2021年2月スタート予定のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公は渋沢栄一です。2024年前半から流通予定の新1万円札の“顔”になる人物として話題になっています。大河ドラマでは「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一の生涯が描かれますが、ドラマに先駆けてどのような偉業を成し遂げた人物なのかおさらいしましょう。

日本資本主義の父、渋沢栄一とは何者か

渋沢栄一,功績
(画像=a-text/stock.adobe.com)

渋沢栄一は、明治から大正にかけて活躍した実業家です。当時は、財閥系と呼ばれる株式を一族で所属するなど閉鎖的な経営を行う会社が急成長した時代。そんな財閥全盛期に、渋沢は同じ株式会社でありながら民間から広く出資を募って会社を成長させていく、“開放的”な経営を真っ先に実践したことでよく知られています。

経営者として類稀な才能を発揮し、渋沢が生涯のうちに育成した企業は500社を超えるといわれます。さらに600の教育・社会公共事業の支援にも携わったとされる社会福祉家としての顔も持っているうえに、日本の発展のため民間外交の分野でも多大な功績を残したことから、まさに“偉人”と呼ぶにふさわしい人物だといえます。

埼玉の豪農出身。幕臣を経て、実業家になるまで

天保11年(1840年)、深谷市の血洗島の農家に生まれた渋沢。幼少の頃から家業の藍玉の製造・販売・養蚕に携わり、父・渋沢 市郎右衛門から学問の手ほどきを受けました。豪農、渋沢家の長男として商才を磨き、そのことが稀代の経営者としての下地となりました。

また7歳になると、いとこの尾高惇忠のもとで論語をはじめとする学問を身につけます。20代のころには倒幕思想を抱き高崎城の乗っ取りを計画したこともあったようですが、計画が中止となった後は京都へ向かい、一橋(徳川)慶喜に仕官しています。

一橋家で家政の改善などに実力を発揮した渋沢にとって、転機となったのは27歳。一橋慶喜の実弟・徳川昭武に随行し、パリ万国博覧会を見学。欧州の先進諸国の実情を肌で感じることができたのです。1869年、明治維新後に帰国した渋沢は株式会社である「商法会所」を静岡に設立。その後は、明治政府の大蔵省に入省しています。

1873年に大蔵省を離れてからは、いち民間経済人として株式会社組織による企業の創設・育成に尽力。現在のみずほ銀行の前身であり日本最古の銀行、第一国立銀行の頭取を務め上げるなど実業家として活躍しつつ、その一方で“利潤を追求『経済』の根底には公益に資する『道徳』がなければならない”という考えを深め、「道徳経済合一説」を唱えました。

社会問題が浮き彫りになった現代に問いかける「道徳経済合一説」の精神

では、資本主義の父として今もなお注目を集めるのはなぜなのでしょう。その理由のひとつは、晩年の渋沢が唱えた「道徳経済合一説」にあるといえるでしょう。これは前項でも触れたとおり、道徳と経済の両立を信念とする説、つまり企業の目的が利益の追求にあるとしても、その根底には道徳が必要であり、事業で得た収益で公共の事業や社会や国の繁栄のために利益を還元すべきという考えです。

資本主義はしばしば、自己利益の過度な追求のために公益を顧みないというニュアンスを含みます。しかし、渋沢は資本主義の父と呼ばれながらも、自己の利益の追求を目指すだけの資本主義を目指してはいなかったことが「道徳経済合一説」からよくわかります。なお、この説は、1916年に発刊した渋沢の著書『論語と算盤』でも説かれています。“論語”は道徳を、“算盤”は経済活動を言い換えていることは明らかです。

地球温暖化や貧困問題など、資本主義の進展によって社会問題が浮き彫りになっている今だからこそ、私たちは経済活動と公益の両立を説いた渋沢の教えを再確認する大きな意義がある……。だからこそ、注目を集めているのではないでしょうか。

2021年の大河ドラマを通じて渋沢栄一の生き方を知れば、経営者のみならず経済活動にかかわるすべての人びとにとって大きな学びにつながるかもしれません。

▽現在公開されている2021年大河ドラマの情報
・タイトル:大河ドラマ「青天を衝つけ」
・放送開始:2021年2月14日(日)
・総合:午後8:00~9:00
・BSプレミアム・BS4K:午後6:00~
【作】大森美香
【主演】吉沢亮
【出演】小林薫、和久井映見、高良健吾、田辺誠一ほか

(提供:JPRIME


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