「ドライジャニュアリー(Dry January)」という英国発のトレンドをご存じでしょうか。初めて耳にする方もいると思います。ドライジャニュアリーは、年末に飲酒する機会が増えることから1月はお酒を断って健康に過ごそうという試みで、近年生まれたにもかかわらず英国ではにわかに浸透しはじめています。

この記事では、発祥地のイギリスにおいてドライジャニュアリーはいつ始まったのか、盛り上がっているのか、実際に効果はあるのかについて調べました。

ドライジャニュアリーとは何か?

イギリス,ドライ ジャニュアリー
(画像=Евгений Вершинин/stock.adobe.com)

ドライジャニュアリーは、非常にシンプルな心がけです。「1月1日の目覚めた時から2月1日まで、お酒を飲まずに過ごす」。たったこれだけです。つまり、休肝日ならぬ、“休肝月”と考えればわかりやすいでしょう。

新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年は外での飲酒を例年より控えることも多かったと思います。それでも“Zoom飲み”など新しいコミュニケーションが誕生したことで、友人、知人、同僚や家族との忘年会など、年末はお酒を飲む機会が例月よりは増えた方もきっと多いはず。

そもそも12月に飲酒量が増えるのは多くの国で共通するようです。それがイギリスの場合、年末にお酒を飲みすぎて酷使した肝臓をいたわるため、1月は意識的にお酒を断つドライジャニュアリーという新たな習慣の誕生につながったわけです。

慈善団体のキャンペーンが発端。背景には深刻なアルコールの社会問題も

英国におけるアルコールへの問題意識は日本よりも高いといえます。キャメロン政権下の2012年、女王陛下の命により「英国政府のアルコール戦略」が議会に提出されました。その中では、ビンジ・ドリンキング(酩酊状態に至るまでの飲酒)に対する危機感が強く指摘されています。英国における全アルコール消費量の半分はビンジ・ドリンキングによるものとの見方が示されており、これに起因する健康被害はもちろんのこと、暴力や犯罪、医療資源の浪費、治安悪化などが見過ごせない問題となっていたのです。

このような中、「Alcohol Concern(現:Alcohol Change UK)」というチャリティ団体がドライジャニュアリーの取り組みを始めました。まだ全国民的な取り組みとまではなっていませんが、好意的に受け止める人が多く、2017年には500万人もの人が参加したということです。同団体は英国政府とも連携して活動を続けており、広がりを見せつつある状況です。

その後の人生をも変えうる、ドライジャニュアリーの効果とは

英国のサセックス大学の研究チームが、2018年のドライジャニュアリーに参加して断酒した800人を調査したところ、1ヵ月間の断酒は単に身体を休める以上の効果を生むことが確認されたと結論付けています。

最も注目すべき点は、ドライジャニュアリーから7ヵ月経過した8月時点においても、飲酒量や飲酒頻度が減ったと回答した人が多い点です。調査結果では、平均で週4.3日あった飲酒日数が3.3日に減り、酔うまで飲む頻度についても以前の週に3.4回から2.1回に減少しました。つまり、1ヵ月間断酒をするというシンプルな取り組みが、その後のアルコールをめぐる習慣をも改善したといえます。

その他にも「お金を節約できた」「よく眠れるようになった」「体重が減った」「集中力が増した」「肌の状態が改善した」などの変化があったと回答する人がおり、心身ともに何らかの良い効果が生じたと考える参加者が多かったことがわかります。

1月の過ごし方を振り返る

上記の研究はあくまでアンケート調査を基にしているので、医学的な根拠があるとは言えません。また、心身の調子については個人によって感じ方が異なるので、確たる結論を導き出すことは困難です。ただし、過去の数多の研究から、過度のアルコール摂取が心身に大きな負担をかけることはもはや周知の事実となっています。

この記事を読んでいる方の中にも、程度の差はあれ年末に飲み過ぎたことを反省し、「身体に気をつけよう」と考えながら1月を過ごすという人もいることでしょう。そんな方は、ドライジャニュアリーのようなトレンドを参考にし、意識的に休肝日を設けてみてはいかがでしょうか。「いきなり1ヵ月間もお酒を断つのは難しい」と感じる方は、まずは3日間や1週間を目標にしてみるのもよいでしょう。

適量のアルコールにはコミュニケーションを円滑にしたり、ストレスを発散したり、リラックス効果を与えたりとメリットもたくさんあります。大事なのはあくまでも“付き合い方”。ドライジャニュアリーというトレンドを知ることで、アルコールとの向き合い方や食生活、自分の身体について考えるきっかけになるでしょう。(提供:JPRIME


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