)ほか著書多数。

資産を大きく増やすためのポイントを再認識

米国株、米国経済
(画像=PIXTA、ZUU online)

米国ではいまだに新型コロナウイルスが猛威をふるっている。新規感染者数は、ここまでのピークだった12月11日の約28万人からは若干減ってきてはいるものの、1日当たりの平均は20万人近くを記録。累計の感染者数は世界でも群を抜いている。米国では各州が個別にロックダウンを行うスタンスを取っているが、カリフォルニア州では今冬の感染者数の増加を受け、12月6日より再びロックダウン(都市封鎖)を断行。いまなお新型ウイルスとの激しい闘いが続いている。

しかしその一方で、ハイテクやIT関連企業の比率が高い米ナスダック指数は、2020年3月の安値6631ポイントから同年12月29日には1万2973ポイントまで、ほぼ2倍に上昇。ナスダック市場に上場し、いまや米国の顔となったGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の株価上昇の話題は世界の金融業界をにぎわせた。なかでも、電気自動車やクリーンエネルギーを手掛けるテスラの株価は3月の安値70ドルから、12月18日には695ドルまでほぼ10倍に暴騰している。この規模の企業の株価がここまで短期間にテンバガー(10倍高)化したケースは、米国市場の長い歴史の中でも初のケースなのではないだろうか。

常日頃から米国相場のウォッチを続ける江守哲さんは、2020年の相場を振り返ってこう述懐する。

「月並みな言い方になりますが、やはり2020年はコロナに振り回された1年でした。やはり世の中が大きく変わる年になったと思います。株式投資の観点からいうと、ドットコムバブルやリーマンショックの時と同様、暴落局面を投資チャンスととらえ、いかに買いを入れられるかがポイントになることを再認識させられましたね。もっとも、今回はパンデミックによるショック安という、人類が経験したことがないものだっただけに、相場が暴落している最中にその後のV字回復を予想するのは困難でした」

1998年後半から発生したIT関連株の大相場、いわゆるドットコムバブルが崩壊した時のケースでは、ナスダック指数は2000年3月の高値から安値をつけるまでに2年半程度の時間がかかった。リーマンショック時はそれより短く、安値までの期間は半年足らずだったが、今回のコロナショックでは1カ月余りで安値を記録している。完全にスピード違反の相場の動きは、多くの市場関係者を驚かせた。

米国は設備余剰の状態。構造問題として浮上か

江守さんは、米国相場の現状についてこう分析する。